インドネシアにおける外資法人設立要件が変わる!-インドネシア投資環境の最新ルール(2025年改正)

2025年10月2日、インドネシア投資省・投資調整庁(BKPM)は、新たに「投資およびリスクベース許認可に関する省令第5号/2025(Perka BKPM No.5/2025)」を公布し、施行を開始しました。本規則は、これまでのBKPM第3・4・5号(2021年)を統合した新しい枠組みであり、インドネシアの投資制度を抜本的に再構築する重要な改正です。インドネシア政府はこの改革を通じて、投資手続きの簡素化、法的確実性の向上、そして外国投資家の参入促進を目指しています。

今回の改正は、インドネシアへの投資に興味のある投資家や企業の方々にとって、事業許可を簡素化・改善する手段として行われました。さらに、インドネシアにおける外資法人設立の大きな壁となっていた最低資本金の引き下げなど、いくつかの規制の変更は、インドネシアの投資の枠組みをよりアクセスしやすく投資家に優しいものとし、より広範な外国投資の参加を促進することを目的としています。

本コラムでは今回の改正のポイントをいくつかご紹介します。

目次

最低資本金の引き下げ

今回の外資規制の改正で最も注目を集めている改正点の一つは、外資法人(PMA)設立時の最低資本金要件の大幅な引き下げです。これまで外国投資家は最低100億ルピア(約1億円)を資本金として拠出する必要がありましたが、今回の改正によって、最低払込資本金の額は2億5,000万ルピア(約2,500万円)に引き下げられました。これは中小規模の外国企業にもインドネシア市場への参入を促す施策であり、特にサービス業やスタートアップ企業にとって歓迎すべき変更です。

一方で、インドネシア政府は「見せかけの資本金」の問題にも対応しています。新規則では、資本金は会社口座に入金後、少なくとも12か月間は所定の口座から移動させてはならないと定められました。この制限は、インドネシアで実際に事業を行う意思のある外資企業・投資家を選別し、実体を伴わない外資法人の設立を防ぐための措置となります。法人を設立する外資企業はOSSを通じて自己宣誓書を提出し、資本金の維持を公式に誓約する必要があります。これにより、インドネシア政府は投資の信頼性を高め、より持続的な資本流入を確保しようとしています。

不動産・農業・宿泊業など土地関連事業への優遇

これまで、投資額の計算には「土地・建物の価値を含まない」という原則が適用されていました。しかし今回の改正により、不動産開発、宿泊業、農業、畜産、水産養殖などの土地依存型セクターでは、土地や建物の価値を投資額に含めることが可能となりました。これにより、土地取得コストが大きな比重を占める事業でも、正当に投資要件を満たせるようになります。

この改正は、特に観光地でのリゾート開発や長期的な農園事業など、地域経済と密接に関係する外資プロジェクトを後押しする効果が期待されています。従来は投資額要件の高さから進出を断念していた外国企業も、今後はより柔軟な形でインドネシア市場に参入できる見通しです。

飲食業とEVインフラへの新たな基準設定

飲食業に関しても、改正により基準が明確化されました。これまで「1店舗ごとに最低100億ルピアの投資」が求められていましたが、新ルールでは「1県・市単位で100億ルピア」と定義されています。つまり、同一市内で複数店舗を運営する場合、合計投資額が100億ルピアを超えれば要件を満たすことになります。これにより、フランチャイズ展開を目指す外資系レストランチェーンにとって、事業展開の柔軟性が大きく向上しました。

さらに、インドネシアにおける電気自動車(EV)の普及を後押しする新たな投資分野として、「EV充電ステーション(Electric Vehicle Charging Station)」事業が初めて明文化されました。1州あたり最低100億ルピア以上の投資が求められるものの、複数の小規模ステーションを同一州内で展開できるようになり、再生可能エネルギー分野の外資誘致を促進する制度設計となっています。

新首都ヌサンタラ(IKN)での特別優遇措置

今回の改正では、ヌサンタラ新首都(IKN)における外資誘致を意識した制度も導入されました。「ヌサンタラ首都庁(OIKN)」は、地方政府と同等の権限を持ち、IKN地域内の事業許可発行、投資調整、税制優遇の実施などを担います。投資家はOSSを通じてOIKNと直接連携することが可能となり、これまで以上に迅速な手続きが期待されています。

OIKN管轄地域では、法人税(PPh)の減免や、研究開発(R&D)・職業訓練への追加控除といった特別インセンティブが認められます。金融センターとしての機能を担うIKN Financial Centerに対しても、特別な優遇措置が規定されており、今後インドネシア政府が新首都ヌサンタラを国際ビジネスハブとして育成していく姿勢が明確に示されました。

投資活動報告(LKPM)制度の見直し

今回の改正により、外資企業に対する監督・報告制度も変更されました。これまで報告義務が免除されていた石油ガス上流部門、銀行、保険、ノンバンク金融機関も、今後は定期的に「投資活動報告書(LKPM)」を提出する必要があります。インドネシア政府の資金で運営されるプロジェクトを除き、すべての民間事業が対象となります。また、報告期限も「各期10日」から「15日」に延長され、提出猶予が設けられました。これにより、中小企業や新規参入企業の事務負担が軽減されることが期待されます。

NIBの法的効力の拡大

事業者識別番号(NIB)は、これまで単なる事業登録番号としての役割にとどまっていましたが、新規則では関税アクセス、輸入者登録、社会保障加入、労働報告の初回提出など、複数の法的効力を持つ「統合ライセンス」として機能します。これにより、インドネシアのビジネス環境は一層デジタル化・効率化へと進化しています。

参考リンク:https://www.hukumonline.com/klinik/a/aturan-pendirian-pt-pma-dan-prosedurnya-lt61d56ad143be5
https://www.mahendracounsel.com/insights/pembaharuan-modal-pt-pma%3A-komitmen-minimum-modal-ditempatkan%2Fdisetor-rp-2%2C5-miliar-dalam-peraturan-bkpm-5%2F2025

おわりに

今回のインドネシアにおける外資規制の変化は、インドネシアへの投資に興味のある外資企業に対して「開放」と「信頼性強化」の両面からアプローチする画期的な改革です。最低資本金の引き下げにより参入障壁を下げつつ、資本金の移動規制や報告義務の強化によって実質的な投資活動を促す構造となっています。新首都ヌサンタラを含む特区での優遇制度も整備され、今後は日本企業をはじめとする外国企業にとって、インドネシアがますます魅力的な投資先となるでしょう。


今回ご紹介した内容は、25年10月末時点での最新情報となります。

制度の詳細や実務運用については、今後発出される財務省令や技術ガイドラインを注視することが重要です。

インドネシアでの法人設立などにご興味のある方は、ぜひお気軽に弊社インドネシア総合研究所までお問い合わせください。

関連コラム

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

記事のシェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次