【コラム】インドネシアにおける技能実習生と特定技能の送り出し規制について

インドネシアから日本へ人材を送り出す際、インドネシアの規制を正しく理解しておくことが重要です。技能実習生や特定技能を送り出す機関は内資法人である必要がありますが、それぞれ規制が異なり、さらにインドネシアの規制は複雑かつ変更されることもよくあるので、現地で日本語学校や送り出し機関を設立する際には細心の注意が必要です。

目次

技能実習生を送り出す場合

技能実習生の場合、インドネシアではLPK*の登録と、現地の組合と提携してDirjenbinalantas*への登録が必要です。また日本では外国人技能実習機構(OTIT)へ許可申請をしなければいけません。技能実習生は「非労働者」という枠組みで、あくまでも「国外で研修を受ける者」として位置づけられています。

※LPK=職業訓練機関(Lembaga pelatihan kerja)
※Dirjenbinalantas = 訓練・生産性指導総局(Direktorat Jenderal Pembinaan Pelatihan dan Produktivitas )

特定技能を送り出す場合

特定技能は技能実習生とは異なり、「労働者」の扱いになります。特定技能の募集を行うにはLP3MI(P3MI)*の許認可が必要かつ、採用活動のライセンスであるSIP2MI*を持っていなければいけません。これらを取得せずにインドネシア人を海外に渡航させるとBP2MI*の取り締まりの対象となります。

学校を所有していない場合も特定技能を募集することが可能ですが、LP3MIの取得のためには最低資本金5,000万円・デポジット1,500万円が必要となります。

※LP3MI(P3MI)=インドネシア政府から許可を得たインドネシア移民労働者派遣会社(Lembaga Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia)
※SIP2MI=インドネシア移民労働者採用許可証(Surat Izin Perekrutan Pekerja migran Indonesia)
※BP2MI=インドネシア移民労働者保護庁(Badan PelindunganPekerja Migran Indonesia)

インドネシア人の海外就労に関する規制が強化されている背景

インドネシア人が海外に出て働くことは、人口が多く失業率の高いインドネシアの問題を解決する一つの手段となっている一方、外国で働くインドネシア人の労働問題や人身売買のような人権に関わる問題が増加してきました。その対応として、インドネシア政府は外国での就労に関して規制強化や法改正を行いながら、国民を保護しようと動いています。

海外就労での労働者問題

海外で働くインドネシア人が増えたのは、サウジアラビアや台湾、香港、マレーシア、シンガポールなどに家事・介護労働者として就労する女性が増加した80年代以降でした。

しかし、移民労働者に関する法の整備が不十分でなかったインドネシアでは、賃金未払いや長時間労働、性的嫌がらせ等の問題が増加しました。そのため2004 年に「インドネシア人労働者派遣及び保護に関する共和国法」が制定されましたが、制定後もサウジアラビアで雇い主による虐待や、不当に処刑されるケースが複数起きており、国内でも批判の声が大きくなっていました。そこで、2017年10月にNGOの強い関与のもと、 「インドネシア人移住労働者の保護に関する2017年法第18号」が成立しました。

参考文献:ワオデ ハニファー イスティコマー「 インドネシア人技能実習生の動機の多様化 : 拡大する移住インフラ影響に着目」2023,P180
合地 幸子「【インドネシア】移民労働者の保護に関する法改正」P1-2

参考サイト:https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2305B_T20C11A6FF1000/

増加する人身売買

21世紀になってから人身売買の問題への対応が世界的に進みましたが、そのきっかけとなったのが2000年12月に国連総会で「国際組織犯罪禁止条約を補完する、人身売買、特に女性と子どもの人身売買の防止および禁止ならびに処罰に関する議定書」が採択されたことでした。ここから国際的に人身売買に対する法の整備が進み、インドネシアでは2007年3月に「人身売買犯罪行為の撲滅法案」が制定されました。

しかしながら、近年もインドネシアでは人身売買は撲滅できておらず、国内外で求人広告と異なる違法労働を強いられる人身売買の事件が次々と起きています。2023年8月にも、国内外で強制労働させられていた2,287人を救出したとインドネシア政府から発表がありました。

参考文献:山本信人「トランスナショナル・アドボカシー・ネットワークからみた反人見取引法―インドネシアにおける立法過程と市民社会―」P99-109

参考WEBサイト:https://www.sankei.com/article/20230811-3GQDJWXA3JMLXN5WVFOA2DWNNU/

インドネシアで人身売買への取り組みが進んだ背景
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kokusaiseiji/2012/169/2012_169_99/_pdf/-char/ja

こういった背景から今後さらに取り締まりの強化や規制変更、法改正される可能性もあります。

法的な条件を満たしたインドネシア人送り出しを

インドネシア人を送り出す際、知識不足で必要な許認可が足りておらず、法律違反になることは絶対に避けなければいけません。ルールに沿って安全な方法で学校設立するためには必ず専門家への確認を行うことをおすすめします。

弊社インドネシア総合研究所では、インドネシア国内での日本語学校設立・運営サポートを行っております。

インドネシアでの人材送り出し機関の設立、インドネシア人の雇用に関してご興味がございましたら、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせくださいませ。

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