【アルビー日記】インドネシア語と日本語を行き来して学ぶ ~アルビーメソッドの具体的な事例~

こんにちは。インドネシア総研代表のアルビーです。
今回は、弊社が運営する日本語学校(LPK)の大きな特徴の一つである「アルビーメソッド」が実際に提供している教育内容について、3つの例をご紹介します。
アルビーメソッドは、複数言語を多様な点で照らし合わせ、言語同士の異同を明らかにする「対照言語学」を土台とした教育内容を作成し、アクティブラーニングの実践とともに、学生が自然な日本語で会話することができるような教育を提供しています。
「相槌」編


弊社がインドネシアで運営委託いただいている各日本語学校では、アルビーメソッドを用いて、日本で関わる人々と円滑なコミュニケーションをとりながら生活できる日本語の習得に力を入れています。
先日、私が直々に、弊社が運営代行を行う学校の一つであるTERAKOYA TOKYOの学生に対してアルビーメソッドの要点をおさえた授業を実施しました。学生だけでなく、先生も参加し、アルビーメソッドが全てのカリキュラムにおいて反映されているか定期的に確認しています。
今回は、アルビーメソッドを用いて、円滑なコミュニケーションに必要な「相槌」を学生に習得してもらいました。そのなかでも特に学生の反応が良かった例をご紹介します。
日本でよく使われる相槌に、「あーそうだ」、「そうですね」や「あれ?なんだっけ?」という表現があります。教科書で学んだ文章が思い出せない時、瞬時に答えられない時など、日本語を学ぶ学生にとって便利な表現でもあります。また、日本の受け入れ先にとっても、馴染みのある表現を使用して会話する学生からは、自然で親しみやすい日本語を使うことができる人という印象を受けます。
しかし、教科書に載っていない「生きた表現」である相槌を習得することは簡単ではありません。そこで、アルビーメソッドでは、一度母国語に戻り、学生にとって使い慣れたインドネシア語と比べてみます。
すると、「あーそうだ」、「そうですね」や「あれ?なんだっけ?」という表現を、学生自身が普段インドネシア語で「Oh〜ya」、「 Oh gitu ya」、「Apa ya?, Apa namanya?」と表現していることに気が付きます。
新しい表現を日本語特有のものとして捉えるのではなく、自分たちが頻繁に使う表現と似ているものとして捉えられるようになったことで、授業を終える頃には学生の日本語に対する関心がより強まっていました。
しかしながら、相槌をただ学ぶだけでは、会話の最中に応用することはできません。
そこで、アルビーメソッドでは、学生が実践場面で学習成果を思う存分発揮できるよう、学習段階で自然なインプット方法を用いて学生の会話術向上を支えています。
「間投詞(filer)」編
今回は、弊社がインドネシアで運営する日本語学校(LPK)でも重点的に教えている「〜ですね」という表現についてご紹介します。アルビーメソッドが「そうですね、〜ですね」のような間投詞を重視する背景には、外国語の学習歴が浅い方に共通する「不自然さ」や「ぎこちなさ」への課題意識があります。
例えば、以下のような文章を口頭で伝えるとします。
「私はボヨラリからきました。ボヨラリは牛が多いです。たぶん、人よりも多いと思います。」
日本語が母国語であれば、違和感のない速度で、適切な間をあけて伝えることができるような文章です。一方で、日本語を数ヶ月で習得しなければいけない学生の多くは、このような文章を伝えようとすると、暗記した文章を伝えることに集中していて、不自然な間をつくる様子が見受けられます。よって、聞き手からは独り言であるかのように受け取られ、自然な会話をしているという感覚が生じづらい傾向にあります。
アルビーメソッドでは、聞き手が不自然な印象を受けないよう、かつ学生が落ち着いて会話に集中できるよう、適切な相槌を入れながら会話のペースをつかむ手段として、文節ごとに「ですね」を入れるという練習方法を取り入れています。
例えば、先ほどの文章に応用してみると以下のようになります。
「私は(ですね)/ ボヨラリから(ですね)/ 来ました。
ボヨラリは(ですね)/ 牛が(ですね)/ 多いです。
たぶん(ですね)、/ 人よりも(ですね)/ 多いと思います。」
このように各文節に「ですね」を入れて何度も発音することで、「ですね」を用いた表現に慣れるだけでなく、次に述べる言葉がすぐに思いつかない際や考える時間を確保する必要が生じた際、状況に応じて反射的に「そうですね、えーっとですね…」と発するための土台を築いています。
実際に、TERAKOYA TOKYOで学ぶ学生のなかにも、自分で文章を考えて発言する際に「そうですね」と自然に使いこなしている学生も増えてきています。
「繰り返し」編
先日私が学校で授業を実施した際、学生から面白い質問を受けました。
なぜ「人」は「ひと」と発音するのに、「人々」は「ひとひと」ではなく「ひとびと」なのか
学生の言う通り、「方々」、「所々」、「時々」、「日々」、「国々」など、他の表現においても繰り返す際に濁音がつきます。
学生がこのような疑問をもつ背景には、インドネシア語との面白い共通点があります。
インドネシア語で「人々」は「orang – orang(オラン オラン)」と言います。
たくさん在ることを表現する際、同じ言葉を同じ音で繰り返す点がインドネシア語の特徴です。
他にも、「国々」は「negara – negara」、「山々」は「gunung – gunung」と表現します。
日本語とインドネシア語には「同じ言葉」を繰り返す表現が共通して存在していることがわかります。一方で、日本語においては必ずしも「同じ音」を繰り返すわけではない点に学生は難しさを感じます。
「人々」は「ひとびと」、「山々」は「やまやま」のように、日本語を母語として習得してきた人が当然のように行う使い分けがあります。アルビーメソッドは、暗記で乗り切ることのできない多様な表現と直面した際にも、学生に寄り添う教育を実施することのできる学習方法です。「なぜ」という疑問をもち、言葉の成り立ちを学ぶアルビーメソッドを用いることで、学生が抱える難しさと向き合うことが可能となります。
おわりに
ゼロから約半年でN2(日本語能力試験2級)以上の資格取得を目指すインドネシア人学生にとって、日本語の語彙の数を増やし、文法の理解を深めることはとても大切です。しかし、学生は日本へ渡航したのち、多くの日本人と会話をするなかで、さらに豊かな日本語に触れることになります。よって、アルビーメソッドでは、会話がさらなる学びの強い支えとなるように、会話力を鍛える教育内容も提供しています。その一例に相槌や間投詞などがあり、これらの習得を通して、日本人が関係を築きやすいと感じるような表現を使いこなすインドネシア人労働者を育てることを重視しています。
参考動画:アルビーメソッドで日本語学習歴ゼロの状態から2ヶ月学習した学生の様子
アルビーメソッドは、「日本語への入り口」として、学生が将来にわたり日本語を使って生きてゆくことができるような基礎を固め、学生を支え続けることができるよう、日々カリキュラムの評価、普及に力を入れています。
インドネシア人材、インドネシアでの学校運営にご興味のある方は、ぜひお気軽にお問合せください。


