【コラム】インドネシアの伝統文化:スンバ島の「パソラ」の魅力

インドネシア東部に位置するスンバ島(Sumba)には、「パソラ(Pasola)」として知られる騎馬戦と槍投げを掛け合わせた伝統祭りがあります。毎年行われるこのお祭りは、島の豊かな文化遺産と地元の人々の伝統を守ろうとする揺るぎない姿勢の証です。毎年2月から3月にかけて、各村や部族から数百人の騎手がこのスリリングな儀式に参加するためスンバ島の浜辺に集まります。

パソラの起源は、オランダ東インド会社の記録に初めて記載された16世紀まで遡ることができます。地元の民間伝承によると、この祭りは祖先や万物の霊を鎮め、豊作を祈るために始まったといいます。この伝統は、スンバの人々の大半が実践している崇拝の一形態であるマラプ教(Agama Marapu)と密接に結びついています。マラプは多義的な言葉であり、一般的に知られている「祖先/祖霊」という意味だけでなく、泉や森などに宿る精霊等の霊的存在を指すこともあるようです。

https://sumbaislandtours.com/wp-content/uploads/2017/03/pasolafestival10.jpg
https://sumbaislandtours.com/pasola-horseback-fighting-festival-feb-march.html

パソラは年に一度、田植えシーズンの始まりに合わせて行われ、地域によって多少異なるものの、多くが2月から3月にかけて行われます。パソラのメインイベントは上述の騎馬戦と槍投げを掛け合わせたものですが、メインイベントに至るまでの数日間に渡り、パソラを盛り上げるための数々の儀式やセレモニーが行われます。中でも最も重要な儀式のひとつが「ニャレ(Nyale)」で、満月の夜にスンバの海岸に現れる色とりどりの海虫を探す儀式です。このミミズのような海虫の出現は、祖先からのサインであり、パソラ祭りの始まりを告げるものだと信じられています。

島全体がパソラムードで高まったメインイベントの当日、伝統的な衣装に身を包んだ各村や部族を代表する数百人もの騎手が、木で作られた槍で武装してスンバの海岸に集まります。騎手はほとんどが男性で、それぞれの所属を代表し、対立する2つのグループを形成します。ゲームの目的は、馬に乗り全速力で走りながら相手チームに槍を投げつけ、勇敢さ、技術、馬術を披露することです。パソラの最も注目すべき点のひとつは、騎手たちが見せる圧倒的な運動能力と技術にあります。スンバの騎手はその卓越した馬術で有名で、多くの騎手が幼少期から乗馬を始めています。実際、10歳の少年が祭りに参加し、大人の騎手に引けを取らないパフォーマンスと勇気を披露することも珍しくありません。

https://sumbaislandtours.com/wp-content/uploads/2017/03/pasolafestival15.jpg
https://sumbaislandtours.com/pasola-horseback-fighting-festival-feb-march.html

一方で、その長い歴史と文化的意義にもかかわらず、パソラは近年困難に直面しています。2016年、スンバ島南西部の地方自治体は、安全上の懸念から、祭り期間中に本物の槍を使用することを正式に禁止しました。この決定は、過去のパソラで重傷者や死亡者まで出る事件が何件か発生したことを受けて下されたものです。しかし、伝統を守ろうとする地元の多くの人たちは、偽物の先が尖っていない槍の使用は祭りの伝統的意義を低下させると主張し反対してきました。こうした意見を受け止め、スンバ観光局などの地元団体は、伝統の本質を守りつつ参加者の安全を確保する妥協点を見出すべく、地元民や政府と緊密に連携してきました。近年では、防護服の着用や医療スタッフの待機など、より厳格な安全対策が実施されている様です。

パソラは国際的にも認知され、この独特かつスリリングな光景を見ようと世界中から観光客が訪れています。馬の蹄が轟き、槍がぶつかり合い、観衆の興奮が最高潮に達し、一度見たら忘れられないパソラの光景は、一見に値するものです。新型コロナウイルス感染症が拡大する前には、一つのパソラに5,000人にも上る観客が集まると予想されていたほど、パソラは国内外から多くの人々を魅了し続けています。新型コロナウイルス発生後は一時期規模を縮小して開催していたものの、徐々に回復の兆しを見せています。

https://sumbaislandtours.com/wp-content/uploads/2017/03/pasolafestival13.jpg
https://sumbaislandtours.com/pasola-horseback-fighting-festival-feb-march.html

パソラへの国際的認知の高まりは、インドネシア市場でのプレゼンス拡大を目指す日本企業にとっても、またとないチャンスとなるのではないでしょうか。未だ手つかずのビーチ、緑豊かな風景、パソラの様な豊かな文化遺産を持つスンバ島は、コアな体験を求める日本人観光客にとって最高の目的地になる可能性を秘めています。弊社インドネシア総合研究所とともに、パソラの精神やスンバ島の文化遺産の持続可能な観光を支援し、日本からの観光客に思い出に残る体験を提供するだけでなく、インドネシアとの有意義な繋がりを結んでいきませんか。インドネシアにおける観光産業にご関心をお持ちの日本企業の皆様、是非お気軽に弊社インドネシア総合研究所へお問い合わせくださいませ。

参考
https://kupang.antaranews.com/berita/14690/gubernur-optimistis-pasola-2020-akan-dihadiri-5000-pengunjung
https://timesindonesia.co.id/gaya-hidup/488336/tradisi-pasola-di-sumba-barat-pemerhati-budaya-menyebutnya-sebagai-alat-pemersatu
https://exploresumba.com/pasola-festival-sumba-island
https://www.detik.com/bali/budaya/d-7332105/tradisi-pasola-di-sumba-barat-sejarah-hingga-waktu-pelaksanaan

関連コラム

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

記事のシェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次