【コラム】インドネシアの旧正月文化①前編

今年は、2月10日(土)が旧正月(太陰暦の正月)の1月1日に該当し、中華圏や華人・華僑の多い国や地域で祝われました。インドネシアは、世界で最も華人が多い国(600万人〜1000万人)でありながら、人口に占める華人の割合は僅か3%程度と決して多くはありませんが、旧正月は「Imlek」と呼ばれ、大々的に祝われます。

今年は、旧正月の大晦日「Malam tahun baru Lunar」に当たる2月9日(金)が休日となり、旧正月を祝う人々は一斉休暇に入りました。そんなインドネシアの旧正月は、どのように祝われるのでしょうか。2回の連載に分けて、インドネシアの旧正月文化及び今年の旧正月について詳しくご紹介いたします。

目次

2024年の干支・「Shio」

日本でお馴染みの干支は、インドネシアでは「Shio」と呼ばれています。干支は中華圏では「生肖(せいしょう)」と言うことが多く、中国語(普通語/北京語/Mandarin)では「shēng xiào」と発音し、福建語/閩南語/Hokkienでは「seⁿ-siòⁿ」と発音します。華人の多くが福建省出身であるインドネシアでは、後者の読み方が派生して「Shio」と呼ばれるようになったのです。生肖は中華圏では非常に重要視されており、日本人が血液型を聞くように、相手に何年生まれか尋ね、性格を判断する基準にすることもあるようです。

干支とは「十干(じっかん)」と「十二支」を組み合わせたもので、2024年の干支は、「甲辰(きのえたつ)」です。

十干…甲(きのえ)、乙(きのと)、丙(ひのえ)、丁(ひのと)、戊(つちのえ)、己(つちのと)、庚(かのえ)、辛(かのと)、壬(みずのえ)、癸(みずのと)

十二支…子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)

「辰」はいわゆる龍のことであり、十二支の中で唯一の空想上の生きものです。中華圏では龍は繁栄をもたらすと信じられているため、辰年は特に縁起の良い年として非常に重要視される傾向にあります。風水信仰の根強い地域では、結婚や出産をする人が多いのも、辰年です。そのため、今年の旧正月は各地でいつもに増して盛大なお祝いが行われました。

インドネシアの旧正月の挨拶

インドネシアでは、太陽暦のお正月には「Selamat tahun baru」(新年あけましておめでとう)と言うことが多いですが、旧正月の際には以下のような挨拶文がよく見られます。旧正月期間にインドネシアを訪れる方は、是非頭の片隅に入れておきましょう。

「Selamat tahun baru Imlek」…上記の挨拶に旧正月を意味する「Imlek」を加えたもの

「gōng xǐ fā cái」…中国語(普通語/北京語/Mandarin)の「恭喜發財」(金運に恵まれますように)

インドネシアの旧正月の伝統

インドネシアの旧正月文化は、中国から移民してきた華人によって持ち込まれたもので、様々な地域の文化が入り混じっていたり、年月をかけて地元の文化と融合したりと非常に多様です。その中でも特に代表的文化習俗12のうち6つを、以下でご紹介いたします。続きの7~12はコラム「インドネシアの旧正月文化②後編」でご覧いただけます。

赤い提灯を吊るす

インドネシアの旧正月にはランタンや赤提灯を吊るす伝統が色濃く残っています。ランタンは街路樹、オフィスビル、家のドアなど様々な場所に吊るされます。赤い色は中華圏で縁起の良い色として好まれており、赤いランタンをドアの前に吊るすと、家の中に入ってくる邪気を追い払えると信じられているようです。

春聯を貼る

「春聯(chūn lián)」とは、家の門に貼る装飾物の一つです。日本の門松に近い意味が込められたもので、通常、春聯には願い事や祈り、縁起の良い対句などが書かれています。春聯は一般的に2枚1組として貼られ、各側に7文字、または9文字であることが多いようです。春聯は一年を通して門に飾られるもので、次の旧正月前に新調されるまで、通常外されることはありません。

切り絵を飾る

インドネシアの旧正月に欠かせない伝統の一つ、切り絵細工は、中国語(普通語/北京語/Mandarin)では「剪紙(jiǎn zhǐ)」と呼ばれています。紙やフェルトのような素材からデザインを切り抜き、窓や壁など好きな場所に貼り、飾ります。ここでも赤を使うのが一般的で、デザインは縁起が良いとされている花や動物、漢字など多岐に渡り、それぞれに異なる願いや意味が込められています。

「福」を逆さまに飾る

画像:弊社撮影

福の字の春聯は、インドネシアでも旧正月の飾りとして最もよく見られる漢字です。上の写真のように福の字が書かれた春聯を逆さまに飾ることで、福の気、すなわち幸運が上からどんどん入り込むと考えられています。逆さにせずそのまま飾っても十分御利益が得られるとされているため、飾り方は人によって異なります。

金柑の木の手入れ

中国語(普通語/北京語/Mandarin)で金柑は「金桔(jīn jú)」と言いますが、金は「財」、桔は「吉」を意味することから、金柑の木は「富と幸運をもたらす縁起のいい木」とされています。広東語でも同じような意味合いを持つため、広東省出身華人の多いインドネシアでもこの風習は残っています。旧正月の時期には軒先に金柑の木の鉢植えが置かれ、しばしば「紅包(hóng bāo)」と呼ばれる赤いご祝儀袋で飾りつけたものも見られます。

餃子を食べる

画像:弊社撮影

一口に餃子と言っても、三角のものや丸いものなど包み方は多岐に渡りますが、旧正月の時期に食べられるのは上の写真のような形をした餃子です。これは「元寶(yuán bǎo)」と呼ばれる古代中国のお金で、この形のように包まれた餃子を食べることで、金運が上がると考えられています。一方近年ではこの風習を守る人は少なくなっているようです。

今回のコラムでは、インドネシアにおける旧正月文化について一部紹介させていただきました。続きはコラム「インドネシアの旧正月文化②後編」にてご紹介しておりますので、そちらも是非ご覧ください。旧正月時期にインドネシアを訪れる方は、こうした伝統や風習を理解して行くことで、より深く現地のお祝いムードを楽しめるのではないでしょうか。弊社インドネシア総合研究所では、インドネシアにまつわる様々な文化風習について日々SNSで発信しております。旧正月のような季節のイベントから最新の流行まで、いち早く現地の情報をお届けして参ります。ご関心をお持ちの方は是非弊社公式Facebookをご覧ください。皆様のお問い合わせをお待ちしております。

参考:
https://www.kompas.com/tren/read/2024/02/08/113000065/12-tradisi-imlek-beserta-maknanya-dari-menggantung-lampion-dan-memasang
https://www.kompas.com/tren/read/2024/02/08/073000465/imlek-2024–jadwal-shio-dan-ucapan-selamat-imlek-bahasa-inggris

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