【コラム】インドネシアにおける電子タバコVAPEについて①健康被害

近年の喫煙者の傾向として従来の紙タバコよりもVAPE(電子タバコ)を愛用する人が増加しています。喫煙大国インドネシアでは、近年のVAPEの普及に伴いVAPEに起因する疾病が多数報告され、インドネシア保健省は危機感を募らせています。

VAPEが健康に大きな危険をもたらすという懸念から、VAPEを含めたタバコ代替製品の禁止を提案する動きも出始めています。

今回のコラムでは、インドネシアにおけるVAPEの最新事情をこれまでの変遷と健康被害のリスクも含めてご紹介いたします。
インドネシアにおける喫煙人口についてのトピックスは2020年9月に掲載させていただきました「【コラム】インドネシアの喫煙事情と今後のコロナの影響」、更にインドネシアにおけるタバコの法規制については先日掲載させていただきました「【コラム】インドネシアのたばこ規制」にて詳しくご紹介しておりますので、こちらも是非ご覧ください。

従来のタバコとVAPEの違いをまとめたインドネシアのメディアによる画像
(https://www.cnnindonesia.com/gaya-hidup/20191005014356-258-436910/infografis-perbedaan-dan-persamaan-rokok-vs-vape)

従来のタバコとVAPEの違い

VAPEは従来のタバコと比較されることが多いですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。一般に市販されているタバコは、タバコの葉を乾燥させ、紙に包んだものです。VAPEは、液体が入った電池、カートリッジ、及び発熱体から構成されており、この発熱体を温めて蒸発させることでタバコに似た感覚を作り出すことが出来るようになっています。

タバコもVAPEにもニコチンが含まれていますが、VAPEにはタバコの葉が含まれていないのが最大の違いです。インドネシアに限らず、このタバコの葉の有無を理由にしてVAPEの方が健康被害は少ないと主張する人々が世界中で多く見られています。しかし、VAPEには紙たばこ同様、健康に悪影響を及ぼす成分が多く含まれているのが実態です。

VAPEの普及の歴史

インドネシアでは、以前からVAPE愛好者は一定数存在していましたが、広く普及し始めたのは2015年頃からです。従来のタバコに比べ健康被害が少ないという宣伝文句と、従来のタバコに比べて比較的安価であったことから、全国で普及しました。

普及当初はVAPEの本体や中身の液体は輸入品しかありませんでしたが、徐々にインドネシア国内においても中小企業がVAPEに使用する液体の生産を拡大していきました。比較的新しいVAPEには政府による明確な安全規制や流通規制が施行されていなかったため、VAPE産業は急成長を遂げたのです。

VAPEへの課税:物品税

インドネシア財務省がVAPEの流通に物品税を課したのは、2018年10月からでした。税関を通じて、VAPEの液体に小売販売価格の57%の物品税が課されるようになり、その後僅か3カ月で、VAPEによる税収は9億5500万円にまで達しました。

この結果を受け、更なる税収とVAPE利用者数を減らすことを目的とし、財務省は2022年よりVAPEの加重平均税率を12%引き上げるという新たな法令を施行しました。VAPEの物品税の詳細については次回のコラム「【コラム】インドネシアにおける電子タバコVAPEについて②物品税率引き上げ」で詳しくご紹介させて頂きますので、こちらも是非ご覧ください。

VAPEの健康被害

米国疾病対策センター(CDC)の報告によると、VAPEには、ニコチン、プロピレングリコール、植物性グリセリン、アセトアルデヒド、ニトロソアミン 、重金属、ケイ酸塩、ナノ粒子などの有害化学物質が含まれており、喫煙により肺癌、肺気腫、心臓病、内臓刺激や炎症、細胞損傷を発症する可能性が高いと言われています。

また、インドネシアでは、2019年に、あるVAPEの液体に大麻の成分が入っていたことが発覚し、国内メディアで大々的に報道されました。またVAPEに含まれる成分だけでなく、VAPE本体の構造上の危険性も懸念されています。

バッテリー駆動のVAPEはデバイスの過充電を主な原因として突如爆発することが多く、使用者が怪我をすることもあるので注意が必要であると警告されています。こうしたVAPEの危険性や身体への影響から、世界保健機関(WHO)は、世界各国に「特に子供や妊婦の電子タバコの喫煙を禁止する」よう国民に警告する事を促しています。

まとめ

これまで、インドネシアにおけるVAPEの普及の変遷とその健康被害について、従来のタバコとの比較を交えながらご紹介して参りましたが、如何でしたでしょうか。

VAPEによるこうした危険性や健康被害が国内で広く認知されるまでには時間がかかるため、今後インドネシア保健省や財務省は引き続きVAPEへの規制や税制を追加・修正していくことが予想されます。

タバコに課される税金の種類やVAPEの最新の物品税率等については今後のコラムでもご紹介させて頂きますので、是非ご覧ください。

インドネシアは国内外の情勢により法規制が頻繁に変更される国の一つです。
弊社インドネシア総合研究所では、インドネシアにおける様々な分野において最新の法規制等を踏まえた最適なアドバイザリーサービスをご提供しております。ご関心をお持ちの日本の企業家の皆さま、是非お気軽にお問い合わせくださいませ。

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-6804-6702

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

記事のシェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次