【コラム】インドネシアの低下する婚姻件数とその原因 

インドネシア中央統計局(BPS)によると、インドネシアの婚姻件数は過去10年間で大幅に低下し、2023年には過去最低値に達しました。2023年に結婚したインドネシア人は約158万人に過ぎず、前年に比べ1.51%減少しています。インドネシアは2023年時点の平均年齢が29.9歳(日本は50歳)と若年層の人口が多く、人口ボーナス期真只中にあり、2050年頃まで人口増加傾向にあると言われていますが、一体何故婚姻数が急減しているのでしょうか。

目次

インドネシアの婚姻件数の推移(2013―2023)

インドネシアの婚姻件数の推移(単位:万)BPSの統計を基に弊社作成
https://databoks.katadata.co.id/datapublish/2024/02/29/angka-pernikahan-turun-pada-2023-rekor-terendah-sedekade-terakhir

インドネシアの婚姻件数は、過去10年間で一時期上昇も見られたものの、直近6年間では下がり続けていることが記録されています。上のグラフはインドネシアの過去10年間の婚姻件数の推移です。10年前の2013年には、インドネシア人の婚姻件数は221万組に達していましたが、過去10年間で630,000件減少しました。中でも2023は特に大きく減少が見られたことが分かります。

州別の婚姻件数の現状と傾向

州別に見ると、婚姻件数の低下はほぼすべての地域で起こっています。

2023年に最も婚姻件数の多い州である西ジャワ州でも、昨年比で29,000件近く減少し、2位の東ジャワ州では13,000件、3位の中部ジャワでも21,000件の減少が見られ、人口密度の高い他の州でも同じ状況が発生しました。婚姻件数の少ない州はパプア地域で、山岳パプア州では、この1年間、結婚は1件も記録されていないという事態に至っています。一方、全ての州で婚姻件数が減少したわけではなく、過去3年間で増加を記録した州もあるようです。例えば、バリ島では実際に婚姻件数が上昇しています。2021年には2,912件だった婚姻件数が、2022年には3,047件、2023年には3,056件となっています。

原因①:若い世代の意識の変化

インドネシアの婚姻件数の急減の背景には様々な要因がありますが、その一つが若者の意識の変化です。インドネシア中央統計局の報告書「インドネシアの若者統計2023」によると、現在若者の約68.29%が未婚であり、30.61%が既婚、残りは離婚または寡婦となっています。同報告書における「若者」の定義は、2009年の法律第40号で、16歳から30歳までのインドネシア国民と定められています。

2023年時点では、全人口に占める若者の割合は23.18%と、「若者」はインドネシアの人口のほぼ4分の1を占める大きな集団です。いわゆる「晩婚化」「未婚化」など婚姻件数の減少に、若者の意識の変化は大きく影響しています。婚姻件数の統計では、未婚の若者の大半はジャカルタなど都市部出身者であったことが明らかになっています。個人主義が一般化した現在、自身が主役である人生に多くの願望や目標を持つことが当たり前の世の中になりました。インドネシアの専門家によると、こうした意識の変化から、キャリアでの出世や成功、学業や研究の追求など、若い世代が家族形成にあまり目を向けなくなったのも、婚姻件数の減少の原因の一つと分析されています。

原因②:社会情勢

新型コロナウイルス感染症の流行も、インドネシアの婚姻件数を下げる一因となりました。パンデミック時に政府が課した社会的制限により、多くのカップルが状況の改善が見られるまで結婚を延期することを選択したのです。延期に伴って結婚を考え直したカップルも多くいると言われています。また、インドネシアで増加傾向にある離婚率の高さなどの社会問題も、多くの人が結婚する際の考慮事項となっています。

原因分析③:法律

上記のグラフで2019年から2020年にかけて婚姻件数が大きく減少していますが、これには1974年法律第1号の改正に関する2019年法律第16号の実施が関係しています。この法改正によって、婚姻可能年齢が「男性19歳以上、女性16歳以上」から、「男女共に19歳以上」に改訂されたため、これまで女性の若年結婚(18歳未満の結婚)の多かったインドネシアの婚姻件数の変化に大きな影響をもたらしました。

加えて、インドネシアで多い「ニカ・シリ(pernikahan siri)」が正式な婚姻数に記録されないことも、婚姻件数の減少にも寄与しています。ニカ・シリとは、宗教法に従って行われるものの、一般には公表せず、イスラム宗教事務所(Kantor Urusan Agama, KUA)や民事登録所(Kantor Catatan Sipil)に正式に記録されない結婚の形態のことです。ニカ・シリは宗教的には有効ですが、法律上は無効な結婚である、いわゆる日本の事実婚に相当するような婚姻を指します。

今回のコラムでは、最新の統計情報からインドネシアの婚姻件数の減少についてご紹介いたしました。インドネシアの婚姻率は様々な要因が絡み合い、低下の一途を辿っているのです。弊社インドネシア総合研究所では、こうしたインドネシア社会情勢の調査から、ビジネスのサポートまで、インドネシアにまつわる様々なサポートをご提供しております。皆様の個別のニーズに合わせたご提案をさせて頂きます。是非お気軽に弊社インドネシア総合研究所お問い合わせフォームへご相談くださいませ。

関連コラム

参考:https://www.bps.go.id/id/publication/2024/02/28/c1bacde03256343b2bf769b0/statistik-indonesia-2024.html
https://bacakoran.co/read/21212/waduh-angka-pernikahan-di-indonesia-turun-drastis-apa-yang-terjadi
https://www.cnnindonesia.com/gaya-hidup/20240306183127-284-1071319/angka-perkawinan-di-indonesia-terus-menurun-dalam-6-tahun-terakhir

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