【コラム】インドネシアのたばこ規制
インドネシアは男性の喫煙率が約70%を占める喫煙大国です。弊社インドネシア総合研究所でも、度々インドネシアのたばこ産業や喫煙率、たばこ市場、税、法規制等についてニュースやセミナーにて取り上げてきました。この数年間で日本では喫煙率が減少傾向にありますが、インドネシアでは喫煙率は依然として高いです。
保健省が実施した2021年世界成人喫煙者調査(GATS)では、インターネット広告の増加に伴い成人喫煙者数が2011年の6,030万人から2021年には6,910万人と、この期間に880万人も増加したことが報告されています。また、インドネシアは東南アジアのWHO加盟国の中で唯一たばこ規制枠組条約を批准していない国でもあります。このインドネシアのたばこ規制はどの様になっているのでしょうか。以下ではインドネシアのたばこ規制の最新情報をお届けいたします。
禁煙・喫煙区域
インドネシアでは公共交通機関、医療施設、教育施設、礼拝所などでは喫煙が禁止されています。その他公共の場所や職場では、指定された喫煙所を設けなければなりません。屋外については、子どもの遊び場は禁煙と定められています。禁煙や喫煙制限区域の設定には地方自治体による法律の制定が必要ですが、国の法律では、地方自治体が法制定を行う期限を定めておらず、禁煙法の有無は地方自治体によって異なります。
一方で、自治体によっては国の法律よりも厳しく禁煙・喫煙制限を設けている地域もあり、地方自治体によって禁煙法にばらつきがあるのが現状です。特に喫煙者の方は現地へ渡航される際はその地域の禁煙法をよく調べておく必要があると言えるでしょう。
タバコの広告、宣伝、スポンサーシップ
タバコの広告と宣伝は、一定の制限付きで許可されています。テレビとラジオでのタバコの広告は、現地時間の21時30分から午前5時の間に限り放送することが出来ます。
一方、どんな広告においても、たばこの形状、たばこ製品のブランド、喫煙シーンを放送することはできません。印刷広告と屋外広告については、さらに厳しく制限が設けられています。更に、タバコ製品の無料配布や割引、タバコ製品を賞品とすること、特定のタバコ製品のブランドを一定以上大きく展開する事にも制限を設けています。タバコのスポンサーシップやその宣伝についても、幾つかの制限が設けられています。
タバコの包装とラベル
ほとんどの喫煙・無煙タバコ製品について、たばこがもたらす健康被害の警告(イラスト)が包装の上端と平行に主要表示部の40%を覆うことが義務付けられています。イラストとして記載されなければならない健康への害の警告は5種類あり、各たばこ製品にはその全てが必ず表示されています。
また、たばこの包装には、「ライト」「低タール」等あたかもそのたばこが無害であるかのような誤解を招く用語の使用は禁止されています。反面、誤解を招きそうなデザイン(色、数字、記号など)は禁止されていません。 また前者の禁止用語についても、この法規制以前に既にこれらの用語をブランドや商標に使用していたタバコ製品には、この禁止は適用されません。そのため市場に出回っているたばこの中には、魅力的なデザインのたばこが数多くあります。
たばこの内容物と表示について
2012年に制定された規則第109号では、「健康に害を与えないことが科学的に証明されない限り」たばこ製品への添加物の使用を禁止していますが、現在までに省令は出されておらず、実際には添加物の使用が認められているのが現状です。
なお、同法では、製造業者および輸入業者は、製品の排出ガスに関する情報を行政当局に開示することが義務づけられていますが、内容物に関する情報の開示は義務づけられていません。
販売規制
自動販売機や教育施設、子どもの遊び場、医療施設などでのたばこ製品の販売や、小袋のたばこを販売することは法律で禁止されています。一方、インターネット販売や紙巻きたばこの1本売りには規制がありません。
また、18歳未満へのたばこ製品の販売は法律では禁止されていますが、インドネシアでは青少年の喫煙率は19.2%(2019)にも上り、これが保健省の頭を悩ませる種となっています。
2017年 参考記事 ぜひこちらもご覧ください。
2020年 参考記事 ぜひこちらもご覧ください。
まとめ
インドネシアは人口が多い事のみならず、喫煙率が高いこともあり、たばこ市場の規模が大きい国の一つです。
近年日本では電子タバコも主流になってきていますが、インドネシアでは電子タバコについての法規制は未だ存在せず、依然として紙巻きたばこが主流であり、今後インドネシア市場に参入されたいとお考えの日本の企業様にとっては非常に魅力的なマーケットであると言えます。現状では少数ながら流通している電子タバコには紙巻きたばこと同様各地方自治体で喫煙区域等の喫煙制限対象になる等、紙たばことひとくくりで制限される対象となる場合はあります。
今後、電子タバコが益々普及した場合には電子タバコ独自の法規制が成立する可能性もあり、紙巻きたばこ・電子タバコ両方の法規制に引き続き注意しておく必要性がありそうです。
インドネシアにおいてビジネスを拡大させるには、現地の法規制や実情について理解を深めておくことが欠かせません。弊社インドネシア総合研究所では、皆様のインドネシア進出をサポートさせて頂きます。インドネシアのたばこ産業の展望に興味がある企業様、またインドネシアについて相談したい企業様は、是非お気軽に下記までお問い合わせくださいませ。
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