【コラム】インドネシアの喫煙事情と今後のコロナの影響

インドネシアは世界的にみても喫煙率が高く、販売価格も大変安価なことから、「タバコ大国」としてご存知の方も多いのではないでしょうか?

インドネシアは世界的にみても喫煙率が高い国となっており、インドネシア国内での喫煙率の推移は以下の通りです。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)WEBサイトより弊社作成(閲覧日:2020年9月8日)
https://www.bps.go.id/dynamictable/2018/07/02%2015:24:37.29374/1514/persentase-merokok-pada-penduduk-umur-15-tahun-menurut-provinsi-2015-2016.html

 

WHOの調査によると、2019年時点でのインドネシア全体の喫煙者の割合は38.1%ですが、男女別でみると、インドネシアの男性の喫煙率は70.5%、女性は5.6%と、圧倒的に男性の喫煙率が多いことがわかります。男性喫煙率のみでみると、インドネシアの男性の喫煙率は世界でも最も高い国の一つに入ります。

参考WEBサイト:https://www.who.int/tobacco/surveillance/policy/country_profile/idn.pdf?ua=1

 

また、以下はインドネシアの経済層別の喫煙率です。

出典:Databoksより弊社作成(閲覧日:2020年9月8日)
https://databoks.katadata.co.id/datapublish/2018/07/08/mayoritas-perokok-indonesia-adalah-kelompok-ekonomi-mengengah

 

経済層は以下のように分類されますが、中間層が最も喫煙率が高いことが分かります。

・Quintile 1…最貧困層

・Quintile 2…貧困層

・Quintile 3…中間層

・Quintile 4…上位中間層

・Quintile 5…富裕層

最貧困層と富裕層の喫煙率が低い理由については、最貧困層についてはタバコを購入する金銭的余裕がないため、そして富裕層については健康意識が特に高いためと考えられます。

 

インドネシアは、成人のみでなく、未成年の喫煙者が多いことも社会的な問題となっています。

数年前、インドネシアの2歳児が1日数十本もタバコを吸っていることが世界的なニュースになったことを覚えていらっしゃる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

インドネシアの2018年度国民健康基本調査(Riskesdas)によると、10~18歳の子供の喫煙者は、2013年時点では7.2%でしたが、2018年時には9.1%に上昇しました。

これは、インドネシア国家長期開発計画(RPJMN)で定められた2019年の目標である5.4%とはかけ離れ
ている数字であることが分かります。

また、インドネシアでは、13-15歳の中学生のうち20%がすでに喫煙をしたことがあり、更にインドネシアの子供の30%は10歳になる前に喫煙を始めているそうです。

参考WEBサイト:https://www.kemkes.go.id/article/view/20053100002/peringatan-htts-2020-cegah-anak-dan-remaja-indonesia-dari-bujukan-rokok-dan-penularan-covid-19.html

 

調査チームの報告は、未成年の喫煙率の増加は、インドネシアは街中にタバコの広告が多く、子供たちが通う学校の周りにもタバコの広告が多く掲げられていることや、学校の周りにタバコを買える場所が多く存在していることなどを要因して挙げています。

調査によると、タバコの広告のうち74%が学校から300m以内の場所に設置されていたそうです。

また、それ以外にも、そもそもインドネシア全体での喫煙率、特にインドネシア人男性の喫煙率が高いことや、子供がタバコを購入する際の制限や規制が特に設けられていないことなども、未成年の喫煙者が多いことの理由として挙げられるでしょう。

参考WEBサイト:https://health.detik.com/berita-detikhealth/d-5158196/perokok-anak-di-indonesia-meningkat-survei-ungkap-kemungkinan-penyebabnya

 

以下は、インドネシアの18歳以下の喫煙率です。

概要 2015 2016
性別 男性 7.13% 6.47%
女性 0.16% 0.14%
年齢 10-12 0.11% 0.09%
13-15 1.62% 1.40%
16-18 10.67% 9.50%
居住地 都市部 3.42% 3.01%
農村部 4.03% 3.75%
インドネシア全体 3.73% 3.39%

出典:インドネシア中央統計局(BPS)WEBサイトより弊社作成(閲覧日:2020年9月8日)
https://www.bps.go.id/statictable/2018/06/28/2006/persentase-merokok-pada-penduduk-usia-18-tahun-menurut-karakteristik-persen-2015-2016.html

 

また、インドネシアはここ数年で、煙を出さない電子タバコ(Vape)の市場が急激に拡大し、街中にはVapeバーなども多く見受けられるようになりました。

Vapeは従来のタバコよりも健康を害するリスクが低いということが謳われ、更に価格も安価であるため、多くのインドネシア人がVapeを利用し始めました。2019年12月時点で、インドネシア国内のVape利用者は100万人以上、税収は5000億ルピア以上と言われています。

上記の通り、Vapeは従来のタバコよりも健康リスクが低いというのがインドネシア国内での一般的なイメージとして広く普及していますが、実際にはインドネシア国内ではVapeにも有害物質が含まれるとして健康問題も指摘されており、インドネシア保健省、インドネシア医師会、国家医薬品食品監督庁(BPOM)は、電子タバコが様々な健康被害をもたらすとして、代替タバコ製品の禁止の提案に向けて動いています。

参考WEBサイト:https://tirto.id/nasib-vape-di-antara-tarik-ulur-legalitas-dan-klaim-kesehatan-enpu

 

インドネシアでは今年3月に初めて新型コロナウイルス感染者が確認され、その後も収束の目途がたたないまま感染者拡大が続いています。

新型コロナウイルスについては、世界各国の様々な機関でその性質について研究がなされている段階ではありますが、現段階では感染後に重症化しやすい人の傾向として、高齢者、すでに基礎疾患がある人、そして喫煙の習慣がある人が挙げられています。

WHOによると、コロナの重症化と喫煙の関係は、現時点では査読済みの論文はまだ発表されておらず、現在も継続して研究が行われている状態ではありますが、インドネシアを含む世界各国で喫煙とコロナ感染後の重症化について関係性が指摘されています。

参考WEBサイト:https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/smoking-and-covid-19

 

上述の通り、喫煙率が高いインドネシアでは、医療機関や専門家より喫煙によるコロナ感染後の重症化リスクが指摘されており、インドネシアの人々に禁煙をするよう呼びかけています。

インドネシア保健省は今年5月31日の世界禁煙デーに合わせて、“喫煙は、糖尿病、高血圧、心臓病、癌などの疾病と同様新型コロナウイルスを重症化させ、健康上のリスクを高める”ものとした上で、“コロナ重症化のみでなく、インドネシア国民の健康水準を高めるためにもタバコのリスクを知り、喫煙を控えましょう」と呼びかけました。

参考WEBサイト:https://www.kemkes.go.id/article/view/20053100002/peringatan-htts-2020-cegah-anak-dan-remaja-indonesia-dari-bujukan-rokok-dan-penularan-covid-19.html

 

その他、インドネシアでは各自治体が公式WEBサイト上にて、コロナ禍でのマスク着用や手洗い、ソーシャルディスタンスの実施などを呼びかけていますが、その他日常で取り入れられるコロナ予防の取組として、禁煙も呼びかけています。

引用:バンカブリトゥン州保健局WEBサイトより  http://dinkes.babelprov.go.id/

 

「Germas」とは、インドネシア保健省が取り組む運動(Gerakan Masyarakat Hidup Sehat=健康な生活社会運動)を指します。

もちろん、禁煙は健康面には良い取り組みと考えられますが、インドネシアの経済面を考慮をするとどうでしょうか?

インドネシアは上述の通りタバコ大国であるため、2014年に導入された国民皆保険制度は導入以降赤字が続いていますが、その赤字をタバコ税で補っているのが現状です。

以下は、インドネシアにおけるタバコ税収額の推移です。

出典:Databoksより弊社作成(閲覧日:2020年9月8日)
https://databoks.katadata.co.id/datapublish/2019/09/16/tren-kontribusi-cukai-hasil-tembakau-terhadap-penerimaan-negara

 

インドネシア国内のたばこ製品による税収は増加傾向にあり、2018年時点では物品税収額159.6兆ルピアに対し、タバコ製品の税収が152.9兆ルピアと、物品税収全体の95.8%をタバコ製品の税収が占める結果となりました。

2020年1月には、インドネシア政府はタバコ製品の消費税を23%増税、またタバコ製品の小売販売価格を35%値上げしたため、2020年のタバコ製品の税収は過去最高の171.9兆ルピアを目標としています。

近年インドネシアでも健康意識が徐々に高まっていることや、上述のVapeを禁止する取り組みの提案、そしてコロナ重症化を防ぐための禁煙の呼びかけなど、今後インドネシアでは禁煙率が徐々に低下する可能性があると指摘する専門家もおり、またインドネシア国内で禁煙が広まることによって大幅な税収減とならないよう、今後のタバコ税の更なる増税も検討するべきであると、インドネシア医師会や大学研究者などが述べています。

参考URL:https://republika.co.id/berita/qaotw5423/pandemi-covid19-pemerintah-diharapkan-naikan-cukai-rokok

弊社では、インドネシア保健省へのヒアリングや、健康・保険分野での調査実績が多数ございます。

現在はインドネシアへの渡航が制限されておりますため、調査代行やオンラインでのヒアリング実施にご興味がある方は、是非お気軽にお問い合わせください。

 

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Tel: 03-5302-1260

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