【コラム】インドネシアの農産物最新データ③薬用植物編

インドネシアには、風邪や持病を治し、若さや美しさを保つために古くから人々の間で愛されている「jamu」というジュースのような飲み物があります。jamuの材料は、ショウガ(jahe)、ウコン(kunyit)、バンウコン(kencur)、トゥムラワック(temulawak)、レンクワス(lengkuas)などの地下茎の他、葉や花、樹皮、種、果物などを混ぜ合わせたものです。これにシナモン、ナツメグ、コブミカン(Kaffir lime)の葉などのスパイスを加え、ココナッツシュガーで好みの甘さに調節します。インドネシアの各家庭には代々伝わる様々なjamuのレシピがあり、家庭療法として世代を超えて愛されています。

今回のコラムでは、インドネシア統計局(BPS)が毎年発行している「Statistik Hortikultura (園芸統計)」の2021年版より、特に生産量の多いショウガ、ウコン、トゥムラワックの3品目の生産及び貿易動向についてご紹介させていただきます。以前ご紹介させて頂きましたコラム「インドネシアの農産物最新データ②果物編」では、jamuにも使われるインドネシアのトロピカルフルーツの生産及び貿易動向について詳しくご紹介しておりますので、是非こちらもご覧ください。

ショウガ

2021年のインドネシアのショウガ生産量は307,240トンに達し、2020年比で123,700トン(67.42%)増加しました。2021年のショウガの作付面積は10,610haと、2020年に比べ3,150ha(42.93%)増加しています。
ショウガの生産量が多い州は、南スラウェシ州、北スマトラ州、東ジャワ州の3 州です。南スラウェシ州は、生産量 60,790トン、ショウガの作付面積は1,510haで、国の総生産量の約19.79%です。続いて北スマトラ州は生産量 が52,240トン、作付面積が1,130haで、総生産量の約17%です。東ジャワ州の生産量は43,380トン、作付面積は1,570ha、総生産量の約14.27%です。つまり、インドネシアのショウガの半数強が、この3州で生産されています。

インドネシアのショウガの輸出額と輸入額の推移(弊社作成)

インドネシアのショウガの輸出入は、2018年を境に輸入額が輸出額を大幅に上回るようになりました。2021年のショウガの輸出額は2020年比19.75%(88万ドル)減少し、356万ドルでした。2021年度時点でのインドネシアのショウガの主な輸出相手国は、マレーシアが61万ドル(1,475.9トン)、インドが447,540ドル(328.3トン)、ドイツが33万ドル(59.9トン)です。
2021年の輸入額は、2020年比48.06%(814万ドル)減少し、880万ドルでした。 2021年度時点でのインドネシアのショウガの主な輸入相手国は、インドが501万ドル(4.879,8トン)、タイが132万ドル(1,593トン)、ベトナムが82万ドル(562.5トン)です。
取引量で見ると輸出入には大差がないものの、取引価格を比べると、インド産のショウガやタイ産のショウガはインドネシア産のショウガより比較的高いことが伺えます。

インドネシアにおけるショウガの輸出入の構図(弊社作成)

ウコン

2021年のインドネシアのウコン生産量は184,820トンで、2020年の生産量から4.50%減少したことが報告されました。2021年のウコンの作付面積は7,350haと、2020年に比べ0.0788ha(9.63%)減少しています。
ウコンの生産量が最も多い州は、東ジャワ州、中央ジャワ州、西ジャワ州の3州です。東ジャワ州は、生産量82,990トン、作付面積3,460haで、国のウコン総生産量の約44.90%です。続く中央ジャワ州は、生産量20,270トン、作付面積1,100haで、総生産量の約 10.97%です。西ジャワ州は生産量20,050トン、作付面積795haで、総生産量の約10.85%です。インドネシアのウコンの生産はジャワ島に集中しています。

インドネシアにおけるウコンの輸出額と輸入額の推移(弊社作成)

インドネシアのウコンは、輸出額が輸入額を圧倒的に上回っています。そしてマーケットに並ぶウコンは殆どが国産です。
2021年のウコンの輸出額は、896万ドルと、2020年比5.75%(55万ドル)減少しました。2021年におけるインドネシア産ウコンの主な輸出相手国は、インドが670万ドル(7,140トン)、シンガポールが63万ドル(41.88トン)、アメリカが447,896ドル(336.2トン)です。
また輸入額は332万ドルで、2020年比33.07% (82万ドル)増加しました。2021年におけるインドネシア産ウコンの主な輸入相手国は、インドが331万ドル(2,294トン)と実にウコン輸入の99%と、ウコンの輸入はほぼインド1国に依存している状況といえます。

インドネシアにおけるウコンの輸出入の構図(弊社作成)

トゥムラワック

トゥムラワックは、ウコンと同じショウガ科に属しますが、一般的なウコンに比べ、黄色い色素クルクミンが豊富に含まれています。そのため一般的なウコンよりも黄色味が強く、解毒作用や抗酸化作用により大きな効果が期待できるとされています。jamuの鮮やかな黄色もトゥムラワックによるものです。インドネシアではjamuとしてだけでなく、トゥムラワックビール(bir temulawak)なるものも発売されています。ジャワの唐辛子、カルダモン、スチャン(secang)と呼ばれる木の皮、シナモンなどのスパイスを混ぜ合わせたこの伝統的な飲み物は、爽やかな風味があり、体を温めてくれるため、ジャワの人々の間で昔から親しまれています。乾燥されパウダー状になったものも販売されているため、お土産にもピッタリです。

トゥムラワック(左)とトゥムラワックビール(右)

インドネシアにおけるトゥムラワックの生産量は年々増加傾向にあります。2021年のトゥムラワック生産量は32,280トンで、2020年比20.71%増加しました。2021年のトゥムラワックの作付面積は1,950haと、2020年に比べ450ha(30.25%)増加しています。
トゥムラワックの生産量が多いのは東ジャワ州、中央ジャワ州、ジョグジャカルタ特別州です。東ジャワ州は、生産量23,000トン、作付面積1,480haで、国の総生産量の約71.59%です。続いて中央ジャワ州は生産量5,510トン、作付面積294.6haで総生産量の17.01%です。また、西ジャワ州は生産量1,500トン、作付面積66.2haで総生産量の約4.60%です。トゥムラワックは「ジャムウコン」と呼ばれることもあり、その名の通り9割以上がジャワ島内で生産されています。


今回のコラムでは、BPSの最新のデータから、インドネシアにおける薬用植物3品目:ショウガ、ウコン、トゥムラワックの近年の生産量の変動及び輸出入について、また日本では馴染みの薄いトゥムラワックについて詳しくご紹介させて頂きましたが、如何でしたでしょうか。「インドネシアの農産物最新データ」の連載最終回となります次回のコラムでは、観葉植物についてご紹介させていただきますので、是非そちらもご覧くださいませ。

インドネシアでは、自然の恵みを活かした先祖伝来の知恵が根強く残っており、今回ご紹介させていただきましたjamuやトゥムラワックビール、及びそれらの原料となる地下茎類はとても重要視されています。日本においても漢方薬など東方医学は人気が高いですが、インドネシアの自然療法は日本ではまだまだ知名度が低い分野です。弊社インドネシア総合研究所では、「日本からインドネシア」だけでなく、「インドネシアから日本」のインバウンドビジネスも多数お手伝いさせていただいております。そしてインドネシア特有の天然資源や未だ日本市場に定着していない魅力的な商品・サービスを提供できる会社が多数あります。弊社では近くこの様なインドネシア企業と日本の皆様を結びつけるマッチングサイトを立ち上げる予定です。是非この機会に、インドネシアの伝統文化・食品を日本で広めるビジネスをご検討なさってはいかがでしょうか。ご関心をお持ちの方は是非お気軽に弊社インドネシア総合研究所へお問合せくださいませ。

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-6804-6702

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