なぜ今インドネシアのジョグジャカルタなのか―王室と政府が生み出す新たなビジネスハブ

先日、弊社インドネシア総研はジョグジャカルタ王宮の次期王妃Mangkubumi殿下に謁見し、意見交換を行いました。

インドネシアにおけるビジネスは、これまでジャカルタ中心に語られてきました。近年、インドネシアにおけるビジネス環境は大きく変化しており、従来のジャカルタ一極集中から地方都市への分散が進んでいます。その中でも特に注目されているのが、ジョグジャカルタ特別州です。

インドネシアにおいてジョグジャカルタは、単なる観光都市ではありません。教育、人材、文化、そして政治構造が融合した極めて特殊な地域であり、日本企業にとっても新たなビジネス拠点としての可能性を秘めています。

今回の次期王妃との謁見を経て、今後弊社はジョグジャカルタと日本をつなぐ窓口としての取り組みを行っていく予定です。

本稿では、インドネシアの中でも特異な存在であるジョグジャカルタの特徴と、そのビジネス的価値について解説します。

目次

ジョグジャカルタについて:伝統と若者が共存する「ジャワの古都」

インドネシアというと、ジャカルタに次いで名前が挙がる都市のひとつが「ジョグジャカルタ特別州」です。現地では「ジョグジャ」という愛称で親しまれており、日本人にとっての京都のような、歴史と伝統が今も息づく特別な場所です。

ジョグジャカルタ州政府公式WEBサイト

ジョグジャカルタはジャワ島の中部に位置しています。都会的な便利さがありながら、どこかおっとりとした時間が流れているのが魅力です。
ジョグジャカルタ州全体の人口は約370万人(2020年代推計)です。州都であるジョグジャカルタ市に人口が密集しており、ジャワ島内でも非常に人口密度の高い、活気あるエリアとなっています。

また、ジョグジャカルタは教育の街として有名です。州内には、インドネシア最古の国立大学であり、現大統領や多くの政財界人を輩出しているガジャ・マダ大学をはじめ、私立・公立合わせて100校を超える高等教育機関が存在します。全国から優秀な学生が集まるため、街には安くて美味しい食堂やおしゃれなカフェが非常に多く、若く活気のあるエネルギーに満ちています。

街の近くには、世界最大級の仏教遺跡であるボロブドゥール寺院遺跡群や、ヒンドゥー教の壮大な寺院であるプランバナン寺院遺跡群という2つのユネスコ世界遺産があり、世界中から観光客が訪れます。また、現在も数年おきに噴火している活火山のメラピ山がそびえ立ち、自然の力強さを間近に感じることができます。

ボロブドゥール寺院遺跡群
プランバナン寺院遺跡群

また、バティックやガムラン音楽、影絵芝居など、ジャワの伝統文化が観光用としてだけでなく住民の日常の中に当たり前にあるのもこのジョグジャカルタの街の特徴です。

ジョグジャカルタが特別な理由として、現代でも王制が続いているということが挙げられます。

インドネシアでは通常、州知事は住民の直接選挙で選ばれますが、ジョグジャカルタでは王家であるHamengkubuwono家のスルタン(君主)が知事に、Paku Alam家の当主が副知事になることが法律で決まっている世襲制のため、選挙がありません。

インドネシアがオランダから独立しようとした際、当時の王様であるHamengkubuwono Ⅸ世が自分の領地を独立政府に提供し、財政的にも私財を投げ打って全面的に支援したという歴史があります。その功績への敬意と感謝として、インドネシア政府は「ジョグジャカルタだけは、王様が統治する特別な場所」として認めたのです。

ジョグジャカルタの人々は、ジャワ語で「alon-alon asal kelakon(ゆっくりでも、着実に)」という精神を大切にしていると言われます。効率化が進むジャワ島内の他の大都市と比較して、ジョグジャカルタでは伝統的な慣習や時間感覚が公共の場においても維持されており、この街独自の社会的な雰囲気を作り出しています。

ジョグジャカルタの王室と政治構造

ジョグジャカルタ王室は、スルタンが州知事を兼任し行政と伝統を一体化させるとともに、広大な王有地の管理を通じて地域の経済や開発を統制する役割を担っています。現国王Hamengkubuwono Ⅹ世は、デジタル化による「開かれた王室」の推進や、2012年の特別州法制定による政治的地位の確立、さらに長女の継承指名による女性継承への道を開くなど、組織の近代化を断行しました。
このように伝統を守りつつ時代に即した改革を続けることで、今もなお街の精神的・実質的な要として機能しています。

現在、ジョグジャカルタのスルタン制度は、数百年続く伝統を揺るがす大きな変革期にあります。現スルタンでは、5人の娘(王女)がそれぞれ専門分野を持ち、現代的な組織として王宮を支えています。

長女のMangkubumi殿下は、以前はPembayun王女と呼ばれていましたが、父であるHamengkubuwono Xから2015年に継承者を指す「Mangkubumi」の称号を授与されました。環境保護や野生動物の救済活動に熱心なほか、ジョグジャカルタ特別州商工会議所(Kadin DIY)の会長を長年務めており、多方面でリーダーシップを発揮しています。。

次女のCondrokirono王女はMangkubumi殿下同様、環境保護活動に携わるほか、王宮の事務総局・管理部門にあたるKHP Panitrapuraの長官も務めており、複雑な伝統行事の運営をしています。
三女のMaduretno王女は宮廷舞踊やガムラン音楽など、ジャワ文化を次世代へ継承活動を担当しています。
四女のHayu王女は、王宮のIT・広報局(Tepas Tandha Yekti)を自ら立ち上げ、王宮のデジタル化を牽引しました。。
五女のBendara王女は王宮の文化・芸術部門である「KHP Nitya Budaya」の長官を務めています。また、2014年には相互交流事業の一環で山梨県を来県し、ジュニアサッカー大会を視察されました。

ジョグジャカルタ王室公式WEBサイト

今後の取り組み―人材・技術・投資をつなぐ4つの機能

このようなインドネシアの中でも極めて特異な政治・文化構造を持つジョグジャカルタにおいて、インドネシア総合研究所は、ジョグジャカルタ州および宮内庁から日本側の正式な窓口として任命される予定です。

これは単なる連携ではなく、日本とジョグジャカルタを結ぶ「公式ブリッジ」としての役割を担うものです。

いわば「JAPAN-JOGJA HUB」として、以下の領域で包括的な支援を展開していくことを会合で意見交換しました。

①人材送り出し

インドネシアは若年人口が多く、特にジョグジャカルタは教育都市として優秀な人材が集積しています。これらの人材を日本へ送り出すことで、日本の人手不足解消とインドネシアの雇用創出の双方に寄与します。

②技術移転

日本企業の持つ技術をインドネシアに展開することで、現地産業の高度化を支援します。特に製造業やインフラ分野においては、技術移転のニーズが非常に高い状況です。

③投資斡旋

ジョグジャカルタにおける投資案件の発掘および日本企業への紹介を行います。王家および政府と連携することで、通常ではアクセス困難なプロジェクトにも関与可能です。

④大学との提携サポート

教育都市という特性を活かし、大学との共同研究や教育コンテンツの展開など、産学連携を推進します。

弊社インドネシア総研は、インドネシア国内ですでに複数の具体的プロジェクトに着手しています。

  • ゴミ処理事業
  • 不動産開発
  • 発電事業
  • 学校向け教育素材の提供
  • 防衛産業分野

これらは単なる構想ではなく、実際に現地政府や王家と連携しながら進行している案件であり、インドネシアにおける新たなビジネスモデルの構築を示しています。

まとめ:ジョグジャカルタを起点とするインドネシア戦略

インドネシアにおけるビジネスは、これまでジャカルタ中心に語られてきました。しかし現在は、地方都市の重要性が急速に高まっています。

その中でもジョグジャカルタは、

  • 政府と王室が一体となった意思決定
  • 豊富な若年人材
  • 教育機関との連携可能性
  • 文化と産業の融合

といった特徴を持ち、単なる地方都市ではなく「戦略拠点」としての価値を有しています。

インドネシア市場において、どの都市を拠点とするかは事業成否を大きく左右します。

ジョグジャカルタは、伝統と近代、政治と文化、人材と産業が交差する極めてユニークな都市です。そして、その中心には王家という強い求心力が存在しています。

インドネシア総研では、単なる情報提供にとどまらず、インドネシア現地政府・王家・大学とのネットワークを活用した「実行支援型」のサービスを提供しています。特にジョグジャカルタにおいては、州政府および宮内庁との公式連携を背景に、日本企業単独ではアクセスが難しいプロジェクトや意思決定層へのアプローチが可能です。

また、当社が推進する「Indonesia Soken Innovation Hub」は、日本企業とインドネシアの政府・大学・産業をつなぐ共創プラットフォームとして機能しています。本ハブを通じて、以下のような支援が可能です。

  • インドネシア市場参入に向けた戦略設計および実証プロジェクトの組成
  • 現地パートナー(政府・大学・企業)のマッチング
  • 人材育成から送り出しまでを一体化した人材スキームの構築
  • 技術移転およびローカライズ支援
  • 投資案件の発掘および事業化支援

Indonesia Soken Innovation Hubについては以下の記事も併せてご覧ください。

さらに、ジョグジャカルタを起点としたプロジェクトにおいては、教育機関との連携による人材供給、王家との関係性を活かした土地・開発案件へのアクセス、さらには州レベルでの政策的支援の獲得など、他地域では実現が難しい包括的なサポートを提供しています。

インドネシアにおけるビジネスは、「誰とつながるか」によって成果が大きく変わります。インドネシア総研は、その最前線で日本とインドネシアをつなぐ実務パートナーとして、構想から実行まで伴走いたします。

インドネシア総研は、この特異な環境を活かし、日本企業とインドネシアをつなぐハブとして、実務レベルでの支援を提供しています。

インドネシア進出、人材活用、投資機会の検討にご関心をお持ちの企業様は、ぜひインドネシア総合研究所までお問い合わせください。

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