【コラム】インドネシアのZ世代とミレニアル世代の価値観・家族観 

皆さんはテレビやSNSなどでZ世代やミレニアル世代という言葉を耳にしたことはありますでしょうか。最近、マーケティングの文脈で購買行動を分析したりする際によく用いられる世代区分のことです。この2つの世代は若年層に分類されますが、生まれた年が数年異なるだけでその行動傾向や考え方、価値観は大きく異なっています。

インドネシアではミレニアル世代やZ世代は人口の大きな割合を占めています。インドネシア社会においても両世代間には大きな違いがみられ、彼らの行動や価値観が比較されています。

今回のコラムでは、インドネシアのZ世代とミレニアル世代の違いに着目し、彼らの家族観や懸念する社会課題などを比較しています。今後は、「Indonesia Millenial Report 2024」、「Indonesia Gen Z Report 2024」の内容からトピックを分けて何回かにわたってお伝えいたします。

目次

インドネシアの人口におけるZ世代とミレニアル世代

(出典:インドネシア中央統計局「Penduduk Menurut Kelompok Umur dan Jenis Kelamin (Jiwa), 2020-2022」より弊社作成)
参考:https://ppukab.bps.go.id/indicator/12/80/1/penduduk-menurut-kelompok-umur-dan-jenis-kelamin.html

インドネシアでは、人口の70.72%が生産年齢(15歳~64歳)で人口ボーナスを享受しており、2045年には人口黄金期を迎えるとされています。現在、インドネシアではZ世代(1997年~2012年生まれ)が最大の人口であり、総人口の27.94%を占めています。その次に多いのがミレニアル世代(1981年~1996年生まれ)で25.87%を占めています。

この、Z世代とミレニアル世代は生産年齢人口の大部分を占め、特にZ世代は1998年の政治改革以降に育った世代で、デジタルネイティブとも呼ばれており、他の年齢層とは異なる行動、ライフスタイルの特徴を持っています。

このように人口の大部分を占めるZ世代やミレニアル世代などの若年層の価値観、行動などを理解することはインドネシアの今後の道筋を予測するうえで非常に重要なのです。

インドネシアのZ世代・ミレニアル世代の調査手法

本コラムで使用しているZ世代およびミレニアル世代のデータは以下の方法により集計されました。

調査主体:弊社提携パートナーの調査会社Advisia
調査機関:2023年5月29日~7月9日
回答者の居住地:インドネシアの10都市(ジャカルタ、バンドン、スマラン、ジョグジャカルタ、スラバヤ、デンパサール、デンパサール、バレンバン、メダン、バリクパパン、マカッサル)
標本抽出法:ランダムサンプリング
回答者数:Z世代が602人、ミレニアル世代が560人
(うち30人ずつに定性的インタビュー調査実施)※一部の項目については弊社が51人と51人ずつに追加調査実施。

インドネシアのZ世代とミレニアル世代の家族・結婚観

今回の弊社の51人への追加調査に基づくと、Z世代は、年齢的には20代前半など若年層であることから、インドネシアでは家族から援助を受けて同居をしている人が62.7%と大多数を占めました。一方で経済的に自立している人は17.6%、家族を経済的に支えている人は19.6%でした。ミレニアル世代では、50人中30人が経済的な援助を受けるあるいは援助をするという理由から両親や義両親などと同居していました。

結婚観についてですが、602人への定量的調査の結果に基づくと、インドネシアのZ世代の2%程度が既婚で、36%は将来的に結婚を希望する意向を示しています。さらに、51人への追加調査の結果から、Z世代では結婚に対して73.7%は積極的に検討していますが、21.1%は結婚に対して「結婚するかもしれない」という曖昧な希望を持っており、興味深いことに5.3%は「結婚したくない」と明確に結婚を希望しないという考えを持っていました。

一方ミレニアル世代は自分の両親と自分の子どもの両方を養う役割を担う世代で、大家族での同居が多いことから、結婚を考える際に家族背景が適合していることが大きな要素となっています。

今回のミレニアル世代への51人への追加調査では、51人中26人は既婚で、24人が未婚で、今後も独身でいることを強く表明していたのは1名でした。Z世代と比べるとミレニアル世代では、今後も独身でいつづけることを強く表明している人は少ない傾向にあります。

インドネシアのZ世代とミレニアル世代が持つ課題意識

(出典:「Indonesia Millenial Report 2024」、「Indonesia Gen Z Report 2024」より弊社作成)

(出典:インドネシア中央統計局「Berita Resmi Statistik 17 Juli 2023」より弊社作成)
参考:https://webapi.bps.go.id/download.php?f=g57Or9NUAqymSww3Lei9z9OOUilxOECbI7ySX+ULzGoZYjikWghsXKCo2OFdyfvYfDmUbQw8d27HuosAeeWg7BHjIrrGWdBbSgW9BpSAi+it/kO3EumMt71Bbo3qxVoASq1EMqri9il/tcy0F/sbE/LHHK0zKgmwmynCHeA5TtU4dmDO40aJvosLCBbGy8GZbfjgB0ls0vfHIDaAeyG0ew==

インドネシアのZ世代およびミレニアル世代が懸念している社会課題は上のグラフの通りです。インドネシアのZ世代およびミレニアル世代は、経済的、教育的格差など幅広い社会的不平等への課題へ懸念を抱いています。

この数年でインドネシアでは経済格差が拡大の一途をたどっており、新型コロナウイルスパンデミック前のジニ係数(※)は2019年9月時点では0.38であったのに対して2023年3月時点では0.388と増加しています。

インドネシア中央統計局によると、この社会経済的不平等の拡大は、新型コロナウイルスのパンデミック期以降の経済の回復が不均一であることが原因であるとしています。

※ジニ係数とは、所得格差を表す指標で、0-1の間の数字で表されます。0に近いほど所得格差が小さく、1に近づくほど格差が拡大していることを示しています。
参考:https://www.nomura.co.jp/terms/japan/si/A02571.html

【メンタルヘルスに関する課題】

インドネシアにおける社会経済的不平等によって他の社会課題の悪化が連鎖的に起こり、更に精神的な不安感の増大や政治への不信感につながり、複数の社会課題への懸念を生じさせています。メンタルヘルスの課題に関しては、Z世代およびミレニアル世代ともに大きな課題ですが、Z世代ではメンタルヘルスケアへのアクセスがデジタルなものである点が特徴的です。

Z世代でメンタルヘルスに問題を抱える多くの若者はオンラインでの自己診断やサポート、情報を得ています。メンタルヘルスに関する問題は一般的には上の世代では偏見にさらされてきましたが、Z世代はInstagram、Twitter、TikTokなどのSNSで勇気をもって自身のメンタルヘルスに関する葛藤や問題をシェアする傾向があります。

【人権に関する課題】

インドネシアでは、政治やジェンダーの観点から問題をオンラインで議論する人々が「社会正義の戦士(Pejuang Keadilan Sosial)」としてSNS上では時に嘲笑されることもありますが、Z世代およびミレニアル世代ともに人権の課題を認識しています。

このような傾向は、インドネシアの国是である「パンチャシラ」、つまり「多様性の中の統一」に関するイデオロギーに一致しています。「パンチャシラ」に関する詳細は関連記事「【コラム】インドネシアの国是パンチャシラとは」をご参照ください。Z世代、ミレニアル世代ともにこのイデオロギーが定着しており、公正・公平な社会への取り組みや関与が強いのです。

特にZ世代では大多数が新秩序体制の崩壊後のレフォルマシ以降の時代に育ち、政治活動・運動が盛んであったことから、インドネシア史における大きな転換点を目にしてきました。これらの政治的な動きは、Z世代の若者が人権と社会正義を擁護するという考えや取り組みを形成するうえで極めて重要な役割を果たしました。

しかしながら、これらの人権擁護の考え方はすべての人々に向けられたものではなく、LGBTの人々の人権擁護に関しては反対の結果となっています。本調査のZ世代の89%、ミレニアル世代の87%がLGBT排除への支持を表明しています。これらの考え方はLGBTへの差別や暴力を助長する可能性があり、インドネシア社会における課題でもあります。

関連記事:https://www.indonesiasoken.com/news/what-is-indonesias-national-policy-pancasila/

【気候変動・環境に関する課題】

Z世代およびミレニアル世代ともに気候変動や環境に関する問題を真剣に考えており、Z世代の88%、ミレニアル世代の90%が深刻な課題であると回答しています。また、両世代ともにこれらの課題は個人的なものではなく政府・企業レベルで取り組むべきものと認識しています。

そして、Z世代の82%、ミレニアル世代の68%が環境に優しい製品や持続可能な製品に対してより高いお金を払ってでも買うと回答しており、Z世代の方が購買行動にも気候変動や環境への意識が高い傾向があります。

今回のコラムでは、インドネシアの若年層を形成するZ世代とミレニアル世代の家族観や社会課題への認識をお伝えいたしました。両世代で共通する価値観や行動もありますが、結婚観や環境への配慮などの観点では相違点も見られました。

弊社では、インドネシアの社会全般に関して独自に大規模な調査を実施し、インドネシアのリアルタイムの情報を入手することが可能です。インドネシアでの事業をお考えの方はぜひ弊社までお問い合わせくださいませ。

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