【アルビー日記】インドネシアの生理への認識と生理休暇

皆様こんにちは、インドネシア総合研究所代表のアルビーです。

皆様は、生理に関してどのようなイメージをお持ちでしょうか?女性の方々は、1カ月に1度くる生理は体調不良や情緒不安定になるため、あまり良いイメージをお持ちではないかもしれません。男性の方々は、自分自身が経験することではないため、女性の痛みやつらさ、不快感については実感が湧きにくく、あまりピンとこない人もいるかもしれません。

つい先日、日本では静岡県の高校の生徒たちが生理への認識を変えたいという想いから、生理をテーマにした映像作品を制作し、男子高校生の視点から描いた生理という斬新な切り口が大きな話題となりました。それでは、一方でインドネシアでは生理に関する社会の理解はどのようなものなのでしょうか?イスラム教徒が9割を占めるインドネシアですが、果たして女性の権利は抑圧されているのでしょうか?

今回は、インドネシアにおける生理という身体的な現象への考え方、教育、そして国が定める生理休暇制度について掘り下げていきたいと思います。

参考:https://www.nhk.or.jp/shizuoka/lreport/article/004/51/

目次

インドネシアにおける生理への考え方

日本でも古代は生理の経血は「死」と結びついて連想されるため、「穢れ」として忌み嫌われ、月経中の女性は忌避される存在でした。イスラム教徒が9割を占めるインドネシアでも同様の考えが浸透しており、経血はケガなどによる出血とは異なる「穢れ」という認識が浸透しています。

そして、月経中の経血は忌避され、清められなければならないものと考えられています。たとえば、インドネシアでは月経中の女性はイスラム教の礼拝が禁じられています。

また、インドネシアではイスラム教徒の女性たちは使用後の生理ナプキンの経血を洗い流してから捨てなければ不浄であるとされています。この清める行為は除菌などの科学的な知識に基づくものではなく、宗教や各地域の慣習なども合わさって形成されたもので、インドネシアの生理に対する複雑な「穢れ」観が反映されています。

参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jids/28/2/28_51/_pdf
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390855886881356160

インドネシアでの生理に関する教育

インドネシアでは生理の経血は慣習的に「穢れ」という認識を持つ人も多いですが、教育機関での生理に関する教育は科学的・生物学的にもきちんとしたカリキュラムが組まれています。教科書には生理の生物学的なサイクルのほか、生理中のナプキンの交換頻度、お風呂での洗い方、鉄分などの栄養摂取など、日本の教科書よりも科学的に踏み込んだ実践的な内容が記載されています。

また、イスラム教徒が多いインドネシアでは意外なことですが、男女ともに一緒に生理に関する授業を受けます。宗教的な観点での生理に関する授業も男女一緒に受けます。「男子生徒も生理中の女子生徒の状態を理解すべき」という観点から、初等教育の段階から生理に関しては男女ともにオープンに学ぶ機会が設けられているのです。

参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jids/28/2/28_51/_pdf

インドネシアの生理休暇制度

1カ月のうち1週間程度、女性は体調不良や気分の不調に見舞われますが、そのような時に仕事や学業に全力で取り組むというのは身体的にも精神的にもつらいものがあります。このような時に公的に権利として認められた休みが欲しい人もいることでしょう。実は、世界196ヵ国の中でも日本やインドネシアは世界でも数少ない、法律で生理休暇を取得する権利を定めている国なのです。

【世界の生理休暇の実情】

国名制定年日数義務・罰則
日本1947年指定なし必要な日数付与
韓国1953年月1日最高500万ウォンの罰金
インドネシア2003年月2日雇用主は1カ月~4年の懲役
台湾2002年月1日
(年3日以上は病気休暇に算入)
休暇中の賃金は給与の50%とすること
ザンビア2015年月1日休暇を拒否すると雇用主は訴追される可能性
スペイン2023年月3~5日 (3日以上は医師の診断書が必要)

世界196ヵ国のうち生理休暇を法律で認めているのはたった6ヵ国で、インドネシアはその中の1つに入っています。インドネシアの生理休暇の法律は雇用に関する法律2003年に第13号法律81条(1)に定められております。この法律では、女性労働者が月経期間中に体調不良を雇用主に訴えた場合、生理初日と2日目は勤務する必要がない旨を明記しています。この生理休暇の権利は女性労働者の健康状態を考慮して制定されたものです。

また、雇用主は、生理休暇中の労働者に賃金を全額支払う義務はありませんが、2003年第13号法律第93条第2項bでは生理休暇中の女性の年次休暇手当を減額してはならないと規定しています。このように、手当などの金銭面でも生理休暇の規定を定めており、法的にインドネシアの女性の権利は世界的に見ても保護されているといえるでしょう。

参考:
https://law.moj.gov.tw/ENG/LawClass/LawParaDeatil.aspx?pcode=N0030014&bp=4#:~:text=Female%20employee%20having%20difficulties%20in%20performing%20her,request%20one%20day%20menstrual%20leave%20each%20month.
https://www.bbc.com/news/world-africa-38490513
https://ptvnews.ph/list-countries-offering-paid-menstrual-leaves/

インドネシアにおける働く女性のその他の権利

インドネシアでは仕事を続ける女性も多いですが、そのような女性を保護するために多くの権利が法律で定められています。生理休暇の他には一例ですが以下のような権利があります。

【労働時間】

18歳未満の女性、妊娠中の女性は23時から翌朝7時までの間は雇用を禁止しています。また、23時から5時までの時間に女性が働く場合は、雇用主は送迎手段を提供する義務があります。

【産前産後休暇】

女性従業員は、産前に1.5カ月、産後に1.5カ月休む権利があります。

【流産休暇】

女性従業員が流産した場合、従業員は1.5カ月休む権利があります。

【母乳育児・搾乳の権利】

母乳育児を行う女性従業員が勤務時間中に子どもに母乳を与える必要がある場合は適切な手段(授乳時間・搾乳時間)を与えられなければなりません。

参考:https://prodiaohi.co.id/hak-pekerja-wanita-di-indonesia

今回は、インドネシアにおいて生理について社会でどのような考えがされており、女性の体の仕組みや不調に関する教育や社会での権利保護がどのようになされているかという点についてお伝えいたしました。インドネシアは、イスラム教徒が多いため、一見女性の権利は保護されていないようなイメージを持たれがちですが、実際は世界でも有数の生理休暇を制定している国であり、その他の女性の権利も保護しています。

このようにインドネシアでは女性の権利保護に力を入れているため、インドネシアに事業進出する場合には女性の権利を保護した就業規則や会社の環境を作っていく必要があります。

弊社では、インドネシア全土への強力なネットワークを構築していることから、労使関係やインドネシアにおける事業全般に関して各種専門家から情報収集することが可能です。インドネシアでの事業をお考えの方はぜひ弊社までお問い合わせくださいませ。

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