【コラム】バリの公共交通機関「トランスメトロデワタ」最新情報と今後の展望

日本でもリゾート地として有名なバリ島ですが、実は長らく公共交通機関が十分に発達していない状況にありました。そのため、観光や商談でバリ島に行かれた方の中には、移動のために毎回タクシーを拾ったり、車をチャーターしたりした記憶のある方も多いのではないでしょうか。

しかし、そうした状況を変えるべく、2022年9月に新たに作られたのが、バス「Trans Metro Dewata」(トランスメトロデワタ)です。今回の記事では、トランスメトロデワタの基本情報と、運行開始から3年がたった現在の交通事情についてご紹介します。

トランスメトロデワタとは

画像出典:TemanBus (https://temanbus.com/bali/)

トランスメトロデワタとは、2020年9月7日からバリ島、特にデンパサールを中心に、空港、クタ、サヌール、タバナン、そしてウブドをつなぐルートで運行されている路線バスです。現在バリ島では128台の車両が走行しています。

トランスメトロデワタは2020年にインドネシアの運輸省が主導するBuy The Serviceプログラムとして運航が開始されました。Buy The Service Program、通称BTSは、政府が事業者に補助金を出して公共交通機関を新たに開発するという内容のプログラムで、バスの新規開発交通管制の高度化を図る統合交通システムを開発することで、自家用車やバイクの使用を減らす狙いがあります。公共交通機関が整備されていないことで自家用車の利用が増加、渋滞や大気汚染につながっている、という課題の解決につながることが期待されています。
現在、バリ島のデンパサールのほか、バリ島以外のメダン、スラカルタ、ジョグジャカルタ、パレンバン、バンドン、スラバヤ、マカッサル、バンジャルマシン、バニュマスなどの各地方都市でBTSによる路線バスが運行されています。

バリのトランスメトロデワタの基本情報は以下の通りです。

運賃:全線1回の乗車につき4,400ルピア (約42円) ※1ルピア=0.0095円として計算

同一車線内なら、どこで乗ってもどこで降りても1回の乗車あたり約40円ほどで乗車が可能です。(高校生以下と障がい者は無料で乗車可能)
乗車距離に応じて運賃が変わる日本とは仕組みが異なりますが、実はバリ島に限らず、ジャカルタやそのほかの都市の公共交通機関でも、乗車1回あたりで運賃を支払う形態は一般的です。インドネシアのタクシーの初乗り料金が7,000~15,000ルピア(約66~142円)ほどであることを鑑みると、かなり安く移動が可能であることが分かります。

定員:中型バスは定員 40 名で座席 20 席、大型バスは定員 60 名で座席数 30 で、それぞれに 優先エリアがあります。

支払方法:電子マネーカードもしくはQRコード決済のみ

インドネシアでは、電子マネーやQRコード決済の使用が進んでおり、トランスメトロデワタを含む多くの公共交通機関でキャッシュレス決済のみを受け付けています。

電子マネーカードは日本で言うところのSuicaのようなもので、乗車時に運転席そばのカードリーダーにタッチして支払います。
カードはインドネシアの各銀行が発行しており、コンビニや銀行で購入が可能です。例としてはMandiri銀行のe-money、BRI銀行のBrizzi、BNI銀行のTap Cash、BCA銀行のFlazzなどが挙げられます。写真はジャカルタの路線バスtransjakarta(トランスジャカルタ)で発売されているe-moneyのカードの一例です。写真のものはトランスジャカルタ用のデザインですが、こうした電子マネーカードは全国の公共交通機関で共通して使
用が可能です。


電子マネーカードは、インドネシア各公共交通機関の駅、もしくはIndomaretなどのコンビニ、オンラインでチャージできます。

QRコード決済もインドネシアで非常にメジャーな決済方法の一つです。トランスメトロデワタでは、カードリーダーと同様に運転席近くにQRコードが設置されており、電子決済アプリで読み込んで支払いを行います。
インドネシアでは、ショッピングモールやレストランはもちろん、小規模な商店や会社の食堂などでもQRコードの印刷されたボードが置いてあることが多く、普及率がかなり高いことが伺えます。メジャーなアプリケーションとしては、オンライン配車・デリバリーアプリGrabの系列のOVOや、同じく配車・デリバリーアプリGojekの系列のGo-Pay、通販サイトのShopeeの系列のShop-payなどが挙げられます。
ただ、こうしたアプリにトップアップ(残高の追加)を行うためには、インドネシアの電話番号でアカウントを作成したりインドネシアの銀行口座からのチャージが必要になったりすることも多くあります。そのため、ローカルの人々や、長期滞在で現地に口座を作る人が主に活用することが多いです。Go-payなどいくつかのアプリケーションはIndomaretなどのコンビニで現金からのチャージも可能ですが、現金でチャージの場合電子マネーカードと手順や手間はあまり相違ないといったところでしょう。

運行ルート・スケジュール:計5ルートで10分おきに運行

2023年現在、トランスメトロデワタはデンパサールを中心に5路線が整備されており、各路線にはKoridor1~5として路線番号があてられています。Koridor(コリドー)とはインドネシア語で「廊下・通り」を意味し、ここでは路線という意味で使われています。
時刻表はなく、交通状況にもよりますが各路線10分おきの出発とされています。

画像出典:s.id/TransitMapBali

①Koridor1 (画像:赤)
Sentral Parkir Kuta(クタセントラルパーキング)~ Terminal Persiapan (タバナン)
②Koridor2 (画像:紺)
Terminal Ubung (ウブンバスターミナル)~Bandara Ngurah Rai (デンパサール空港国内線ターミナル)
③Koridoe3 (画像:紫)
Terminal Ubung (ウブンバスターミナル)~Matahari Terbit (マタハリタービット)
④Koridor4 (画像:青)
GOR Ngrah Rai (GORングラライ)~Monkey Forest(モンキーフォレスト)
⑤Koridor5 (画像:緑)
Sentral Parkir Kuta(クタセントラルパーキング)~Politeknik Negeri Bali (国立バリポリテクニック)

どの路線も午前4時半ごろから運航を開始し、それぞれ最終便のハブ駅出発時刻は、早い順にKoridor5が15時クタ発、Koridor1が17時50分クタ発、Koridor4が18時GORングラライ発、2・3が18時53分ウブン発となっています。
東京のバスの最終便が大体22~23時頃であるのと比較すると若干早めの終バス時刻といえます。
デンパサールなどを中心とした地元住民のエリア、空港乗り入れやモンキーフォレストのあるウブドなどどちらにも接続していますが、それぞれの接続が複雑でバス停の数も多いので、どちらかというと地元住民や時間に余裕のある観光客を中心に利用されているようです。

参考:https://denpasar.kompas.com/read/2022/07/06/170512178/trans-metro-dewata-harga-tiket-rute-dan-jadwal-keberangkatan-teman-bus?page=all (最終アクセス:2023/10/18)

トランスメトロデワタの現在と今後の展望

2020年に自家用車やバイクの使用を減らすことを目的として運行開始されたトランスメトロデワタですが、三年が経ち、様々な課題も見えてきているようです。

とりわけ、需要の少なさは早急に解決が求められる課題の一つです。
2022年のニュースによれば、路線によって需要に差があり、最も利用されているKoridor1(クタセントラルパーキング~タバナン)は乗車率が約60%である一方、Koridor3(ウブン~マタハリタービット)の乗車率は30%に留まりました。
トランスメトロデワタの利用が進まない理由としては、インドネシア・バリでは車社会が根強く、地域住民への周知が遅れているほか、運行開始直後から新型コロナウイルスのパンデミックが始まり、住民はもちろん当初狙いに含まれていた外国人観光客への普及が進まなかったことが挙げられます。普及が進まないうちに時間が経ってしまったため、外国人観光客向けの電子マネーカードを購入できる場所が不足していることも問題視されています。

その他にもバリ島特有の問題として、大規模な宗教儀式やイベントなどによるルートの閉鎖や迂回などに関する情報の周知不足なども指摘されており、アプリケーションを通じた最新情報の配信などが進められています。これは日ごろから儀式を重要視しているバリならではの事情と言えます。ただ、宗教が生活の中心にあるバリの社会では冠婚葬祭などでも一部の道を封鎖することがあり、どこまで細かく情報をアップデートできるかは不透明です。

また、トランスメトロデワタの運転手の交通ルールの教育も求められています。2022年には、トランスメトロデワタとバイクが衝突してバイク運転手が死亡する事故が発生しました。
バリ島はもともと交通ルールがあまり整っておらず、運転手の自己流と慣れで運転していることも多いのが実情です。運転手を適切に教育し、公共交通機関から交通ルールの遵守を進めていくことでバリ島の交通事情も改善していくことが期待されています。

バリ州の政治家らは、安価で便利な交通機関としてトランスメトロデワタの使用を促進することに取り組んでおり、今後、地元住民にも観光客にもより使いやすい交通機関となっていくか注目されています。

参考:https://www.detik.com/bali/berita/d-6483244/bus-trans-metro-dewata-masih-sepi-peminat
https://www.tvonenews.com/berita/150355-ditjen-hubdat-dan-pemprov-bali-evaluasi-pelaksanaan-trans-metro-dewata?page=3
https://ringtimesbali.pikiran-rakyat.com/news/pr-284992723/kecelakaan-bus-trans-metro-dewata-dan-sepeda-motor-korban-tewas-di-tempat?page=1
(最終アクセス:2023/10/18)

今回の記事では、2020年から運行されているバリ島の公共交通機関である路線バストランスメトロデワタについて、基本情報と現在の交通事情に注目してご紹介しました。
まだまだ普及には課題の残るトランスメトロデワタですが、支払い方法のキャッシュレス化など先進的な部分も見られ、今後周知が進めばますますバリ島の人々のメジャーな交通手段の一つとなっていくことも期待されます。
弊社では、インドネシアの公共交通機関やバス会社に関する最新情報や様々なテーマに関する視察代行、オンラインでの調査代行なども承っております。

ご興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせ下さい。

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