【コラム】インドネシア、レジ袋の提供を廃止に?
インドネシアにおけるごみ問題は非常に重大であり、また非常に注目を集めている問題でもあります。
弊社のコラムでも何度かインドネシアのごみ問題や環境についてご紹介しております。
インドネシアで注目されている「ごみ銀行」と環境意識の高まり
https://www.indonesiasoken.com/news/gomiginko/
インドネシアのゴミ処理産業の現状と課題
https://www.indonesiasoken.com/news/jakarta-garbage-disposal-facilities/
ごみ銀行などの取り組みが広まりつつあるものの、まだまだインドネシアでは海洋プラスチックごみをはじめとするごみ問題が深刻です。
スラウェシで見つかったクジラの死体の胃の中に約6キロものプラスチックごみが入っていたニュースや、ダイバーがバリで撮影した海中を大量のプラスチックごみが漂っている動画は、皆さまの記憶にもまだ新しいのではないでしょうか。
2019年に入り、インドネシアではスーパーや小売でのレジ袋の提供を禁止する取り組みが広まっていくものと思われます。
今回のコラムでは、レジ袋提供廃止に関するインドネシア国内での動きや、取り組みに対する課題などをご紹介します。
レジ袋に関する取り組みについての最近の動き
2016年7月、南カリマンタン州のバンジャルマシン市では、レジ袋使用量削減に向けた取り組みが開始され、2018年には、西ジャワ州のボゴール市や東カリマンタン州のバリクパパン市でもショッピングセンターなどでレジ袋の提供が廃止され始めました。
2019年1月からも、バリ島のデンパサール市とスマトラ島ジャンビ州のジャンビ市で小売り等でのレジ袋の提供を禁止し始めました。
デンパサール市とジャンビ市では、2019年1月1日から各々が買い物袋を持参するよう、市長が強くメッセージを伝えています。
今後、更に、ジャカルタ市や西ジャワ州のブカシ市でもレジ袋使用量削減に向けた取り組みが開始される予定です。
出典:ジャンビ市公式ホームページ
出典:バリ市公式Inastagram(@denpasarkota)
出典:ボゴール市環境局公式ホームページhttps://dinaslingkunganhidup.kotabogor.go.id/index.php/post/single/292
プラスチック廃棄物量を削減しようとする背景
レジ袋の使用量を減らすことでプラスチック廃棄物の量を削減しようとする背景には、2015年にインドネシアがプラスチック廃棄物排出量世界2位に選ばれたことが挙げられます。
出典:Sciencemag.org, Plastic waste inputs from land into the ocean(https://www.iswa.org/fileadmin/user_upload/Calendar_2011_03_AMERICANA/Science-2015-Jambeck-768-71__2_.pdf)より弊社作成
インドネシアで排出されているごみの種類を見てみると、最も排出されているのは有機廃棄物で、プラスチック廃棄物は全体の2番目に当たります。
出典: Sistem Informasi Pengelolaan Sampah Nasional 2015,Direktorat Pengelolaan Sampah Direktorat Jenderal
Pengelolaan Sampah, Limbah, dan B3 Kementerian Lingkungan Hidup dan Kehutanan Jakarta(環境林業省管轄危険
有害物質管理局並びに廃棄物局による2015年度インドネシア国廃棄物処理に関する情報システム)より弊社作成
こうした背景があり、2016年2月には環境林業省が主導となり、スーパーや小売店でのレジ袋の無料提供が一時的に廃止され、レジ袋は有料化されました。
レジ袋は1枚200ルピアでの販売となりましたが、環境林業省によると最初の3か月でレジ袋の使用量は従来より25~30%ほど減少したそうです。
しかしこの取り組みは国全体の取り組みとして政府が正式に導入したものではなくあくまで試験的な取り組みであったため、消費者より批判が集中し、2016年10月には有料レジ袋の取り組みは停止となりました。
現状は、レジ袋削減に向けた取り組みは政府が制定したものではなく、あくまで上述の各地方の市長の規制に留まっています。
インドネシア小売り起業家協会(Aprindo)は、レジ袋の無料提供を廃止にする場合、環境林業省が規制を制定するのが理想的である、と発言しています。
今後の課題として
環境へのやさしさ等を考慮すると、もちろんレジ袋などはできるだけ使用しないのが良いのかもしれませんが、現状インドネシアで最も重要な問題は、どのような方法でビニール袋を再利用して、環境を汚染しない方法でプラスチック廃棄物を処理するか、でしょう。
その問題は、インドネシア政府やインドネシア国民の大きな課題であると考えられます。
一方でインドネシア・オレフィンプラスチック工業会は、レジ袋を廃止する取り組みを批判しており、今後政府が何らかの施策を導入することにも反対の姿勢を示しています。
レジ袋を廃止すると、プラスチックリサイクル産業の成長を妨げることになってしまい、プラスチック廃棄物を集める企業の収入の減少につながってしまうと指摘しています。
インドネシア工業省によると、現在インドネシアには約1,600のプラスチック加工業者があると言われており、総労働者は約18万人ほどだそうです。
毎年の工業用プラスチック生産の経済価値は約23兆ルピアに達すると言われています。
プラスチックリサイクル産業に関してはその価値のうちのまだほんの一部にしか貢献していませんが、その量のうち大多数は食品及び飲料包装産業によって支配されています。
プラスチック廃棄物の行方
SWI(Sustainable Waste Indonesia)の調査によると、全体量のうちリサイクルされたのはたった7%のみで、全体の69%は埋め立て地に、さらに残念なことに、残りの24%は海への廃棄など環境汚染だと報告されています。
プラスチック製のストローのように小さいプラスチック廃棄物は収集が困難なため、ほとんどリサイクルされていないようです。
プラスチック製ストローの使用禁止についても、政府による取り組みが開始されました。
内務大臣Tjahjo Kumoto氏は、内務省と国境管理局(BNPP)の全てのオフィスで、ペットボトルの使用を禁止しました。
また、関連省庁の公式イベントでのプラスチックストローの使用も禁止するそうです。
また、ジャカルタ州環境局長Isnawa Adji氏も先日Instagramに、2019年1月1日より州庁の敷地内にペットボトルやビニール袋、ストローを持ち込むことを禁止する旨を投稿しました。
出典:ジャカルタ環境局長Isnawa Adji氏Instagram(@isnawa_adji)
これはまだ州庁内での規則ですので、ジャカルタ州としての取り組みは現在検討中のようですが、2019年よりジャカルタ州内でも徐々にレジ袋廃止を開始する意向のようです。
ジャカルタ州環境局長Isnawa Adji氏については過去コラムにてご紹介いたしましたのでぜひそちらも併せてご覧ください。
このように、インドネシアではレジ袋廃止、そしてプラスチック廃棄物の排出量削減に向けた取り組みが少しずつですが広まってきています。
しかしながら、まだまだ取り組みは充分とはいえず、ごみ問題はインドネシアにおいて早急に解決が必要な重要な課題の一つとして挙げられるでしょう。
弊社は、インドネシアの環境局とのネットワークがあり、またインドネシアのごみ処理場の調査や視察の実績がございます。
インドネシアの環境問題、ごみ問題についてご興味のある方はぜひお気軽にお問合せください。
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