【アルビー日記】インドネシアの労働組合法と労働組合事情

こんにちは。インドネシア総研代表のアルビーです。

先日、インドネシア金属労働組合連盟(FSPMI)デポック支部の会長Wido Pratikno氏(写真右)と会談を行いました。(写真:弊社撮影)

インドネシアは、アジアでもいち早く結社の自由および団結権の保護に関する条約(ILO87号条約)及び団結権及び団体交渉権に関する条約(ILO98号条約)に批准した国の一つです。インドネシアには権利意識の強い労働者も多く、労働組合も労働者の権利を守るために積極的に活動しています。最低賃金の引上げを求める2023年のストライキには、インドネシア全国で数十万人が参加しました。

https://www.nna.jp/news/2598371
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/hr-data/jp/about-labor/indonesia/#a-2

今回のコラムでは、インドネシアの労働組合法とインドネシアの主要な労働組合をご紹介いたします。

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目次

◆インドネシアの労働組合法の概要

1998年にILO条約第87号を批准して以降、2000年に労働組合法、2003年に労働法が制定されるなどインドネシア国内での法整備が進みました。現在インドネシアでは、民法、労働法、オムニバス法、労働大臣令など複数の法令が労働法/労働組合法に関する決まりを定めています。その中でも特に労働組合に関する法律で中心となるのが「労働組合法(2000年法律第21号)です。労働組合法では、すべての労働者が組合を結成・加入する権利を有することを保証し、労働省は組合を承認する立場ではなく記録する立場であることが明記されています。

これらの法律により、インドネシアでは10人以上の労働者が組合を結成する権利と、政治的所属、宗教、民族、性別に関係なくすべての労働者が組合に加入する権利を持つことが定められています。

なお、オムニバス法については、退職金や有給休暇の権利に関する規定などについて、一部がこれまでの労働法と比べて労働者に不利な内容だったため、インドネシア全土で反対のデモ活動が発生しました。オムニバス法について詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

◆インドネシアの労働組合加入率

インドネシア統計局の2023年のデータによると、インドネシア全体の労働組合加入率(UDR: Union Density Rate)は11.86%でした。傾向としては、地方部よりも都市部で加入率が高く、また男女だと女性の方が加入率が高いことが分かりました。

出典:Indikator Pekerjaan Layak di Indonesia 2022 – Badan Pusat Statistik Indonesia (bps.go.id)、Indikator Pekerjaan Layak di Indonesia 2023 – Badan Pusat Statistik Indonesia (bps.go.id)

また、職種別に見ると専門職とリーダー職で30%以上と高い加入率である一方、農業や漁業などの一次産業では加入率が低くなっています。

出典:Indikator Pekerjaan Layak di Indonesia 2022 – Badan Pusat Statistik Indonesia (bps.go.id)
https://www.jil.go.jp/foreign/basic_information/indonesia/index.html
https://www.jil.go.jp/english/estatis/eshuyo/e0702.html

なお、世界的には労働組合の加入率は低下傾向にあります。日本では雇用者に占める労働組合加入率(推定組織率)は2023年に16.3%と過去最低を記録しました。JILPTのデータによると、韓国を除いた諸外国でも労働組合の加入率は減少傾向にあります。

出典:https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2024/03/kokunai_01.html
https://www.jil.go.jp/english/estatis/eshuyo/e0702.html

◆インドネシアの主な労働組合

インドネシアの全ての労働者は労働組合に加入する権利があります。新しい労働組合を結成するには、企業内の従業員10名以上の参加が必要です。新しく結成しない場合には、既存の労働組合に参加することになります。

また日本と同じように、インドネシアでも労働組合は連合に所属することが一般的です。インドネシアの主要な労働者連合を以下にご紹介いたします:

全インドネシア労働組合総連合 (K-SPSI:Konfederasi Serikat Pekerja Seluruh Indonesia)

KSPSIは、インドネシアで最も古い歴史を持つ労働組合連合の一つです。KSPSIの前身のFBSIは、21の労働組合の連合として1973年に結成されました。年に一度、2月頃に大会を行っています。KSPSIには、現在約65万人の組合員、875組合が加盟しており、18組織がインドネシア全土の75地区をカバーしています。主要加盟産業は①繊維・被服・皮革 ②化学・エネルギー・鉱山 ③農園 ④銀行・保険 ⑤印刷です。

https://kspsi.or.id/sejarah-kspsi/
https://www.jilaf.or.jp/nc_view/nc_view-1173

インドネシア労働組合総連合 (KSPI:Konfederasi Serikat Pekerja Indonesia)

KSPIは2003年に9つの関連連合がまとまる形で結成されました。通常5年に1回ほど大会を行っています。KSPIには、約192万人の組合員、474組合が加盟しており、60連合の地方組織があります。主要加盟産業は①教員 ②化学・エネルギー・鉱山・石油・ガス ③金属・電子・自動車 ④病院・薬品 ⑤銀行・小売・情報通信 ⑥セメント ⑦印刷・情報・メディア ⑧ホテル・観光です。

https://www.jilaf.or.jp/nc_view/nc_view-1172/
https://projects.ituc-csi.org/kspi-citu?lang=en

インドネシア全労働組合同盟 (K-SBSI:Konfederasi Serikat Buruh Sejahtera Indonesia)

KSBSIは1992年に結成されました。通常4年に1回ほど大会を行っています。KSBSIはスハルト独裁政権時代に結成された最初の独立全国連合で、設立後僅か2年間で3人の活動家が殺害され、250人が逮捕され、2500人が解雇されるなど、当初は国家からの厳しい弾圧を経験しました。KSBSIには、現在約80万人の組合員と10の産業の組織が加盟しており、インドネシア全土に25に地域センターがあります。主要加盟産業は①建設業 ②金属・電子産業 ③林業・農業 ④食品、飲料、ホテル、レストラン、観光、たばこ産業 ⑤衣服・繊維産業です。

https://www.jilaf.or.jp/nc_view/nc_view-1174/
https://www.ilo.org/regions-and-countries/asia-and-pacific/ilo-indonesia-and-timor-leste/areas-work/workers-and-employers-organizations-indonesia-and-timor-leste
https://projects.ituc-csi.org/ksbsi?lang=en

インドネシア金属労働組合連盟(FSPMI:Federasi Serikat Pekerja Metal Indonesia)

今回私が会談を行った連盟です。FSPMIは1999年に設立され、電機産業や自動車産業をはじめ、プラスチック、製紙、医薬品など他の多くの種類の製造業を含む労働者の組合です。2024年5月現在でインドネシア国内に約25万人のメンバーを抱えており、特にジャワ島とバタム島に集中していてブカシだけで10万人のメンバーがいるそうです。

https://fspmi.or.id

近年、日本で働くインドネシア人も、インドネシアで働く日本人も増加しつつあります。インドネシア人と働く際には、現地の法規制やビジネスにおける慣習を押さえることが、非常に重要です。

また、労働組合を通じてインドネシアの企業にアプローチすることも可能です。今回のWido氏との面談において、労働組合を通じてインドネシア企業とのアポ取りの精度を上げることも可能ということが分かりました。

インドネシア企業への電話でのアポ取りは非常に難しく、大体確率で1~3%程度ではないかと思いますが、労働組合や事業協会などを通せばアポ成功率は40%くらいにはなりそうです。 インドネシア企業へのアポ取りにお困りの方や、その他インドネシアビジネスにご関心をお持ちの方は是非お気軽にお問い合わせください

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