【コラム】インドネシアの渋滞の現状とその対策(2022〜2023年)

インドネシアでは渋滞が社会問題となっており、ジョコ・ウィドド大統領は、インドネシアの人々に自家用車から公共交通機関の利用への移行を呼びかけています。
また、渋滞緩和のためにMRTやLRTなどの公共交通機関の整備を行っています。
今回のコラムでは、インドネシアにおける渋滞の現状とその対策についてご紹介します。
首都ジャカルタの渋滞の状況
インドネシアの首都ジャカルタは、2023年には世界で30番目に渋滞がひどい都市に選ばれています。2022年より順位は一つ下がりましたが、ジャカルタの渋滞は前年より悪化しています。
2023年にジャカルタでは、車やバイクで移動をする際10kmあたり平均23分20秒の時間を要し、前年と比較すると約40秒増加していることがわかっています。
また、ジャカルタのドライバーは、1年間で平均225時間を渋滞に費やしていることがわかっています。
このことから、ジャカルタの渋滞状況は悪化していると言えます。
インドネシアの渋滞が多い都市
以下は2022年においてインドネシアで渋滞が多い都市です。インドネシアの中でも特に都市部での渋滞が深刻化しています。
- 1位 スラバヤ (ジャワ島)
- 2位 ジャカルタ(ジャワ島)
- 3位 デンパサール(バリ島)
- 4位 マラン(ジャワ島)
- 5位 ボゴール (ジャワ島)
上記より1位は、ジャカルタではなくインドネシアの第二の都市スラバヤであることがわかっています。
また、5位までに入っている都市は全てジャワ島であり、インドネシアの中でも渋滞が多い地域はジャワ島に集中していることがわかります。
ジャカルタの交通渋滞による経済損失は年間65兆ルピアで、その他の都市部における経済損失は平均して年間12兆ルピアに及びます。
渋滞の問題は、インドネシアの経済にも大きく関わることがわかります。
インドネシアの渋滞の主な原因
インドネシアで渋滞がひどい原因として、公共交通機関の利用率の低さと自家用車の保有率の増加が挙げられます。
東京、香港、シンガポールの公共交通機関の利用率50%と比べ、インドネシアでは20%未満と、利用率が低いことがわかります。
インドネシアでは、公共交通機関よりバイクや車など自家用車を利用する人が多いため、交通渋滞の問題は深刻化しています。
また、過去5年間で自家用車の保有率も上がり1年間で平均8%増加しています。
インドネシアの渋滞を緩和するには、公共交通期間の利用率を上げる必要があることがわかります。
インドネシア都市部における交通の整備とその他の施策
ジャカルタでは、KRLと呼ばれる鉄道やトランスジャカルタ と呼ばれる路線バスが通っていましったが、渋滞の緩和に繋がっていませんでした。
そこでジョコ・ウィドド大統領は以下の鉄道の整備を行いました。
- MRT(ジャカルタ都市高速鉄道):2019年に開通した、インドネシア初の地下鉄
- LRT:2023年に開通した、首都ジャカルタと周辺都市(ボゴール 、デポック、ブカシ )を結ぶ鉄道。
参考WEBサイト:https://www.lrtjakarta.co.id/sejarah.html
また、その他に高架道路の建設や、トランスジャカルタのバスの台数を増やす取り組みも行っています。
渋滞緩和のために設定しているMRTの目標乗客数は、1日あたり18万人ですが、現在は8万人と目標に達していないのが現状です。
鉄道の整備は進んでいますが、渋滞が緩和に繋がるほどではないと言えます。
参考WEBサイト:https://setkab.go.id/kurangi-macet-dan-polusi-presiden-harap-masyarakat-berbondong-bondong-naik-lrt/
https://kumparan.com/info-otomotif/solusi-yang-dilakukan-pemerintah-untuk-mengatasi-kemacetan-jakarta-1wnnLa9GLNt/full
その他の施策としては、以下が挙げられます。
奇数・偶数規制
自動車による渋滞を緩和させる施策で、ナンバープレートの最後の一桁の数字が奇数か偶数かによって、道路を通過を制限する制度です。ジャカルタの公道の通過の際に適応されます。
この制度が適応されるのは、平日の朝6時〜10時と夕方16時〜21時の通勤・帰宅ラッシュの時間に限られます。
4in1制(検討中の施策)
インドネシア政府により現在検討されている渋滞緩和のための施策として「4in1制」が挙げられます。
朝夕の通勤ラッシュにおいて4人以上乗車した車でないとジャカルタの主要道路に入れないという制度で、2016年に廃止された「3in1制」を改良しています。
この制度によって郊外からジャカルタに出入りする車の数の制限が期待できるため、インドネシア政府は適応を検討しています。
今回のコラムでは、インドネシアの渋滞の現状についてご紹介しました。
経済成長が著しいインドネシアであるからこそ、渋滞の問題は深刻化しています。
また、渋滞は大気汚染にも繋がり、その点も大きな社会問題となっています。
今後、国が発展していくと自家用車の所有率が上がり、更に渋滞が悪化することが予想されます。
そのため、インドネシア政府が打ち出しているように、公共交通機関を利用の普及と公共交通機関が利用できる範囲の拡大は急務であると言えます。
また、現在は都市部での問題となりますが、地方でも今後発展を遂げていくと同じことが言えるのではないでしょうか。
今後の発展を見据えて、地方においても公共交通機関の整備は必要であると言えるでしょう。
弊社は、ジャカルタの交通事情などのインドネシアに関する調査の経験もございます。
インドネシアの現地情報や、調査など少しでもお気軽にお問い合わせください。

