【コラム】美容産業におけるインドネシアの海藻資源の可能性

世界最大の群島国家であるインドネシアは、広大な海洋資源を有しており、中でも海藻は美容産業において大きな可能性を秘めた有望な原料として注目されています。広大な海岸線と多様な水界生態系を持つインドネシアは、年間1,000万トン前後の生産量を誇る世界有数の海藻生産国です。

消費者が自然で持続可能な美容法を求める世の中になった現在、インドネシアの海藻資源は、世界的な需要の高まりに応える革新的で効果的な製品を開発するまたとない機会を提供しています。

目次

海藻の生産量と消費

インドネシアは、中国に次いで世界で2番目に海藻生産量の多い国です。各国の海藻生産量が世界全体の生産量に占める割合は、多い順に中国(58.62%)、インドネシア(28.6%)、韓国(5.09%)、フィリピン(4.19%)、北朝鮮(1.6%)、日本(1.15%)、マレーシア(0.53%)、タンザニア(0.5%)、チリ(0.3%)となっています。インドネシアでも海藻を食べる文化があり、生でサラダに、茹でて野菜に、様々なスパイスと混ぜてピクルスに、ココナッツミルクと煮てスープのとろみ付けに、プリンに、甘く煮たゼリーに、サプリメントに…と様々な調理法で親しまれています。


参考:https://repository.seafdec.org.ph/bitstream/handle/10862/185/9718511113p009-019.pdf?sequence=1&isAllowed=y#:~:text=This%20fact%20indicates%20that%20Indonesians,%2C%20pudding%2C%20and%20sweetened%20jellies.
https://fppn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s43014-022-00103-2

海藻の効能

海藻は、その栄養豊富で美肌効果の高い特性から、美容業界で大きな注目を集めています。海藻には様々なビタミン、ミネラル、抗酸化物質が含まれており、肌に潤いを与え、栄養を与え、保護する効果があることが知られています。更にはアミノ酸も豊富に含まれており、コラーゲンの生成を促し、肌の弾力性を高める効果が期待できます。これらの特性により、海藻は保湿剤や美容液からフェイスマスクや角質除去剤まで、幅広いスキンケア製品の理想的な原料となっているのです。

海藻を使用したスキンケア商品

海藻由来の製品一覧(Sensatia Botanicals公式サイトより)https://www.sensatia.com/jp/collection/seastem-marine/

海藻の力を取り入れたインドネシアのブランドのひとつが、Sensatia Botanicalsです。2000年にバリ島カランガスム県の小さな村から始まった同ブランドは、バリの手つかずの海から採取した海藻エキスを使用したナチュラルスキンケア製品を製造・販売しています。

Sensatia Botanicals の製品はいずれもインドネシア宗教省の認定を受けたハラール製品で、300以上の製品がBPOM (Badan Pengawas Obat dan Makanan)と呼ばれる国家医薬品食品監督庁の販売許可を取得しており、バリ島を拠点とした企業で初めて化粧品GMP(Good Manufacturing Practice, 適正製造規範)認証を受けています。Sensatia Botanicalsは、その持続可能性と透明性から、環境意識の高い消費者の間で忠実な支持を集め、バリ島のリゾートホテル「The Asa Maia」などでも客室のアメニティとして使用されており、Forbesなどの国際的に有名なメディアにも紹介されています。

参考:
https://www.sensatia.com/
https://www.forbes.com/sites/liviahengel/2024/02/12/journey-to-wellness-discover-the-asa-maia-a-healing-retreat-in-bali/?sh=7f02409e6405
https://www.theasamaia.com/

インドネシアの数々の企業や研究機関も、新しい美容製品の開発における海藻の可能性を模索しています。インドネシア科学院(Lembaga Ilmu Pengetahuan Indonesia, LIPI)では、海藻エキスの抗菌特性とスキンケア製品への応用の可能性が研究されています。また海藻を主成分とするオーガニックスキンケア製品の開発をしている企業には、Bali Alusといったこれもまたバリ島に拠点を置く企業があります。

参考:https://balialus.com/

海藻からできた包装資材

海藻を使用した製品(Evoware公式サイトより)
https://rethink-plastic.com/home/product


インドネシアの海藻資源の可能性は、スキンケアにとどまりません。海藻は、環境に優しく生分解性のある包装資材の開発にも利用されており、美容業界の環境負荷を軽減するのに役立っています。プラスチックごみ問題解決とインドネシアの海藻栽培漁師の生活向上をミッションに掲げるインドネシア企業Evoware社は、生分解性の海藻ベースの包装紙やコップ等の食用容器を開発し、世界的に注目されている企業の一つとなっています。

参考:https://rethink-plastic.com/home/

地元経済への影響

Evoware社のねらいにもあるように、海藻の栽培と収穫は、インドネシアの沿岸地域社会に大きな経済的機会を提供することを可能にしています。多くの海藻養殖業者は小規模生産者であり、多くがこの貴重な資源に頼って生計を立てています。海藻産業の発展を支援することで、インドネシアは新たな雇用機会を創出し、こうした地域社会の持続可能な経済成長を促進することができるのです。

インドネシアでは100万人以上の沿岸住民が海藻養殖からの収入に頼っており、急速に拡大する海藻産業に貢献しています。多くの加工食品にゲル化剤として使用される海藻抽出物カラギナンという天然多糖類の需要が、特にその成長を牽引しています。現在、インドネシアは世界最大のカラギナン生産国となっています。しかし、海藻の業界価格は不安定で、農家が持続可能な収入を得るのは容易ではありません。そのため海藻産業を離れる人も多く、生産量は一時と比較すると減少しつつあり、生産量拡大を目指す政府の計画に影響を与える可能性があると言われています。

専門家の分析によると、インドネシアの海藻産業における価格変動を促す要因として、主に中国の海藻加工産業及び気候が挙げられると言われています。

中国の海藻加工産業

インドネシアは、最大の海藻加工国である中国に原料海藻の購入を依存しています。またインドネシアでは中国の通貨(人民元)が強いため、中国はコストを低く抑えることができるインドネシアの海藻生産に依存しており、両国は相互補完的な貿易関係を築いています。そのためインドネシアの中国との国際貿易関係はインドネシア国内の海藻価格にも影響を与え、両国間の関係はインドネシアの農家に支払われる海苔価格に大きな影響を与えているのです。

気候

インドネシアの海洋状況の気候の変化は海藻の価格にも影響し、主要な海藻生産地では収穫量が増える年の中頃に価格が最も低くなる傾向にあります。この研究は、農家がこうした季節の変化を戦略的に計画することで、収入を更に増やせる可能性があることを示唆しており、海藻生産の季節性についてのさらなる研究が、この一助となる可能性があります。

インドネシアの海藻資源は美容産業において計り知れない可能性を秘めています。栄養豊富な特性と多様な用途を持つ海藻は、現代の天然かつ持続可能な製品に対する需要の高まりに応えるのに正に最適なのです。インドネシアは、その広大な海藻資源を活用し、海藻産業の発展を支援することで、持続可能な経済成長を促進し、沿岸地域社会に新たな機会を創出しながら、世界の美容市場におけるリーダーとしての地位を確立することができます。

弊社インドネシア研究所とともに、まだまだ将来性の高いこの分野に参入し、より多くの消費者にインドネシア産海藻由来の美容製品の良さを広め、インドネシアの海藻産業と、日本の美容業界に革命を起こしませんか。インドネシアの海藻産業、スキンケア産業等にご関心をお持ちの日本企業の皆様、是非お気軽に弊社インドネシア総合研究所へお問い合わせくださいませ。

参考:
https://theconversation.com/indonesia-is-the-worlds-largest-seaweed-producer-but-why-are-prices-so-volatile-171961

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