【コラム】インドネシアの国是パンチャシラとは

インドネシアの国是となっている建国五原則を“パンチャシラ(Pancasila)”と言い、このパンチャシラはインドネシア国家にとって非常に重要な国民の行動や考え方についての原則です。
また、インドネシアという国を知る上でこの「パンチャシラ」を理解する事は欠かせない要素となります。
今回のコラムでは、インドネシアのパンチャシラについてご紹介していきます。

インドネシアの国是パンチャシラとは

「パンチャシラ」は、インドネシア共和国憲法の前文に述べられている建国五原則のことを指し、内容は以下となります。

(1) 唯一神への信仰(Ketuhanan Yang Maha Esa)
インドネシア国民はインドネシア国家が公認する宗教を必ず信仰しなければいけないとされており、インドネシア国家公認の宗教として、イスラム教、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー教、仏教、儒教の6つの信仰が認められています。キリスト教は、プロテスタント、カトリックの2つに分けられています。
国の人口の約9割とイスラム教徒が大多数を占めるインドネシアですが、決してイスラム教が国教という訳ではありません。
このパンチャシラは各宗教間で互いに尊重し合う事が示されています。

(2) 公正で文化的な人道主義(Kemanusiaan yang Adil dan Beradab)
国民がお互いの違いを認め合い、お互いを理解し助け合うことが示されています。

(3) インドネシアの統一(Persatuan Indonesia)
国民ひとりひとりが個人の利益だけでなく国家の利益のために働くことが示されています。

(4) 合議制と代議制における英和に導かれた民主主義(Kerakyatan yang Dipimpin oleh Hikmat dan Kebijaksanaan dalam Permusyawaratan Perwakilan)
ものごとを決定する際、他人を強要することなく、合議による決定を行うことが示されています。

(5) 全インドネシア国民に対する社会的公正(Keadilan Sosial bagi Seluruh Rakyat Indonesia)
国民ひとりひとりが社会の一員として、他人を尊重し公正を保つことが示されています。

パンチャシラという言葉は、パンチャが“5”でシラが“原則”を表し、スカルノ初代大統領が1945年の独立準備調査会で演説の中で発表した内容がパンチャシラの前身と言われています。

インドネシアの国章ガルーダパンチャシラ

この写真は、インドネシアの国章「ガルーダパンチャシラ(Garuda Pancasila)」です。
パンチャシラと名前が付いているように、中央の盾にはパンチャシラを表すエンブレムが描かれています。
また、ガルーダが掴んでいる文字「Bhinneka Tunggal Ika」は多様性の中の統一というインドネシアの国の標語になります。

<エンブレムとパンチャシラの関係>
【中央】黄色の星の黒い盾=唯一神の信仰         (パンチャシラ第一の原則)
→一つの星で唯一神を表している。
【右下】円型の鎖=公正で文化的な人道主義        (パンチャシラ第二の原則)
→四角の鎖は男性、円形の鎖は女性を表している。
【右上】ベンガルボダイジュの木=インドネシアの統一   (パンチャシラ第三の原則)
→誠実さと繁栄を土にしっかりと根を張るベンガルボダイジュで表している。
【左上】牛(banteng)の頭=合議制と代議制における英和に導かれた民主主義
(パンチャシラ第四の原則)
→集まることが好きな動物Bantengは社会主義を表している。
【左下】稲穂と綿花=全インドネシア国民に対する社会的公正(パンチャシラ第五の原則)
→稲穂と綿花で衣と食を表している。

上述の通り国章に描かれているエンブレムは、パンチャシラを象徴しています。
そしてこのパンチャシラは、インドネシアの国章にも表されるインドネシアの人々のアイデンティティとも言えます。

参考WEBサイト:
https://nasional.kompas.com/read/2022/03/17/01300011/arti-lambang-garuda-pancasila-dan-penjelasannya?page=all#:~:text=Garuda%20digunakan%20sebagai%20lambang%20negara,besar%20dan%20negara%20yang%20kuat
https://katadata.co.id/safrezi/berita/61656c92e66f7/mengenal-pancasila-sebagai-dasar-negara-dan-pandangan-hidup-bangsa

パンチャシラの日

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、2016年にパンチャシラの日を制定しました。
毎年パンチャシラの日(6月1日)は祝日となり、外務省で式典が行われています。

パンチャシラの日は、全てのインドネシア国民にインドネシア国家の基盤となる、「パンチャシラ」の起源や意味を改めて理解して欲しいという意味合いのある祝日として制定されたもので、「この祝日にパンチャシラを改めて理解することで、国民がこのパンチャシラの(原則)のもとで一致団結して欲しい」という狙いがあります。

参考WEBサイト:
https://www.liputan6.com/news/read/2972536/sejarawan-ungkap-alasan-jokowi-jadikan-1-juni-hari-pancasila

インドネシアの学校では朝礼で、パンチャシラを全校生徒が唱和する習慣があります。
そのため、パンチャシラはインドネシア国民の心に根強く染みついている考えとも言えます。

インドネシアの人々のアイデンティティである「パンチャシラ」を理解することで、インドネシアの人々の心に根付いている考え方の根本を知るきっかけになることもあるのではないでしょうか。
日本にはインドネシアのパンチャシラの様に国民の行動や考え方を示す国家原則として強く、広く示されている原則の様なものがありませんので、この様な国是の存在には馴染みが無い方もいらっしゃると思います。本コラムのパンチャシラの情報が皆様がインドネシアのパートナーと接する上でお役に立つ事があれば何よりです。

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