【アルビー日記】日本で働くインドネシア人技能実習生のジレンマとは

皆様こんにちは、インドネシア総合研究所代表のアルビーです。
先日、日本国内で技能実習生を雇用している会社を訪れ、そこで働いているインドネシア人技能実習生の方々とお話しする機会がありました。
そこから見えてきたのは、インドネシアと日本の雇用慣習の違いから生まれる技能実習生たちの悩みやジレンマでした。

今回のアルビー日記では、日本で働くインドネシア人人材の抱える働き方の悩みについて、弊社インドネシア総研のご提供できる解決方法と合わせてご紹介します。

日本で働くインドネシア人材

日本で就労するインドネシア人人材の数は年々増大傾向にあり、2022年に日本で働いているインドネシア人の数は77,889人と、前年の52,810人から約47.5%増加しています。
そのうち55.4%が技能実習生として来日しており、その他の在留資格としては特定技能外国人、留学生などが主となっています。技能実習制度、特定技能制度などが日本で働きたいインドネシア人の窓口として機能していることが分かります。
とりわけインドネシア人の技能実習生が多いのが製造業ですが、その他サービス業や介護福祉などの職種でもインドネシア人材の受け入れが活発化しており、今後も増加が見込まれます。

参考:
厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30367.html(最終アクセス:2023/10/24)

インドネシア人技能実習生についてはこちらの記事でさらに詳しくご紹介しています。


インドネシア人技能実習生の抱えるジレンマ

今回私が日本で働くインドネシア人技能実習生から話を聞いたところ、インドネシアと日本の働き方の違いからくる戸惑いや不安感などがあることが分かりました。

特に多く聞かれたのが、「プロフェッショナルとして仕事ができない」ことへのジレンマです。技能実習生はそれぞれ専門分野を選択して日本に来ているのに、そうした専門分野のスキルがなかなか習得できず自分の役割を見いだせない、自分の意欲とスキルが合致しないことにストレスを感じる、という声が聞かれました。
技能実習生は実習に来ているのだから、まだそこまでできなくて当然ではないのか、と思う方もおられるかもしれませんが、これにはインドネシア本国での雇用の風潮が関連しています。

インドネシアの雇用の在り方

インドネシアと日本では、採用に関する考え方が根本から異なります。
日本では、新卒一括採用方式で人材を採用し、時間をかけて新人を育成しスキルを伸ばしていく「メンバーシップ型雇用」が一般的です。メンバーシップ型雇用は、終身雇用や年功序列などを前提としており、日本独特のシステムであることから「日本型雇用」とも呼ばれます。長期雇用を前提とするため、将来的な幹部候補として、複数の業務を幅広くこなせるジェネラリストを育成する志向が存在します。

少子高齢化や働き方の多様化が進む中で時代遅れだと指摘されることもありますが、会社が計画的に新人を育成可能、状況に合わせた人材配置などがしやすいといったメリットもあり、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用を併用して運用する企業も多く存在します。

一方のインドネシアでは、基本的には新卒採用の文化が存在せず、企業にとって必要な職務に応じて、スキル、経験をすでに備えたスペシャリスト人材を採用する「ジョブ型雇用」が一般的です。そのため、即戦力を採用する、という意識が、雇用する側にもされる側にも強く存在しています。
また、インドネシアでは、転職も非常に一般的です。大学の専攻などを通じて身に着けた自分の専門性を生かし、次々とより条件の良い仕事に移る風潮があります。新卒一括採用が存在しないため、会社で人材を育成するといった意識が薄いのも特徴的です。
新卒で就労経験のない人材は、まずインターンシップなどで経験を積み、企業に正式に入社する際にはすでにある程度スキルと専門性を持っていると自負して仕事に取り組みます。こうした採用形態のため、大学などで学んだ分野と職業の連続性が高いことも日本と比べて特徴的であると言えます。

インドネシアの就活事情についてはこちらの記事でもご紹介しています。

日本に来るインドネシアの人材のバックグラウンドは様々ですが、特に高い専門性や知識を必要とする分野では大学や専門高校出身の人材も多数存在しています。そうした人材は、日本で技能実習生として雇用されても、自分がすぐ即戦力として働けるプロフェッショナルでなければ、と思い詰めていることがあります。
日本人の経営者の方々は、「外国に来て大変だろうし、一つ一つ習得していってくれればいい」と長期的な視点で育成を考えているのに対し、そのメッセージがなかなか伝わっていない、と感じます。

また、日本では自分の専門外でも勤務時間中手が空いていれば仕事を見つけて動く、というような形で幅広く業務を担当することがありますが、ジョブ型雇用が確立しているインドネシアでは自分の職掌範囲が固まっているため、仕事を見つけて動く、ということがなじんでおらず戸惑うこともあるようです。実際、技能実習生に限らず日本で働くインドネシア人材からは、「業務以外のことも頼まれて困惑している」という声をよく耳にします。日本では、「勤務時間」に対する契約となっているのに対して、インドネシアでは「業務」に対する契約が一般的であることも原因と言えるでしょう。

結果、インドネシアからの技能実習生の中には、自分が価値を提供できておらず負担になっているのでは、という思いから実習期間終了後に特定技能などへ移行せず帰国してしまうパターンも存在するようです。
せっかく日本に慣れてきたころで、しっかりと職場で仕事ができるようになってきたのであれば、特定技能としてさらに活躍してもらえる機会があるにもかかわらず、雇用側も貴重な機会を失っていると言えます。

では、こうしたインドネシアからの技能実習生を雇用する上でのミスコミュニケーションはどのように解決していけるのでしょうか。

納得できる伝え方と環境の整備の重要性

これは何事においても基本ではありますが、やはりコミュニケーションが鍵となってくるでしょう。日本で生活を始めたばかりのインドネシア人技能実習生は、多くが日本の雇用や働き方についてまだなじんでおらず、自分が何を求められているのかわからない状況が多いと考えられます。日本や日系企業で働くことに憧れを抱いて来日したものの、日本語を学んだだけなので、日本の企業文化には来日して初めて触れる、というインドネシア人は多くいます。
雇用する日本の企業側から技能実習生に対し、職場で今後どういう風に働いていってほしいか、どんなスキルを身に着けていってほしいか、またその機会をどう提供していくか、はじめにしっかりと説明して納得してもらうことが重要です。技能実習、の範囲以外にも関連業務や周辺業務を頼むことや、手が空いた時にできることを見つけてもらう、ということもあると考えられますが、そのことも認識しているか確認しておく必要があるでしょう。
あらかじめ双方で当たり前のことができていない、と思うのではなく、当たり前だと思って伝えていなかったのだと受け止め方を変え、適宜丁寧に説明して伝えていく必要があるのではないでしょうか。

また、インドネシア人技能実習生に対して、実習中という扱いであってもプロフェッショナルとして働けるような環境を整えていくことも重要になってきます。技能実習の必須業務、関連業務、周辺業務の割合要件を明確に遵守し必須業務を優先させることは言わずもがなですが、それ以外にも自分が人材として役に立っている、存在意義が発揮できている、という実感を持てるような環境を整備していく必要があるでしょう。
特に、技能実習生として来日する前に、インドネシア国内で当該技能分野での職務経験や、大学、専門高校などで学んだ経験がある場合は、それを生かした仕事を優先的に割り振るなどの工夫が有効でしょう。そうすることで、当人のモチベーションはもちろん、雇用する側にとっても人材の有効活用とさらなるスキルアップが可能になります。

技能実習生の側では、多数の日本人の中に外国人が一人、とマイノリティの境遇であったり、コミュニケーション能力が人によって差があったりするため、何か思っていてもなかなか伝えられないこともあります。できるだけ雇用する側からアプローチして意見を吸い上げていくことが必要です。

ただ、日本語以外ではコミュニケーションが対応しづらい、外国人人材と働く上での社内の意識が統一できていない、といった問題を感じている企業様も少なくないのではないでしょうか。

弊社インドネシア総合研究所では、会社での異文化研修、コミュニケーションサポートなども実施しております。
また、技能実習生や特定技能などのインドネシア人材の雇用について、アドバイザリー契約という形でのサポートも可能です。インドネシア人材との面談代行とご報告を定期的に実施し、働き方の改善などのお手伝いをさせていただきます。

また、弊社はインドネシア・ジャワ島のバンドンにて特定技能人材の送り出し機関も設立しております。新たにインドネシア人材の受け入れを検討されている事業者様や、弊社独自の教育プログラムや育成センターに関心をお持ちの事業者様は、ぜひ弊社までお問合せくださいませ。
インドネシアからの人材の受け入れや将来にわたる事業継続に関して弊社でサポートさせていただきます。

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