【コラム】今話題の「ワルン・ピンタール」視察
近年、インドネシアでは画期的なビジネスモデルを提供するスタートアップ企業の活躍が目立っています。
以前、弊社のウェブサイトで「EC市場で注目されるインドネシアの企業」の記事でもご紹介しましたが、それらのサービスを利用する人々は増加し、日常生活に変化がもたらされている様子が目に見えて分かるようになりました。
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新たなECサービスの展開で今後大きく変化することが期待される点では、小売市場も例外ではありません。
インドネシアでは伝統的小売りとして「ワルン/Warung (屋台)」が存在することをご存知の方も多いかと思いますが、今そのワルンも変革を遂げ、ITの活用が取り入れられた「ワルン・ピンタール(Warung Pintar)」の数が増加しています。
ワルン・ピンタールは伝統的店舗の売店が新しく生まれ変わった新しいビジネスモデルです。
”Warung”はインドネシア語で「屋台」、”Pintar”は「賢い、利口」という意味であり、「ワルン・ピンタール(Warung Pintar)」はIT技術を導入した「スマート屋台」を意味しています。
本記事では弊社スタッフがジャカルタでワルン・ピンタールを視察した様子を報告致します!
インドネシアの小売市場について
それではまず、小売市場の業界構造から見ていきましょう。
インドネシアの食品流通経路には上図の通り、伝統的流通と近代的流通の2つのルートがあります。
伝統的店舗は家族経営型の小規模の店舗であり、インドネシアでは全体の9割以上がこの種類の店舗となっています。
一方、近代的店舗はスーパーやミニマーケットを含む大型の店舗です。
【伝統的流通】
・卸売業者:製品を購入して小売業者に再販売するビジネス単位
・小売業者:商品を大口で購入し、個人客に販売する業者
・食料品店:特定の種類の商品のみを販売する小売店
・売店:雑多な商品を低価格かつ最低限のサービスで販売する店
写真:売店
【近代的流通】
①スーパーマーケット:
様々な種類の食品や若干の食品以外の品をセルフサービスの消費者システムで販売する小売店
②ハイパーマーケット:
多様な製品を大量に50,000種類以上販売する小売店
③ミニマーケット:
あらゆる種類の商品や食品を販売する食料品店の一種で、システムはスーパーマーケットと似ているが、規模は小さい
④コンビニ:
限定商品を販売する小売店。便利な場所で店舗展開されており、営業時間は長い
写真:ハイパーマーケット
インドネシアにおいて、現代的流通経路は外資系企業の参入もあり、拡大を続けていますが、未だに伝統的流通経路が店舗数、利益共に現代的流通経路を大幅に上回っています。
インドネシアの小売市場に進出するためには、ローカルの売店など伝統的流通経路見逃すことはできません。
伝統的店舗に新しいビジネスモデル
冒頭でご紹介した通り、ワルン・ピンタールは、従来の伝統的な小売りがIT技術を導入して変革を遂げた新しいスタイルです。
ワルン・ピンタール
Wi-Fiの利用や携帯電話のチャージができるようになっており、また横には冷蔵庫も設置されています。
ワルン・ピンタールは2017年創立のスタートアップにも関わらず、首都圏を中心に既に1,000店舗以上に拡大しています。
以下の地図より、すでに首都圏を中心に店舗が展開されていることが分かります。
出典:ワルン・ピンタールホームページ(https://warungpintar.co.id/)
ワルン・ピンタールの仕組み
今回の弊社スタッフがインドネシア視察中にワルン・ピンタール社事業開発部のDista氏から、ワルン・ピンタールの仕組みについてヒアリングを行いましたのご紹介いたします。
写真中央がワルン・ピンタール社 Dista氏
まず、ワルン・ピンタールの経営について、オーナーになりたい場合はウェブサイトかアプリケーションから登録する必要があります。
ワルン(屋台)は無料でレンタルすることができますが、出店のために350×250cmの広さのスペースが必要となります。このサイズは通常のワルンより大きく、テレビやWi-Fiのような重量のある機器の設置が必要になるからだと考えられます。
ワルンのオーナーは家族や知人などの身近な人と交代しながら経営ができ、開く場所については会社の前など人通りの多いところに限定されています。
次に、日々の運営については、タブレットのアプリを用いて売れ筋や収益を確認できるようになっており、足りないものを発注すれば配送料無料で翌日には届くという仕組みなので、オーナーにとっては非常に便利です。
商品は食品・スナック菓子のマヨラグループ(Mayora Group)、Teh botolなど飲料のソスロ(Sosro)、日用品のユニリーバなどの大手メーカーから直接配給してもらえるため、通常よりも安く仕入れることが可能です。商品は約370種類あります。
ワルン自体が新しいこともありますが、伝統的なワルンと比較すると清潔感があります。
また商品の品ぞろえも充実しているような印象です。一方、インドネシアのおやつであるクルプックが直にケースに入っていたり、注文を受けたコーヒーを作る際に魔法瓶のお湯を使ったりと、伝統的なワルンらしさもしっかり残っていました。
ワルンにはWi-Fi、充電器、冷蔵庫、広告用テレビ、防犯カメラが備えられており、支払いは現金かアプリでできるようになっています。
タブレットを使用して注文内容を入力している様子
出典:ワルン・ピンタールホームページ(https://warungpintar.co.id/)
ワルン・ピンタールは「ポイント・オブ・セールス」と呼ばれる制度を導入しており、例えば電話料金の支払いや広告設置を行うと、そのワルン・ピンタールにポイントが加算される仕組みとなっており、ポイントが溜まれば最終的にはテレビなどの商品と交換することが可能となるため、オーナーのモチベーション向上につながると考えられます。
先ほどの地図から、ワルン・ピンタールの位置をすぐに確認することができ、バイクタクシーの運転手にとって必需品であるスマートフォンの充電ができるため、バイクタクシーの運転手が客待ちの時間に利用することも多く、場所によってはバイクが所狭しと並んでいます。
ワルンの上には広告用の巨大なテレビが設置
写真:コワーキングスペース前のワルン・ピンタール
元々、ワルンはオーナーや常連客同士が顔を合わせるコミュニケーションの場ですが、Dista氏曰く、そこに最先端のテクノロジーが導入され、若い世代が加わることで進化に成功しました。
ワルン・ピンタールがいかにワルン運営の効率化を図り、各オーナーが働きやすい環境を作りだしているか、そしてユーザーを増やす工夫がなされているかが分かりますね。
ワルン・ピンタールは今非常に注目を集めており、ベンチャーキャピタルからの資金調達なども行っています。
まとめ
上述の通り、伝統的店舗はインドネシアの市場全体の9割以上に及ぶため、今回の伝統的店舗への新しいビジネスモデルの導入は、小売市場全体の大きな変革となる可能性を秘めています。
既にインドネシアで普及している他のITサービスと同様、ワルン・ピンタールも広く浸透するかもしれません。
今後もインドネシアの目覚ましい発展からは目が離せそうにありませんね!
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