【コラム】2024年インドネシア新大統領プラボウォの目玉政策 ―学校給食プロジェクトと大規模農園プロジェクト
インドネシア最高裁判所は、2024年4月22日に、同年2月の選挙で58.6%の票を獲得したプラボウォ・スビアント氏の勝利に対するライバル候補者からの異議申し立てを却下しました。それを受けて、プラボウォ氏が、インドネシアの次期大統領となることが、インドネシア選挙管理委員会によって正式に宣言されました。
今回のコラムでは、インドネシア国内外から注目を集める新大統領プラボウォ氏の政策について、特に目玉となるものをピックアップしてご紹介いたします。
プラボウォ新大統領の8つの目標と8つの政策
プラボウォ新大統領とギブラン副大統領は。8つの目標と8つの政策を公約として掲げています。
【8つの目標】
- パンチャシラ、民主主義、人権のイデオロギーを強化する
- 国防と安全保障体制を強化し、食料、エネルギー、水、創造的経済、グリーン経済、ブルー経済の自給を通じて、国家の自立を促す
- 質の高い雇用を増やし、起業家精神を奨励する、クリエイティブ産業の発展、インフラ整備の継続
- 人的資源(HR)、科学、技術、教育、健康、スポーツの成果、男女平等の役割の強化を図る
- 川下と工業化を継続する国内の付加価値を高める
- 経済的平等と貧困撲滅のために、村から、そして下からの構築を目指す
- 政治・法律改革を強化するために、官僚主義を強化し、汚職と麻薬の防止と撲滅を目指す
- 環境との共生を強化する、公正で豊かな社会を実現するために、自然、文化、そして宗教間の寛容性を高める。
【8つの政策】
- 学校や寄宿学校での昼食や牛乳の無料提供、5歳未満の子どもや妊婦への栄養補助を行う
- 無料の健康診断を実施し、結核患者を5年間で50%減少させ、質の高い完全な病院を地方に作る
- 村、地域、国営の食料貯蔵庫により、農地の生産性を向上させる。
- 各地区に優れた一貫校を建設し、改築が必要な学校を改善する。
- 社会福祉カードと職業カードのプログラムを継続し、絶対的な貧困をなくす
- 公務員(特に教師、講師、医療従事者)の給与を引き上げる
- 村のインフラ整備、直接現金扶助(BLT)の継続、生活困窮者への低コストで衛生的な住宅の提供。
- 国家収入機関を設立し、国家収入の国内総生産(GDP)に対する比率を23%に引き上げる
https://www.bbc.com/indonesia/articles/c4nw109pyx1o
PRABOWOGIBRAN_VISI_MISI.pdf (medcom.id)
この中で、特に目玉となっているのが①「学校や寄宿学校での昼食や牛乳の無料提供、5歳未満の子どもや妊婦への栄養補助を行う」の学校給食プロジェクトと、③「村、地域、国営の食料貯蔵庫により、農地の生産性を向上させる。」の大規模農園プロジェクトです。
学校給食プロジェクト
学校給食プロジェクトには、幼稚園から高校までの給食提供と、妊婦と乳幼児向けの栄養サポートが含まれています。2029年までに全国の対象者約8000万人全てにサービスを提供することを目標としています。
PRABOWOGIBRAN_VISI_MISI.pdf (medcom.id)
この学校給食プロジェクトには、費用面と調達面で懸念の声が上がっています。
費用面では、このプロジェクトの実現のためには400兆ルピアとも450兆ルピアの予算が必要だと言われており、経済金融開発研究所のエコノミストは、国家財政に負担をかけるリスクがあると懸念しています。
調達面では、プラボウォ氏は材料は地元の農家から提供されると主張していますが、国内調達の実現可能性について不安の声が上がっています。
TKN専門家評議会のBudiman Sudjatmiko氏の計算によると、年間で670万トンの米、120万トンの鶏肉、50万トンの牛肉、100万トンの魚肉、400万キロリットルの牛乳が必要とされています。食料主権人民連合(KRKP)のコーディネーター、サイード・アブドゥッラー氏は、インドネシア国内の生産能力が上がらなければ、インドネシアの現在の生産能力では、この学校給食プロジェクトは食料輸入に頼ることになると述べています。
https://www.bbc.com/indonesia/articles/c4n18vde13yo
フリーランチ:プラボウォ・ジブラン政策は、食料輸入に頼らずに実現できるのか?- BBCニュースインドネシア
大規模農園プロジェクト
大規模農園プロジェクトは、前大統領ジョコウィ氏のフードエステートプロジェクトを一部改善し、継承するものです。プラボウォ氏は、このプロジェクトで2029年までに最低でも追加で400万ヘクタールの収穫面積を達成することを目標としています。このプロジェクトで注力される作物は米、トウモロコシ、大豆、キャッサバ、サトウキビ、サゴヤシ、パンノキなどです。
PRABOWOGIBRAN_VISI_MISI.pdf (medcom.id)
プラボウォ氏の大規模農園プロジェクトには、食糧倉庫システム、農地の生産性の向上、農地の拡大の3つが含まれます。このプログラムは村、群、市/町、国家レベルで統合的に行われる予定です。具体的には、未開発地を利用した全国規模のフードエステート(大規模農園)の開発、地産地消および効率的な食物流通のための地域のフードバンクの設置、そして国家による農家への経済的なサポートなどが実施される予定です。
国家による経済面でのサポートは、生産コストの30%減少を目標として実施されます。例えば、農地のリースの法制化、ジェネリック農薬の開発、安価な肥料の販売、無担保の低金利ローンの提供などです。政府による収穫物の購入価格も、農家にとっての30%以上の利益を保証したうえで定められます。
反対意見としては、一部の環境団体から自然環境への影響に、不安の声が上がっています。しかし、プラボウォ氏とギブラン氏の公式ホームページによると、開拓の対象とされるのは2,000万ヘクタールの乾燥地帯、及び200万ヘクタールの沼地と湖汐地などの未開発の土地であり、保護林や保全林は食糧生産に転換しないことが約束されています。
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この大規模農園プロジェクトによって、生産者と消費者が共に利益を受け、またインドネシア食料自給率が改善することが期待されています。
今回のコラムでは、新大統領プラボウォ氏の目玉政策として「学校給食プロジェクト」と「大規模農園プロジェクト」の2つについてご紹介いたしました。
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