【コラム】インドネシアを代表する果物:マンゴスチンの皮に秘められた効能
近年健康意識が高まっているインドネシアでは、地元の特産である食材の隠れた効能に光が当てられています。そのひとつが、日本ではあまり馴染みのない果物であるマンゴスチンの「皮」です。今回のコラムではマンゴスチン果皮の潜在的な効能と関連する注意点についてご紹介いたします。
マンゴスチン(学名:Garcinia mangostana Linn)は、甘酸っぱい果肉と、赤紫色の厚い果皮が特徴とする、東南アジア原産の熱帯果実です。インドネシアではマンゴスチンは「マンギス(Manggis)」と呼ばれています。
一般的に果実のみが可食部とされ、果皮はその苦味のために敬遠されています。しかし実際にはマンゴスチンの果皮には「キサントン」という抗酸化作用の強い成分が豊富に含まれており、インドネシアではその栄養価の高さが注目を集め、サプリメントやハーブドリンクなど、マンゴスチンの果皮由来の様々な製品が市場シェアを拡大し続けています。マンゴスチン果皮の煎じ薬「rebusan kulit manggis」は、その代表格です。マンゴスチン果皮には、具体的に以下のような効能が秘められています。
マンゴスチン果皮の効能
ガンのリスク低減
前述のように、マンゴスチンの果皮にはキサントンが豊富に含まれています。マンゴスチン果皮に含まれるキサントンは、強力な抗酸化作用を発揮し、細胞の老化の原因となる活性酸素からも肌を守る成分です。キサントンを定期的に摂取することで、変性疾患やがんなどの慢性疾患のリスクを軽減できる可能性があるという研究結果も報告されています。
抗炎症作用
マンゴスチン果皮に含まれるキサントンには、抗酸化作用のほかにも抗炎症作用があります。特に、日本国内に70万人以上の患者がいると言われる関節リウマチなどの炎症緩和に高い効果があると言われています。
感染症予防
マンゴスチンの果皮には、抗がん作用、抗プラスミン(赤み・腫れを抑える作用や止血作用)、抗菌作用で知られるタンニンが含まれています。タンニンは植物に含まれるポリフェノールの一種で、柿、お茶、ぶどうなどにも含まれる、苦味・渋味の基となる成分です。免疫力向上や血行を良好にし体を温める効果があり、疲労回復や感染症の予防に役立つと言われています。
お口の健康をサポート
マンゴスチンの果皮に含まれるキサントンやタンニンは、天然成分のため口腔組織や歯の組織に害を及ぼすことなく口腔細菌を減らす効果があり、歯周疾患の治療や口腔内の健康維持のために使われています。マンゴスチンの果皮抽出物を使用したガムや歯磨き粉を見たことがある方もいるのではないでしょうか。味が良いだけでなく、同時に虫歯や歯周病改善・予防にもなるなど、マンゴスチンはまさに良い事づくめのフルーツなのです。
一方で、マンゴスチン果皮に含まれる諸々の成分には、以下のような注意点もあります。
マンゴスチン果皮の注意点
血液凝固抑制作用
マンゴスチン果皮に含まれるキサントンには、血液凝固抑制作用があります。名の通り血液が凝固する速度を遅らせる作用を持つため、出血しやすい方、手術を予定されている方は、合併症を防ぐために手術の少なくとも2週間前からマンゴスチン果皮の摂取を控えることが推奨されています。
化学療法への影響
動物実験では、上述のマンゴスチン果皮の抗がん作用が証明されていますが、実際に癌の化学療法を行なわれている方にはマンゴスチン果皮のサプリメントの摂取は推奨されていません。血糖値や抗酸化メカニズムに影響を与え、化学療法の妨げとなる恐れがあるためです。
消化器系の問題
食物繊維が豊富なマンゴスチン果皮は、過剰に摂取すると、腹部膨満感や下痢などの消化器系の不快感を引き起こす可能性があります。これは全ての食材に通じて言える事ですが、副作用を起こさずに効果を享受するには、適度な摂取を意識することが大切です。
今回のコラムでは、インドネシアを代表するトロピカルフルーツ、マンゴスチンの果皮に秘められた効能についてご紹介いたしました。文化的多様性と豊富な天然資源を持つインドネシアには、古くから伝わる民間療法・生活の知恵が数多くあり、いずれもその効果は証明されています。
世界保健機関(WHO)も、こうした伝統療法を甘く見ず、積極的に公衆衛生に取り入れることを推奨しています。インドネシアで人々の健康意識が高まりを見せる今は、日本の企業が健康とウェルネス分野でビジネスを展開する絶好の機会です。