【アルビー日記】インドネシアの2024年次期大統領選挙と国民性―ワカンダ(Wakanda)と木の葉(Konoha)

皆様こんにちは、インドネシア総合研究所代表のアルビーです。
インドネシアでは、2024年に次期大統領選挙が予定されており、現在インドネシア国内では選挙への動きが活発化しています。現在の大統領はジョコ・ウィドド氏で、2期目ですが、インドネシアでは大統領任期は2期が上限であるため、今回の選挙では新たな大統領が誕生することになっています。今回は、インドネシアの次期大統領選挙の概要と、候補者の1人であるアニス・バスウェダン(Anies Baswedan)氏がある講演会で述べた、インドネシア国民が政権批判に用いる「ワカンダ(Wakanda)」と「木の葉(Konoha)」という隠語に関して私の考えも踏まえてお伝えしたいと思います。

2024年インドネシア大統領選挙の候補者

2024年インドネシアの大統領選挙の候補者は、2023年10月~11月に候補者登録を経て、正式に決まりますが、現在3名の有力候補者がいます。

【プラボウォ・スビアント(Prabowo Subianto)氏】
元陸軍将校で、現在国防大臣のプラボウォ氏は、2014年および2019年の大統領選挙にも出馬した経験があります。現在、プラボウォ氏はZ世代からの高い支持率を得ており、有権者の60%が若年層のインドネシアにおいては注目の候補者の1人です。

【ガンジャル・プラノウォ(Ganjar Pranowo)氏】
現在の中部ジャワ州知事です。ジョコ・ウィドド大統領の路線踏襲を表明し、元インドネシア大統領のメガワティ氏からの支持を得ています。また、ガンジャル氏は常に国民の近くで国民に語りかける指導者であるという評価をジョコ・ウィドド氏からも得ています。

【アニス・バスウェダン(Anies Baswedan)氏】
アニス氏は、2017年~2022年までインドネシアのジャカルタ特別州の州知事を務めました。任期中は州知事としても人気があり、イスラム保守派からの支持も厚い候補者です。また、アメリカ留学経験から、外交にも長けています。

2024年の大統領選挙の詳細は、関連記事およびレポートの「【無料レポート公開のお知らせ】インドネシアの2024年総選挙:注目すべきポイント」をご参照ください。

関連記事:

無料レポートのダウンロードはこちらから:

参考:https://www.bbc.com/indonesia/articles/cpw2g1q9dneo
https://en.antaranews.com/news/279381/ganjar-pranowo-is-a-leader-close-to-the-people-jokowi

インドネシアにおける民主主義の現状

インドネシアでは、1998年にアジア通貨危機に端を発した政変により、1967年~1998年まで続いたスハルト独裁政権が崩壊し民主化路線へ転換しました。2014年にはインドネシア初の庶民出身の大統領のジョコ・ウィドド氏が当選し、これまでのエリート層支配からの転換期を迎えました。ジョコ・ウィドド氏の大統領就任で民主化路線を順調に進んでいるようにみえましたが、同政権下では民主主義の衰退も指摘されています。ジョコ・ウィドド氏の政権下では、報道や言論の自由に関する刑法改正が行われ、これによって大統領や公的機関への侮辱や虚偽報道が処罰できるようになりました。政権側はヘイトスピーチやフェイクニュース拡散防止を名目としていますが、言論・報道の自由を統制するものとして批判されています。また、「汚職大国」のインドネシアで汚職の取り締まり機関として機能してきた汚職撲滅機関(Komisi Pemberantasan Korupsi)の権限も縮小され、独立の捜査機関から大統領府の一部分を担う行政機関として格下げされました。政権を安定化させる戦略としてこのような制度改正が行われましたが、いずれも国民からは疑問の声もあがっています。

参考:https://keiolaw.org/wp/wp-content/uploads/2021/07/p183%EF%BC%BF%E7%B2%95%E8%B0%B7%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A.pdf
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/05/4823548bfc25f39c.html

アニス氏が指摘するインドネシアの民主主義と言論の自由

アニス氏は現在インドネシアでは、選挙や政治に関する批判や意見表明時に人々がSNSで「ワカンダ(Wakanda)」や「木の葉(Konoha)」という隠語と多く用いていることを指摘しました。「ワカンダ(Wakanda)」はマーベルコミックスに登場するアフリカの架空の国でスーパーヒーローのブラックパンサーの本拠地です。資源や高度な技術を持ちながらも表向きは「資源のない小国」として振舞っています。一方、「木の葉(Konoha)」はNARUTOに登場する架空の村で、火影と呼ばれる者が長として村を統治しています。「木の葉(Konoha)」は社会の多様性やリーダーの数などの類似性が多くあることから、インドネシアとよく関連付けられて語られています。アニス氏は、こうした隠語を用いなければ政権批判ができない状況を悲観しており、人々が政権に意見することに恐怖を感じていることを強調しました。また、民主主義は選挙実施の際のみに機能するのではなく、社会の中で成長していく価値観や規範であり、隠語を用いずに堂々と意見表明ができる民主主義の醸成が必要であると、同氏は述べました。

参考:https://kumparan.com/kumparannews/anies-di-socmed-banyak-yang-nulis-indonesia-itu-konoha-wakanda-apa-artinya-215EmfXRQUs/full
https://www.cnnindonesia.com/nasional/20230829105302-617-991751/anies-soroti-ketakutan-warga-di-balik-kritik-negeri-konoha-dan-wakanda
https://globe.asahi.com/article/11656941

選挙と国民性

今回の隠語の使用背景には深い要因がありましたが、人々がこれらの隠語を選択した理由には国民性が表出していると私は感じています。「ワカンダ(Wakanda)」はマーベル作品で米国発祥ですが、「ワカンダ(Wakanda)」という隠語の使用を好む人は西洋の価値観に強い影響を受けた、ヒーロー物が好きな人だと思います。一方で、「木の葉(Konoha)」という隠語の使用を好む人は中国、韓国、日本などの東アジアの影響を受け、少年・少女漫画などのカルチャーを好む傾向があると思います。インドネシアにおいて、選挙は政治的なイベントである一方で、選挙期間中に人々がSNSなどで意見表明する機会も増えるため、国民性を分析するのに良い機会だと私は考えています。選挙時に各候補の支援者たちは、国民性や国民の行動特性を上手く引き出して、少しでも自分に有利になるようなブランディングを行います。彼らのブランディング戦略に着目することは、事業活動のお手本にすることができるのではないでしょうか。

今回は、来年行われるインドネシア大統領選挙に関連して、インドネシアの選挙の現状や選挙時に表出する国民性に関してお伝えいたしました。選挙で当選するためには候補者は民衆の心に訴えかけ、心に残るようなブランディング戦略が不可欠ですが、この戦略は選挙だけではなくビジネスにも有用だと思います。インドネシアで事業展開をご検討の方、弊社独自のブランディング戦略・手法でお手伝いさせていただくことができますので、インドネシア総合研究所までぜひお問い合わせくださいませ。

株式会社インドネシア総合研究所
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