【コラム】Divoom(ディブーム): インドネシアで急成長する新しいデジタル表現の形
写真:Divoom Indonesia 公式Facebookアカウントより
https://www.facebook.com/divoomindonesiaa/photos
近年、インドネシアのあらゆるソーシャルメディアを席巻している『Divoom』(ディブーム)という商品をご存知でしょうか?SNS上でインドネシア語のコンテンツも見られる方は、『Divoom』という言葉にピンと来る方も多いのではないでしょうか。Divoomは、『SPARK YOUR LIFE』(電気火花的なスパークと、活気という意味のスパークをかけている)をキャッチコピーに、デジタル技術とアート表現の融合を実現した自己表現の新しい手段として、特に若い世代を中心にインドネシアで急速に普及しています。
Divoomの中核となる製品ラインには、スマートフォンと連携して動作するポータブルブルートゥーススピーカーと、ピクセルアートディスプレイデバイスを搭載したリュックサックやショルダーバッグなどがあります。これらの製品は、ユーザーが自由にカスタマイズできる LED ディスプレイを特徴としており、スマートフォンアプリを通じて簡単に操作することができます。
例えば、凡そ2万円前後で販売されているリュックサックシリーズ(『Divoom Pixoo Backpack』)は、背面にLEDディスプレイを搭載しており、ユーザーは専用アプリを通じて好みのピクセルアートやアニメーションを表示させることができます。ピクセルアートはプリセットデザインから自由にカスタマイズしたり、一からオリジナルのアートワークを作成したりすることもできます。
また、コミュニティ機能も充実しており、他のユーザーの作品を閲覧したり、自分の作品を共有したりすることも可能です。さらに、時計、天気予報、通知機能など、実用的な機能も備えています。卓上のポータブルスピーカーについても、同様です。
Divoomの製品は、単なる装飾品以上の存在として、ユーザーのクリエイティビティを引き出し、キャッチコピーの通り日常生活にスパークを添える役割を果たしています。写真のように、前を走っている人のリュックサックの上にコロコロ変わるピクセルアートが表示されていたら、スマホをいじる手を止めて思わず見入ってしまいそうですね。
巷では、「薄く、軽く、シンプルに」というミニマリスト的デザインのデジタルデバイスが増える中、DivoomのレトロかわいいY2Kデザイン、ガジェット感満載のデザイン、ころんと丸みを帯びたデザインが若い世代の心を揺さぶり、インドネシアのデジタルネイティブ世代の間で急速な人気を集めています。
Divoomは、中国深圳市に本社を置くShenzen Divoom Technology Co., Ltd.によって開発されました。同社はTerry氏によって2006年に創業され、『テクノロジーとアートの融合』という新たなオーディオ機器やスマートデバイスの分野で革新的な製品を生み出してきました。同社はLED技術、ワイヤレス通信、アプリ開発などの分野に多額の投資を行い、ピクセルアートの表現に適した高品質なLEDディスプレイの開発に成功したことが、Divoomの成功に繋がりました。
現在、Divoomは、グローバル市場を視野に入れた展開を行っており、100以上の国と地域で製品を販売しています。特にアジア市場での成長が著しく、インドネシアはその中でも最も急成長している市場の一つとなっています。同社の経営戦略の特徴として、ソーシャルメディアを活用したマーケティングとコミュニティ形成が挙げられ、Instagram、TikTok、YouTubeなどのプラットフォームを効果的に活用し、ユーザー間の交流を促進するとともに、製品の魅力を効果的に発信しています。
インドネシアでのDivoomの人気は、SNS上で顕著に表れています。Instagramでは、Divoomの公式アカウント@divoom.indonesiaのフォロワー数が3万人を超え、一つの投稿で100万回件以上の再生数を集めています。TikTokやYouTubeでも、Divoomを購入後の開封動画が人気を博しており、ユーザーが自作のピクセルアートやアニメーションを披露する動画が多く投稿されています。
その人気はSNSの世界だけにとどまらず、ジャカルタやスラバヤなどの大都市では、大学のキャンパスや若者が集まるカフェなどにおいても、Divoomデバイスを使用する学生や若手社会人の姿が日常的に見られるようになっています。
Divoomの人気の背景には、インドネシアの若者の間で広がる「個性化」と「デジタル表現」への欲求があると分析されています。すなわち、従来の社会規範にとらわれない自己表現・自己実現の手段として、Divoomの製品が受け入れられているというものです。
加えてDivoomの人気は、「デジタル技術」と「アート」、そして「個人の表現欲求」が交差する新しい市場の出現も示唆しています。インドネシアでのDivoomの急速な普及は、まさにこの新しいトレンドの最前線を体現するものであり、今後も世界中で注目を集め続けることが予想されています。
日本とインドネシアでは、ブームとして火がつくものに差が生じることが多々あり、日本企業がインドネシアでのマーケティングを成功させるためには文化的背景やや社会的要素を理解することが非常に大切です。
弊社インドネシア総合研究所では、ジャカルタの現地法人と連携し、インドネシア人の視点と日本人の視点の両方から、こうしたインドネシアの最新トレンドを踏まえたコンサルティングサービスをご提供させていただきます。ぜお気軽にお問合せくださいませ。