【コラム】インドネシアにおいて宗教が経済に与える影響

インドネシアでは、国家原則「パンチャシラ」で唯一神への信仰が定められており、全ての人がなんらかの宗教を信仰しています。

中でも、インドネシア国民の約9割がイスラム教を信仰しており、その数は約2億人以上と言われています。インドネシアにおけるムスリム(イスラム教徒)市場が非常に大きいことが分かりますね。

今回のコラムでは、インドネシアの宗教と経済の関係について、ご紹介します。

 

ムスリムのイベントが経済に与える影響

ムスリムのイベントやそれに伴う購買活動はインドネシアの経済に多大な影響があります。

中でも、イスラム教の義務の一つである「ラマダン」とラマダン後に訪れる「レバラン」は、インドネシア経済への影響が大きいです。

ラマダンについてはこちらの記事、ラマダン中の視察で注意すべきポイントでも過去にご紹介しましたのでぜひご覧ください。

「ラマダン」は日本で言うお盆やお正月にあたり、インドネシアでも非常に経済が動く時期です。

2019年のラマダンは5月5日から6月4日までで、ラマダン明けの休暇であるレバランの時期にも有給休暇一斉消化日を設定し、公休日として6月1日~9日の9日間が連休となることが発表されています。

 

ラマダンが経済に与える影響

ラマダンの時には、宗教大祭手当(THR)と言われるいわゆるボーナスが支給されることが法律で義務化されており、ムスリムが多いインドネシアでは、多くの人がこのラマダン時に手当を受け取ります。

宗教別に支払われる時期が異なるため、例えばクリスチャンであればキリスト降誕祭(クリスマス)に支払われます。

ムスリムが宗教大祭手当(THR)を受け取るラマダンシーズンには、一般的に家電の売り上げが上昇する傾向にあります。

例えば冷蔵庫はラマダンシーズンに売り上げが増加する傾向にありますが、これはもちろんボーナスを支給されたということと、長期休暇で親族が集合するため大人数にごちそうを振る舞うために冷蔵庫を新調したい、といった背景があるようです。

冷蔵庫をはじめとする家電について増加率については年や地域、また家電によっても異なりますが、冷蔵庫についてはラマダンからレバランの間で前月比2倍~300%増という事例も挙がっています。

出典:Shindonews.com, “Kulkas dan AC Dominasi Penjualan Elektronik pada ramadhan”
https://autotekno.sindonews.com/read/1116931/123/kulkas-dan-ac-dominasi-penjualan-elektronik-pada-ramadhan-1465985655(閲覧2019-02-01)

その他、ラマダン時に久しぶりに家族や親族が集まるため、帰省前には服や靴を新調する傾向にあり、全体的に消費が大きく増加する傾向にあります。ラマダン時には“ラマダンセール”もあちこちで見られます。

インドネシアのレバランについてはこちらの記事でご紹介いたしましたので併せてご覧ください。

 

ラマダン時に消費が減少するもの

ラマダン時には経済が大きく動くということで経済への負の影響もあります。ラマダン時には自動車の売上は減少する傾向にあります。

その理由として、ラマダン期間中は家電や衣類、食糧などの購買が優先されることが挙げられますが、レバランの長期休暇中に新車の購入をするため、レバラン時には自動車の売上が増加しています。

月ごとの自動車の売り上げの推移は下記の通りです。

2017年各月のインドネシアにおける自動車売り上げ推移

出典:MARKLINES 自動車販売台数速報 インドネシア2017年
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_indonesia_2017より弊社作成(閲覧2019-02-01)

 

地域による例外

国民の約9割近くがムスリムとされているインドネシアですが、実はムスリムの影響を比較的受けにくい例外地域もあります。

例えば、バリ島は住民のほとんどがバリヒンズーを信仰しているため、上述したようなラマダンやレバランの影響はあまり受けないかわりに、バリ島独自の文化、祝日や儀式などがあります。

その点は視察や案件実施の際のスケジュール組みの面などで注意が必要です。

インドネシア並びにバリ州の祝祭日一覧
(水色の網掛けはバリ州独自の祝日。ただしニュピはインドネシア全土で祝日となります)

出典:インドネシア共和国観光省HP(https://www.visitindonesia.jp/info/02.html)、
エイチ・アイ・エス バリ島旅行専門店HP(https://bali-his.com/specials/public_holiday)より弊社作成(閲覧2019-02-01)

 

バリ島以外にも、クリスチャンが多い地域や仏教徒の多い地域など、地域によって信仰する宗教が異な流場合がありますので、その地域・宗教の慣習に従って業務を行う必要があります。

インドネシアの宗教事情についての記事はこちらをご覧ください。

このように、インドネシアでは宗教がビジネスに影響を与えますので、ラマダン時期やレバラン休暇を想定したスケジュール組みや準備などが必要です。

現地での調査や進出の際お困りのことなどがございましたらお気軽にお問合せください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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