インドネシアで人気が高まる自然学校 (Sekolah Alam)― サステナブル教育の最前線

インドネシアでは、1998年から自然学校が存在しています。
自然学校は、自然や生き物と触れ合いながら、教室の内外で持続可能な社会やリーダーシップ、ビジネスについて学ぶことを目的とした教育の場です。
本コラムでは、インドネシアにおける自然学校の歴史と特徴についてご紹介します。
インドネシアにおける自然学校(Sekolah Alam)のはじまり
自然学校は、インドネシア語で「Sekolah Alam(スコラ・アラム)」と呼ばれ、1998年に教育者レンド・ノボ氏によって提唱・設立されました。
彼は高騰する教育費に対する懸念から、質が高く、かつ手頃な価格で通える学校の必要性を感じ、南ジャカルタのチガンジュール地区に「Sekolah Alam Ciganjur」を創設しました。
設立当初の生徒数はわずか8人でしたが、幼稚園から高校までを対象とする私立学校「Sekolah Alam Indonesia」として拡大し、現在ではアチェやパプアなど全国9カ所に系列校があります。
さらに、2011年には「ヌサンタラ自然学校ネットワーク(JSAN)」が立ち上げられ、2045年までにネットワーク内で1,000校の自然学校設立を目指しています。
参考WEBサイト:https://www.detik.com/edu/sekolah/d-6296216/mengenal-sekolah-alam-sejarah-dan-karakteristiknya
インドネシアの自然学校(Sekolah Alam)の特徴と学びのスタイル
自然学校のカリキュラムは、インドネシアの教育省による基本方針に基づきつつ、独自の学習内容が組み込まれています。
校舎は自然の中に建てられ、竹や地元の木材など、環境に配慮した素材を使用しています。
教室では、子どもたちは竹や木で作られた椅子や床に座り、自然に囲まれた空間で学びます。
授業では、農業体験や家畜の飼育なども行われます。
自分で作物を育て、収穫し、庭で採れた有機野菜を食べる体験を通じて、食と環境、そしてビジネス(加工・販売)までのつながりを実践的に学びます。
こうした体験を通じて、持続可能な社会に向けた理解を深めていきます。
また、自然学校では、幼少期から「自立」と「責任感」を重視した教育を行っています。
例えば、園児であっても自分の昼食を自分で選び、残さず食べること、使用したカトラリーを自分で洗って返却することが求められます。
先生に頼らず、自分で完結するというルールを通して、自律心や創造力を育てています。
参考WEBサイト:https://koransulindo.com/mengintip-sekolah-alam-di-indonesia/
ジャボデタベックの自然学校の学費
以下は、ジャボデタベック(ジャカルタとのその近郊)にある自然学校の学費です。
・チトラ自然学校 南ジャカルタ
入学金:2,200万ルピア〜3,900万ルピア(約197,000円〜350,000円)
・チペダックインドネシア自然学校 南ジャカルタ
年間授業料:2,200万ルピア〜2,500万ルピア(約197,000円〜220,000円)
・チケアス自然学校 ボゴール
入学金:2,900万ルピア(約260,000円)
・デポック自然学校 デポック
年間授業料:900万〜1,500万ルピア(約90,000円〜134,000円)
上記のように、入学金や授業料だけで10万円以上かかることがわかります。
インドネシアでは公立の初等・中等教育は基本的に授業料が無料であることを考えると、自然学校は相対的に高額であると言えるでしょう。
インドネシアで人気のある自然学校
以下は、インドネシアで人気のある自然学校です。
グリーンスクール(バリ)
国内外から注目を集める自然学校です。
校舎は竹や藁、粘土などの自然素材で建てられており、コンクリートやセメントは使われていません。ドアもなく、自然と一体になった開放的な学習環境が特徴です。
野菜の自給や、太陽光・水力発電による電力供給など、持続可能な取り組みも行われています。生徒の多くは外国人駐在員の子どもですが、バリ出身の子どもが奨学金で通う例もあります。カリキュラムは算数や国語などの基本科目に加え、環境教育や美術、社会などを含む総合的な内容です。
バンドン自然学校(バンドン)
田んぼ、池、森に囲まれた環境の中で、1日2〜3時間の自然探索や農業体験が日常的に行われます。
授業ではプレゼンテーションや起業に関する学習など、実社会で役立つスキル習得にも力を入れています。
現在は30名以上の教師のもと、小学生150名、中学生30名が在籍しています。
チペダックインドネシア自然学校(南ジャカルタ)
Sekolah Alam Indonesia の学校のひとつです。
学習は屋内3割、屋外7割と自然との関わりを重視しています。
10人に1人の教師がつき、個別指導にも力を入れています。
さらに、イスラム教に基づいた教育が行われており、コーランの暗記など宗教の授業も組み込まれています。
カンダンク・ジュラン・ドアン(南ジャカルタ)
有名な芸術家・画家のディク・ドアンクによって設立された非認可の自然学校です。
周囲は田んぼや木々に囲まれ、田んぼハイキングなど屋外活動が活発です。
また、校内にはディク・ドアンクの作品を展示する美術館も併設されています。
ブカシ自然学校(ブカシ)
都市公園のような広大な敷地を持つ自然学校で、学校内には「グリーンラボ」と呼ばれる、農業や植物の世話ができる施設もあります。
屋外活動に加え、コンピュータなどの屋内設備も整っており、バランスの取れた学習環境が提供されています。
このように、インドネシアには様々な自然学校があることがわかります。
今回のコラムでは、インドネシアにおける自然学校の実態とその広がりをご紹介しました。
ジャカルタをはじめとする都市部では、自然と触れ合いながら学ぶ教育への関心が高まっており、公立校よりも高額な学費にもかかわらず、自然学校を選ぶ家庭が増えています。
こうした流れは、教育関連サービスや学習プログラム、環境教材、農業体験など、幅広い分野において新たなビジネスの可能性を生み出すきっかけとなるでしょう。
弊社インドネシア総研では、現地市場の動向調査からビジネス展開のご支援まで、幅広いサービスを提供しております。
インドネシア市場へのご関心やご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。


株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
