【コラム】育成就労制度について―インドネシア人人材の活用に向けて―
2024年3月に、政府は技能実習に代わる新制度として「育成就労制度」を新設する法案を閣議決定し、国会に提出しました。この法案が成立すると、早ければ2027年から技能実習が廃止され「育成就労」が始まります。
今回のコラムでは、この「育成就労制度」の内容について技能実習制度と比較しながらご紹介いたします。
「育成就労制度」の特徴
「育成就労」の目的は、対象分野において外国人材を確保すると共に、確保した人材を特定技能1号の水準にまで育成することです。「育成就労制度」の内容については、入管法と育成就労法の2つにより定められています。
「育成就労」の最大の特徴は、育成就労期間(最長3年)の終了後、帰国せずに特定技能1号(最長5年)、続いて特定技能2号(無期限)に切り替えが可能なことです。これにより、外国人材を受け入れる企業や地域にとっても、安定した人材の確保や地域との共生が可能になります。また、季節性のある分野において、派遣形態による育成就労の実施も認められています。
技能実習の場合、実習生には転籍の制限があり、実習生の失踪などが問題となっていました。一方「育成就労」の場合では、①やむを得ない場合がある場合、または②転籍先が同一業務区分内で、かつ就労期間や技能等の水準、適正要件を満たす場合は、本人の希望での転籍が可能です。
②の場合でも、同一期間での就労が、分野ごとに設定される期間(1~2年)を超えることが転籍の条件となるので、受け入れ早々本人希望で転籍される、といったリスクはありません。
「技能実習」と「育成就労」の比較
技能実習制度 | 育成就労制度 | |
---|---|---|
在留資格(VISAの種類) | 技能実習1号、2号、3号 | 育成就労 |
日本側の機関 | 監理団体 | 監理支援機関 |
監督機関 | 外国人技能実習機構(OTIT) | 外国人育成就労機構 |
技能実習制度と育成就労の違いは、先述したような制度の目的、転籍制度の有無だけではありません。制度の変化に伴い、在留資格の名称(区分)や関連機関も変わります。
在留資格は、「技能実習1号、2号、3号」から「育成就労」になります。日本側の機関も、「監理団体」から「監理支援機関」に代わります。また日本側の機関を取りまとめる監督機関も「外国人技能実習機構(OTIT)」に代わり、新しく「外国人育成就労機構」が設立される予定です。
「育成就労」に関する規定や禁止事項
ブローカー対策や外国人材の権利保護の為、「育成就労」では以下のような規定や禁止事項が定められています。
- 監理支援機関は、外部監査人の設置が必須です。
- 監理支援機関が、受け入れ機関と密接な関係にある役職員を、その受け入れ機関に対する業務に関わらせることは、禁止されています。
- 特定技能1号人材の支援を、登録支援機関以外の外部機関に委託することは、禁止されています。
なお、外国人に不法就労活動をさせるなどし、不法就労助長罪となった場合、拘禁刑5年以下または500万円以下の罰金の罰則対象となります。
今回のコラムでは、早ければ2027年以降に「技能実習制度」に代わって外国人労働者の受け入れ制度となる「育成就労制度」についてご紹介いたしました。制度の詳細や制度開始の時期は、今後変わる可能性があるため、今後も政府の発表に目が離せません。
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