【コラム】増え続ける総人口 若い労働力を抱えるインドネシアの未来図とは
日本では少子高齢化や人口減少が叫ばれて久しいですが、インドネシアではいまだに人口拡大が進み、今や世界4位の人口を抱える大国として注目を集めています。
今回は、そんなインドネシアの現在の人口動態や政府の掲げる将来像「GOLD INDONESIA 2045」、そして日本にとってのインドネシアの重要性についてご紹介していきます。
インドネシアの人口最新事情
インドネシアは、2023年現在で約2億7300万人以上もの人口を抱えています。
インドネシア中央統計庁(BPS)によれば、インドネシアにおける人口増加の伸びは徐々に穏やかになるものの、少なくとも2050年まで一貫して増加を続ける見込みです。最新の人口予測では、2032年頃には人口3億人を突破すると予測されています。日本の2022年の総人口がおよそ1億2500万人で前年比64万4千人の減少となっていることを考えると、インドネシアの人口増加の規模が伝わるのではないでしょうか。
図:世界銀行https://data.worldbank.org/indicator/SP.POP.TOTL?locations=ID&start=2015 とインドネシア統計庁(BPS) Proyeksi Penduduk Indonesia(インドネシアの人口予測) https://www.bps.go.id/publication/2023/05/16/fad83131cd3bb9be3bb2a657/proyeksi-penduduk-indonesia-2020-2050-hasil-sensus-penduduk-2020.html を元に弊社作成
(最終アクセス:2023/09/12)
次に、インドネシアの人口ピラミッドを見てみましょう。
人口ピラミッドは男女別・年齢別の人口分布を示すもので、グラフの形状により、「富士型」「つりがね型」「つぼ型」などに分類されます。
インドネシアは現在、多産多死で高齢者人口の割合が少なく、15歳未満の人口の割合が多い富士山型から、高齢者人口の割合が少なく、0歳から65歳未満の人口の割合が一定しているつりがね型へと移行しつつあります。
ただ、一般につりがね型では人口は安定期に入るとされていますが、インドネシアでは人口が拡大を続け、まだまだ若者のボリュームが大きいのが特徴です。2023年時点の平均年齢は29.9歳で、街中でも子どもが多く、職場などでも若い人の姿が目立ちます。
ちなみに2020年時点でのインドネシアにおける平均年齢は29.2歳だったため、わずかに上昇がみられます。平均年齢の伸びには、インドネシアにおける医療環境や健康状態の改善に伴い、高齢者の人口が増加傾向にあることなどが理由として挙げられるでしょう。
参考:https://www.worldometers.info/world-population/indonesia-population/ (最終アクセス:2023/09/12)
インドネシアの生産年齢人口の割合は2022年時点で約68%と、生産年齢人口が高齢者と子供の数を上回る「人口ボーナス期」に入っています。
人口ボーナス期では豊富な労働力を背景に消費が活性化するため、経済が拡大しやすく、社会インフラも整いやすいとされています。インドネシア政府によれば、人口ボーナス期は2040年ごろまで続くだろうと予測されており、政府は経済成長とともに労働者の質や能力をいかに向上させるかを重視しています。
図:インドネシア統計局(BPS)、「Statistik Indonesia/Statistical Yearbook of Indonesia 2022」を元に弊社作成
https://www.bps.go.id/publication/2022/02/25/0a2afea4fab72a5d052cb315/statistik-indonesia-2022.html (最終アクセス 2023/09/13)
対して、日本の人口ピラミッドは以下のようになっています。
平均年齢は世界で最も高い約46歳で、人口ピラミッドは高齢者の人口が多く、子供が少ないことを示す「つぼ型」となっています。将来的に少子高齢化がますます進行すれば、「逆富士山型」に移行することも考えられます。
2022年時点での生産年齢人口の割合は約59%で、比較可能な1950年以降過去最低を記録しています。日本は1990年代から、人口ボーナス期の対義語に当たる人口オーナス期にあり、人口に占める労働人口の割合が低下傾向にあります。
図:総務省統計局「人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)」を元に弊社作成
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2021np/index.html (最終アクセス 2023/09/13)
GOLD INDONESIA 2045とは
ここまでご紹介したように若者が多く活気にあふれているインドネシアですが、人口に雇用が追いつかず若者の失業が深刻化するなど、急激な人口増は弊害も引き起こしています。
そこで、豊富な労働力を活用し経済成長につなげることを目指し、政府は「GOLD INDONESIA 2045」(Visi Indonesia Emas 2045)という目標を掲げています。
2045年は、1945年のインドネシア独立宣言からちょうど100年に当たります。
GOLD INDONESIA 2045とは、人口ボーナス期が続くのが2040年頃までであることを踏まえ、2045年までに人口ボーナス期を最大限活用して十分な雇用の創出と質の向上、社会インフラを向上させるという政府のビジョンのことです。インドネシア国家開発企画庁(BAPPENAS)は、ビジョンの4本柱として以下を挙げています。
①人の開発と技術の習得
:教育レベルの向上と科学技術の発展を通じた国民の生活の質の向上
②持続可能な経済発展
:投資と貿易の拡大、産業と観光の加速、海洋経済の発展、食料安全保障の強化と農民の生活の改善、エネルギー安全保障、環境への取り組みなど
③公平な発展
:貧困緩和、機会の平等、所得の公正な分配、地域格差の緩和、インフラ開発など
④国土強靭化とガバナンス強化
:民主主義体制の強化、制度改革、官僚改革、法整備と腐敗の打破、自由で積極的な外交政策、レジリエンスと安全保障の強化など
参考:インドネシア国家開発企画庁(BAPPENAS)
https://perpustakaan.bappenas.go.id/e-library/file_upload/koleksi/migrasi-data-publikasi/file/Policy_Paper/Ringkasan%20Eksekutif%20Visi%20Indonesia%202045_Final.pdf
(アクセス日2023/09/13)
KOMINFO「Komitmen Pemerintah Wujudkan Bonus Demografi yang Berkualitas」
https://www.kominfo.go.id/content/detail/27423/komitmen-pemerintah-wujudkan-bonus-demografi-yang-berkualitas/0/berita」
(アクセス日 2023/09/13)
日本でのインドネシア人材就労
これからインドネシアではますます若い労働力が増える見込みですが、一方の日本は、さらに人口縮小が進み労働力不足が深刻化すると考えられます。そこで重要になってくるのが、インドネシア人材の日本での就労です。
厚生労働省の発表によれば、2022年10月末現在、日本では7万7889人のインドネシア人が働いているとされており、日本の社会に欠かせない存在となりつつあります。さらに、2022年のインドネシア人労働者数は前年同期比で47.5%増となっており、国別の伸び率では最も高くなっています。彼らの多くは20~30代の若者で、高校や職業専門学校を出たのち、技能実習生や特定技能人材として、日本で製造業や介護、農業などに従事して働いているケースが一般的です。
参考:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」(令和4年10月末現在)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30367.html (最終アクセス 2023/09/13)
インドネシアでは、日本車や日本製品が流通していたり、幼いころからアニメ、漫画などの日本文化に親しんでいたりすることもあり、日本への関心や憧れを持つ若者が多く存在します。
インドネシア国内の雇用が未だ不足しており平均賃金も低いことから、日本で働くという選択肢、彼らにとっても非常に魅力的であるようです。
インドネシア人の人材は総じて日本語学習にも積極的で、雇用後も真面目に働くため、近年インドネシア人材の雇用を検討される日本企業様も増えています。
一方で、日本に来て働きたいインドネシア人を狙った悪質なブローカーも増加しており、十分な日本語能力が無いまま渡航させたり、無賃労働や長時間労働に従事させたりするケースも報告されています。また、インドネシアと日本では、職場の雰囲気や職業倫理、時間の管理などの前提とする文化が異なり、それが原因でトラブルになることもあります。
人材を通したインドネシアと日本の結びつきはこれからますます重要になってくるからこそ、言語、文化どちらも十分に教育を行った上で雇用することが不可欠になってくるでしょう。
弊社インドネシア総合研究所では、ジャワ島西部の都市バンドゥンにて、特定技能人材・技能実習生の送り出し機関を運営しております。
日本語はもちろん、日本での生活や職場でのマナーに至るまで教育することで、受け入れる日本企業側も、働く人材側も良好な関係で働ける環境づくりに貢献しております。また、日本語のレベルについても、全員日本語検定N4に合格してから送り出しています。近年では介護、食品加工をはじめとする様々な分野でインドネシア人材の雇用に関するお問合せをいただいております。
また、同様の送り出し機関の新規設立についても弊社で支援させていただいております。
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