【コラム】「途中でいいから」が出来ないインドネシア人:インドネシアと日本のマネジメントスタイルの違い

近年、日本で働くインドネシア人が増加しています。インドネシア人の部下や同僚、上司や取引先と関わる機会は、今後も増えていくでしょう。一般的に、インドネシアには、チームワーク、コミュニケーション、プレゼンテーションを得意とする人が多い一方、意外と苦手としている人をよく見かけるのが「途中経過の報告」を含む「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」です。

今回のコラムでは、なぜインドネシア人がホウレンソウを苦手とするのか、その背景をインドネシアと日本のマネジメントスタイルの違いから探っていきます。
インドネシア人の仕事観についてはこちらのコラムでもご紹介しております。ぜひこちらも併せてご覧ください。

まずは、インドネシアで一般的な2つのマネジメントスタイル「マクロマネジメント」と「マイクロマネジメント」からご紹介いたします。

目次

マクロマネジメントとは何か?

マクロマネジメントは、リーダーがチームに対して自由度と自主性を与えて仕事を管理するスタイルです。マクロマネージャーは、個々のタスクについて具体的なフィードバックを提供するのではなく、大きな方向性のみを示します。
インドネシアのビジネス環境では、マクロマネジメントが一般的に好まれています。これは、マクロマネジメントが従業員の生産性を向上させ、自立性を高めると考えられているためです。

マイクロマネジメントとは何か?

一方、マイクロマネジメントは、マネージャーがチームのすべての活動を監督するスタイルです。マイクロマネージャーは、日々の期待値を設定し、定期的なフィードバックを提供し、必要があればそれぞれのタスクの取り組み方も指導します。 インドネシアでは一般的に、マイクロマネジメントは従業員の満足度を低下させ、離職率を高める可能性があると考えられています。

ホウレンソウとマクロマネジメント、マイクロマネジメントとの関係

報連相(ホウレンソウ)とは、日本独特のビジネスコミュニケーションの原則の一つで、「報」(ほうこく)、「連」(れんらく)、「相」(そうだん)の頭文字をとったものです。インドネシアでは日本語の発音のまま「Horenso」または「Hourensou」と呼ばれています。

ホウレンソウは、マクロマネジメントとマイクロマネジメントの両方に共通点があります。マクロマネジメントのように、ホウレンソウは、上司が常に介入することなく、従業員に報告、連絡、相談をさせることで、従業員の自主性を促します。また同時に、マイクロマネジメントのように、仕事のプロセスの詳細について上司に常に情報を提供し、フィードバックをもらいながら上司と共に個々のタスクの進捗を追います。

「ホウレンソウ」は、インドネシアにおいて日本の働き方を紹介する場面ではよく引用されているものの、日本と関わりのないインドネシア企業では、まだ浸透しているとは言えません。インドネシアでの「ホウレンソウ」の紹介のされ方は、概ね「生産的」「効率的」など好意的なものが多い一方、「ホウレンソウ」実践の場で苦労するインドネシア人が多いのも現状です。

なお、「ホウレンソウ」に似たもので、インドネシアで認知されているものの一つとして「プログレスレポート(進展報告)」があります。「プログレスレポート」は、定期的にミーティングを設け、各々の進展を報告しあう、もしくは定期的に現状についてのレポートを提出するという形で、多くの現代的なインドネシア企業で導入されているようです。

なぜ「途中でいいから報告して」が難しいのか

日本の文化では、「途中途中で相談しながら最終版を完成させ、その後提出する」というスタイルが一般的な一方、インドネシアの文化では、「とりあえず完成させ提出し、必要があればフィードバックをもらいながら修正版・最終版を作っていく」というスタイルも多くの場面で選ばれています。インドネシアでは入社時から即戦力であることが求められる風潮が強く、また優秀な人材ほどゴールのみ提示され、プロセスについては他者から干渉されたり、完成前に意見を求める/求められることに心理的な抵抗を持っていることも少なくないようです。

弊社内で行った「なぜ経過報告や途中の相談が難しいのか」についてのインタビューで、インドネシアの高等教育機関では、作成物が完成していない状態での提出や教授への相談が禁止されている場合があることが分かりました。また、同インタビューでは「自分の課題が完成していないのに自分の相談のために上司・同僚の時間を取る、ということに慣れていない、または抵抗があるのではないか」という意見もありました。


私たちが海外のビジネス文化に慣れるのが難しいように、インドネシア人材にとっても日本文化に慣れるのは一朝一夕では難しいものです。
「彼・彼女は出来ない」とあきらめるのではなく、なぜ抵抗を感じるのか、これまで母国ではどうしてきたのか、など相手の状況を知ることが、双方にとって不要なストレスを減らすことに繋がるでしょう。

弊社インドネシア総合研究所では、設立以降インドネシア人と日本人の両方が協働しています。近年では、弊社がこれまで培ってきたノウハウと高い文化理解能力、言語力を生かして、技能実習や特定技能人材の受け入れサポートも行っております。

新規のインドネシア人材の受け入れ相談や、既存のインドネシア人材の面談代行も行っています。インドネシア人材の受け入れにご興味や不安、お悩みがございましたら、こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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