【コラム】インドネシアの高速鉄道Whooshの乗客数が600万人に到達―主な特徴や各国との違いを解説

Whooshはインドネシアで東南アジア初の高速鉄道として2023年10月から運行開始し、インドネシアの首都ジャカルタと人口およそ1,100万人の西ジャワ州の大都市バンドンをつないでいます。このWhooshの乗客数が600万人に到達しました。この数字は昨年の実績110万人と比較すると大幅に増加しました。Whooshの乗客数は2023年10月当初は1日あたり9,000人程度でしたが、2024年7月には1日あたり24,132人のピークに達し、2024年10月時点では18,000~22,000人程度で安定しています。

Whooshのチケットは3種類ありますが、平均2500円として計算しても約150億円の売上となります、Whooshは、ジャカルタとバンドンを結ぶ社会インフラになったと言えるでしょう。開業から1年あまりで記録的な乗車人数となったWhooshですが、どのような高速鉄道なのかこの記事で解説しています。

参照:https://investor.id/business/377677/whoosh-layani-6-juta-penumpang-selama-setahun-beroperasi
https://www.metrotvnews.com/read/KRXC5YgE-whoosh-angkut-6-juta-penumpang-selama-setahun

目次

Whooshとはどのような鉄道?

首都ジャカルタとバンドンを結ぶWhooshという高速鉄道はさかのぼること2016年の大統領令第3号にて国家戦略プロジェクトのひとつとして指定されたことによって開始されました。Whooshは「速い」ことを意味し、「時間の節約、最適な運行、信頼性の高いシステム」となることを期待して名づけられました。名前の通り、通常3時間かかるジャカルタ⇔バンドン間を40分で結ぶ速度を誇ります。また、車両には食堂車や障がいのある人のための優先エリアも備えられており、さまざまな配慮がされています。

【Whooshの特徴】

区間首都ジャカルタ⇔バンドン(ハリム、カラワン、パダララン、トゥガルアーを経由)
所要時間約40分(自動車だと約3~4時間)
最高時速350km/h
車両CR400AF(中国高速鉄道のものと同モデル)
収容人数601人(客席は3つのクラスに分かれる)

参照:https://www.antaranews.com/berita/4211031/mengenal-kereta-cepat-jakarta-bandung-whoosh
https://news.detik.com/berita/d-6945211/kereta-cepat-jakarta-bandung-arti-nama-whoosh-dan-kepanjangannya

Whooshの用途

ジャカルタ⇔バンドン間の2つの大都市間の交通の利便性を向上させてきたWhooshですが、果たして乗客はWhooshをどのような用途で利用しているのでしょうか。インドネシア中国高速鉄道(KCIC)の乗客への調査によると、回答者の53%が休暇目的で、23%がビジネス(出張)目的、残りが通学・通勤・その他の活動のために高速鉄道を利用しているそうです。また、回答者によると、Whooshが開通する前は48%が自家用車、23%がバス、残りの回答者が在来線を利用していたようです。Whooshによってジャカルタ⇔バンドン間の利便性が向上し、より人の往来が盛んになることが予想されます。

参照:https://www.cnbcindonesia.com/news/20231117125515-4-489847/terungkap-ternyata-ini-alasan-penumpang-naik-ka-cepat-whoosh

Whooshの良い点

Whooshにはさまざまな技術やサービスが取り入れられており、快適な移動をサポートしています。

【高速性】

Whooshは最高時速350km/hのため、在来線の60~100km/hという速度と比較すると非常に高速であることがわかります。また、日本でも採用されている高速車両用の特別システムを使用しており、踏切に衝突しない専用の軌道や速度を一定に保てるような信号システムがあることで高速性が実現されています。

【特殊なレール技術】

速度を向上させるために、特殊なレール技術が採用されています。レール1メートルあたりの重さが60kgで、長さ1,435mmのR60というレールを採用しています。また、レールの溶接にもフラッシュバット溶接法という技術が利用されており、これは高速鉄道において安全性を確保できる技術のひとつです。

【電気エネルギーの使用による環境への配慮】

Whooshは電気エネルギーを使用して走行しているため、加速しやすく起伏の多い地形にも対応しています。化石燃料を使用しないため、乗客1人あたりの温室効果ガスの排出量が少なく、大気汚染や気候変動への影響を抑えることができます。

【チケットの入手が簡単】

WhooshはGoogle Play、App StoreあるいはWhoosh公式サイトで提供されているアプリケーションをダウンロードすることで、アプリケーションから簡単にチケットを入手できます。座席クラスや座席位置の指定もアプリケーションから行うことができます。支払いが完了すると乗降時に使用するQRコードが発券される仕組みで、簡単にチケットを買うことができることが分かります。

参照:https://dishub.acehprov.go.id/keunggulan-menaiki-kereta-cepat-tertarik-untuk-mencoba-rakan-moda/
https://www.beritasatu.com/ototekno/1070914/ini-6-teknologi-canggih-whoosh-kereta-cepat-jakarta-bandung

Whooshと各国の鉄道の比較

世界各国にさまざまな高速鉄道がありますが世界の鉄道と比較するとどのような違いが見えてくるでしょうか。

【各国との運賃比較】

移動距離運賃
インドネシアジャカルタ⇔バンドン(142km)  片道 エコノミー:27万5,000ルピア(日本円:2,660円) ビジネス:45万ルピア(日本円:4,360円) ファースト:60万ルピア(日本円:5,320円)
台湾台北⇔高雄(350km)  片道 1,490ニュー台湾ドル(日本円:7,070円)
中国北京⇔天津(146km)  片道 2等:55元(日本円:1,170円) 1等:88元(日本円:1,880円) ビジネス:174元(日本円:3,720円)
日本東京⇔大阪(500km)  片道 乗車券:8,910円 特急券:6,010円 合計:14,920円
韓国ソウル⇔慶州(273km)  片道:8万8,508ウォン(日本円:9,670円)
マレーシアKLセントラル⇔クアラルンプール国際空港(43km)  片道:49.5リンギット(日本円;1,730円)

参照:https://www.ocbc.id/id/article/2023/10/20/perbandingan-tarif-kereta-cepat
https://jp.thsrc.com.tw/ArticleContent/43dcca9c-f00b-4d58-a3df-a4f0835484bf
https://www.12306.cn/index
https://railway.jr-central.co.jp/timetable/nr_doc/search.html
https://www.koreantrain.com
https://www.kliaekspres.com

【日本・中国の新幹線との違い】

 インドネシア日本中国
列車の種類CR400AFN700SCR400AF-G
最高速度350km/h285km/h385km/h
車両の特徴中国の高速鉄道と同じ車両で、9,750kwの消費電力地震発生時に迅速に停車できるようなブレーキ搭載マイナス40℃の極寒の気温でも運行可
高速鉄道の全長距離142km3,300km4万5,000km

参照:https://en.tempo.co/read/1781623/differences-between-japans-shinkansen-and-indonesias-whoosh
https://ekbis.sindonews.com/read/1147903/34/5-perbedaan-kereta-cepat-china-dan-jepang-siapa-pemegang-rekor-paling-kilat-1688893678#goog_rewarded
https://www.n-sharyo.co.jp/recruit/projectstory/n700s/#:~:text=2020%E5%B9%B47%E6%9C%88%E3%81%AB,%E3%82%92%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
https://www.cnnindonesia.com/ekonomi/20230923213545-92-1002888/membedah-teknologi-whoosh-hingga-jakarta-bandung-bisa-351-km-jam
https://www.china-emu.cn/Trains/Model/detail-12012-101-F.html#:~:text=CR400AF%2DG%E5%8A%A8%E8%BD%A6%E7%BB%842020,%E5%AE%9E%E9%AA%8C%E9%80%9F%E5%BA%A6385%20km/h%20%E3%80%82&text=CR400AF%2DG%E5%8A%A8%E8%BD%A6%E7%BB%84%E6%98%AF,%E5%8E%9F%E5%8F%AF%E5%8F%98%E8%BD%8%E8%B7%9D)%E3%80%82&text=2020%E5%B9%B409%E6%9C%8828,%E8%BD%A6%E5%8F%B72215%2D2217%E3%80%82
https://www.tokyo-np.co.jp/article/303468#:~:text=2023%E5%B9%B4%E3%81%AB%E9%96%8B%E9%80%9A%E3%81%97%E3%81%9F,%E3%81%AE%E7%B7%8F%E5%BB%B6%E9%95%B7%E3%81%AB%E5%8C%B9%E6%95%B5&text=%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%A7%E3%81%AF%E6%98%A8%E5%B9%B4%E3%80%812776%E3%82%AD%E3%83%AD,%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E6%9C%9F%E5%BE%85%E3%81%AF%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%84%E3%80%82

今回のコラムでは開通して1年経つWhooshの特徴をさまざまな視点から解説いたしました。ジャカルタとバンドンという大都市を短時間で結ぶ同鉄道は、インドネシアの交通利便性向上に貢献しており、これからも運行エリアの経済的な利益の向上などさまざまな効果が期待されています。弊社では、この鉄道の運行エリアでもあるジャカルタ、バンドンのほか観光地として名高いバリにも拠点を設置しております。これから将来的にも経済成長が期待されているインドネシアへの事業進出やインドネシアへの視察サポートなどをさせていただいた実績がございます。ご興味がございましたらぜひ下記までお気軽にお問い合わせくださいませ。

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