【コラム】インドネシアの男女に関する統計(2022版)

インドネシア中央統計庁(BPS)は、国家開発プログラムにおける女性の活躍促進を含めた人材の質向上を目的とし、インドネシアの男女に関する統計を作成しています。同統計は、10年ごとに実施される人口センサス(インドネシアの国勢調査)の2020年版、及び2022年に実施された全国社会経済調査(Susenas)に基づき、人口、健康、教育、社会経済的地位の4分野における女性と男性に関する詳細なデータを示しています。本コラムでは、『インドネシアにおける女性と男性2022(Perempuan dan Laki-laki di Indonesia 2022)』より、インドネシアの男女に関する統計をご紹介いたします。

人口

2022年におけるインドネシアの総人口は2億7420万人で、そのうち男性は1億3845万人、女性は1億3575万人でした。2021年のインドネシアの総人口は2億7158万人、そのうち男性は1億3634人、女性が1億3524万人であったことから、2021年から2022年にかけて総人口に約261万人の増加が見られ、中でも男性の人口増加が約211万人と特に大きかったことが明らかになりました。年齢別に見ると、インドネシアの生産年齢人口(15~64歳)は男女平均で69.1%と総人口の約7割を占め、世界的に見ても上位に入る数値となっています。生産年齢人口(15~64歳)に対する従属人口(0〜14歳と65歳以上の人口の合計)の比率が低下し、経済成長を促すことを『人口ボーナス』と言いますが、インドネシアはまさにその人口ボーナス期にあります。人口ボーナス期は豊富な労働力を背景に個人消費が活発になる一方、高齢者が少なく社会保障費用が抑えられるため、経済が拡大しやすいという特徴があります。対する日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少が続いており、その割合は僅か59.4%(2023年)と、典型的な少子高齢化社会に転じています。また、2022におけるインドネシアの合計特殊出生率(一人の女性が子供を産む人数)は2.2で、世界平均と概ね同じ数値となっています。

参考:https://www.bps.go.id/publication/2022/12/16/0538dc0f9235bbe0fe792cf8/women-and-men-in-indonesia-2022.html
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC192220Z10C23A3000000/

健康

健康に関する統計では、インドネシア全体では男女の差は殆ど見られず、一方で都市部と農村部の医療インフラの地域格差が目立つ結果となりました。2022年に医療保険を一度でも利用した割合は都市部で76.3%、農村部で65.4%でした。インドネシアでは2014年に社会保障機関BPJS(Badan Penyelenggara Jaminan Sosial)により国民皆保険制度が整備され、医療保険『BPJS Kesehatan』が導入されました。この保険はインドネシア国民、及び6か月以上インドネシアで働く外国人が加入の対象となっていますが、2022年時点での加入率は約86%です。医療保険利用率に加え、結果に大きな差が現れたのは出産に関する調査で、15歳から49歳の女性を対象とした出産時に利用した介助者に関する統計では、インドネシアの都市部では助産師52.59%、産婦人科医42.34%、伝統的助産介助者(産婆)2.42%、その他2.65%という結果であったのに対し、農村部では助産師64.69%、産婦人科医25.86%、伝統的助産介助者(産婆)5.28%、その他4.17%と、産婦人科医が執り行うお産の割合に明確な差が見られました。インドネシア政府から推奨されている予防接種を済ませている5歳以下の子供の割合も、都市部では60.4%であったのに対し、農村部では54.1%に留まる結果となりました。医療インフラの地域格差はインドネシア政府が優先的に対処すべき課題の一つとなっています。

参考:https://www.bps.go.id/publication/2022/12/16/0538dc0f9235bbe0fe792cf8/women-and-men-in-indonesia-2022.html

教育

続いて教育に関する統計では、インドネシアにおける男女間の教育格差及び地域格差が明らかになりました。学歴を持たない15歳以上の割合は男性で10.74%、女性で14.26%、更に識字率は男性で97.42%、女性で95.26%と、女性の学歴や識字率が僅かに男性に劣るという結果が見られました。また地域格差に関しては、男女別の最高学歴が都市部では高等学校(男女平均35.72%)なのに対し、農村部では小学校(男女平均31.42%)という結果に留まり、特に大学卒の割合は、都市部(男女平均13.52%)と農村部(5.57%)で2倍近くの差が開く結果となりました。識字率に見える地域格差も大きく、都市部では男性98.65%、女性97.17%なのに対し、農村部では男性95.76%、女性92.65%まで識字率が下がる結果となりました。このような教育格差を是正するために、インドネシア政府やインドネシア政策研究センター(CIPS)は、女性や農村部の人々の教育インフラへのアクセスを改善することを目的とした政策を実施しています。

参考:https://www.bps.go.id/publication/2022/12/16/0538dc0f9235bbe0fe792cf8/women-and-men-in-indonesia-2022.html

社会経済的地位

最後に、インドネシアにおける男女別の社会経済的地位統計を見ていきましょう。「社会経済的地位(Socio-economic Status:SES)」とは、個人や家庭の状況を、収入や職業、教育の状況から捉えたもので、子どもの家庭環境を表す指標の一つとなっています。インドネシアでは、婚姻関係にある割合は男性58.35%、女性59.79%、未婚で独身であるの割合は男性37.86%、女性28.23%、死別し独身である割合は男性1.33%、女性2.36%、離婚し独身である割合は男性2.46%、女性9.62%という数値となっています。世帯主が男性の場合は70.94%が高等学校以上卒であり、小学校卒の割合は29.06%であるのに対し、女性世帯主の場合は高等学校以上卒の割合は69.41%、小学校卒の割合は30.59%と、教育に関する統計で見た性別による教育格差は世帯主の学歴にも現れています。一方、月平均支出額を見ると、男性が世帯主の家庭では、約144万ルピア(約13,589円)であるのに対し、女性が世帯主の家庭では、約170万ルピア(16,044円)と、女性が世帯主の家庭は出費が比較的多く、この差は都市部においてより顕著になっています。

参考:https://www.bps.go.id/publication/2022/12/16/0538dc0f9235bbe0fe792cf8/women-and-men-in-indonesia-2022.html

まとめ

本コラムでご紹介した『インドネシアにおける女性と男性2022』の統計結果は、インドネシアの企業や行政組織にとって極めて重要な役割を担っています。人口ボーナス期にあり経済成長と発展の機会をもつインドネシアにて、医療分野における協力は地域格差の解消に役立ち、教育分野への投資は教育インフラへのアクセスと質の格差を埋める一助となります。ジェンダーに基づく教育格差を是正し、女性のエンパワーメントを図ることは、よりバランスの取れた社会にとって不可欠ですが、企業は雇用、教育、金融包摂を促進することにより、こうした社会づくりに貢献することができます。弊社インドネシア総合研究所は、インドネシアのプロフェッショナルとして、日本の企業様がこのような好機を捉え、成長著しいインドネシア経済に参入するサポートをさせていただきます。ご関心をお持ちの方は是非お気軽に弊社インドネシア総合研究所へお問い合わせくださいませ。

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