【コラム】インドネシアEC市場のポテンシャル
「Gojek」や「Grab」などの配車アプリ業者が急速に拡大し、都市部を中心として、緑のジャンパーを羽織った運転手が二輪車を走らせている姿も見慣れた光景となってきました。
また、インドネシアのテレビ広告ではEC関連の内容が放映されることも急激に増えてきています。
実際に、PPROの『支払いとEコマースに関する報告書、High Growth Markets 2018』によると、インドネシアのEC市場は今年(2018年)には78%の成長が見込まれるなど、本報告書で挙げられた10か国のうちで最も高い数字となっています。
これほどまでに成長が期待されているインドネシアのEC市場ですが、他の東南アジア諸国と比較してなぜこれほど将来性が期待されているのか探っていきましょう。
EC市場拡大の理由とそのポテンシャル
現在インドネシアで急速にEC市場が拡大している理由としては主に下記の3つのポイントが挙げられます:
2 . インターネット・スマートフォンが普及している
3 . インターネットに慣れている若い世代の人口が多い
1 .銀行口座保有率が低い
先進国では銀行口座の保有率が高い一方で、東南アジア諸国では未だに銀行口座を持たない人も多いという現状があります。
インドネシアは島国であり、特に地方部に行けば行くほどこの傾向が顕著となります。
その理由は、銀行側が地方部で支店を開設し、運営するために費用がかかることが挙げられます。
また、都市部を含めた国全体の傾向としても人口の中で所得の低い40%は特にこの傾向が強く現れます。
World Bank, Global Financial Inclusion Index
(http://databank.worldbank.org/data/reports.aspx?source=1228)のデータより弊社作成
上記のグラフによると2011年から2017年にかけて、インドネシアにおける銀行口座の保有率は19.6%から48.9%に増加していることが分かりますが、未だ50%には達していません。
このことからも、銀行口座を持たない半数の人にとっては、クレジットカードを使用してオンラインショッピングを行うことが難しいことが分かります。
2. インターネット・スマートフォンが普及している
HootsuiteとWe Are Socialが公開した2018年度デジタル利用状況に関するレポートによると、インドネシアにおけるインターネット普及率は50%、モバイルユーザーの割合は67%となっています。
インドネシアは世界第4位の人口を抱えているため、インターネット及びスマートフォンの普及により既にアジアでも有数のデジタル大国として成長を見せています。
Hootsuite & We Are Social, Digital in 2018: Asia Pacific
https://hootsuite.com/resources/digital-in-2018-apac
3 インターネットに慣れている若い世代の人口が多い
高齢化が進行している日本とは対極に、インドネシアでは人口の大部分を若い世代が占めています。
彼らは小さい頃からインターネットやスマートフォンが普及していたため、スムーズにオンラインサービスを使いこなすことができる点も、市場の成長の要因となっているように考えられます。
また、特にミレニアム世代は高級車やブランド製品を購入することよりも、「体験」にお金を費やすことに興味を示す傾向にあるようです。
近年成長しているオンラインショッピングサービスやオンライン旅行サービスは彼らのライフスタイルに合ったものであると言えるでしょう。
インドネシア発のEC主要企業
Gojek(ローカル、配車アプリ事業者)
企業HP: https://www.go-jek.com/
(画像:Go-Jekホームページより)
Go-Jekは2010年にNadiem Makarim氏によって設立された配車アプリ事業者です。
元々街中でお客さんを載せている姿が見られたOjekというバイクタクシーの運転手を中心に、ドライバーとして登録してもらい、アプリを通じて必要な時にバイクタクシーを呼べるシステムを開発しました。
電子決済が可能で気軽に利用できる点が人気となっています。
2010年時点では登録運転手が20人、活動地域がジャカルタのみでしたが、
2017年には登録運転手が約85万人、活動地域が約50の市と県にまで膨らみました。
現在では乗客の輸送だけでなく、宅配サービス、家事・掃除手配サービスへと事業を拡大させています。
また、ベトナムやシンガポールなどインドネシア国外への進出も進めています。
Tokopedia(ローカル、オンラインショッピング事業者)
企業HP:https://www.tokopedia.com/
(画像:Tokopediaホームページより)
Tokopediaは2009年にWilliam Tanuwijaya氏とLeontinus Alpha Edison氏によって設立され
たオンラインショッピング事業者です。
Tokopediaは品揃えが多いため、日用品や家具、家電、医薬品まで幅広く探すことができるため、インドネシア版”Amazon”として人気を誇っています。
また、配達地域が広いことや手軽に商品を注文することができ、インドネシアで最も市場の大きいECサイトに成長したと言われています。
2018年10月19日のTech in Asia配信のニュース( https://id.techinasia.com/tokopedia-ovo-tutup-tokocash )によると、Tokopediaは大手財閥のLippo Groupが提供する電子決済システム”OVO”を取り入れることとなり、更なる拡大が期待されます。
Bukalapak(ローカル、オンライン取引プラットフォーム)
企業HP:https://www.bukalapak.com/
(画像:Bukalapakホームページより)
BukalapakはAchmad Zaky氏とNugroho Herucahyono氏により2010年に設立されたオンライン取引プラットフォームです。
利用者はこのウェブサイトに出品し、気軽に商品を販売することができます。
2014年にはモバイルアプリのサービスも開始され、より手軽に商品の出品や購入ができるようになりました。
高水準のカスタマーサポートサービスやスムーズなオンライン取引により信頼性の高さも維持しています。
Bukalapakは現在、インドネシア地方部の伝統的市場とも提携し、利用者の増加と活動地域の拡大を狙っているため、さらなる展開が見込まれています。
Traveloka(ローカル、オンライン旅行事業者)
企業HP:https://www.traveloka.com/en/
(画像:Travelokaホームページより)
Travelokaは2012年に設立されたオンライン旅行事業者です。
現在はインドネシアで最も規模が大きく信頼性の高いオンラインチケット代理店へと成長しました。
特に国内旅行に力を入れており、フライトやホテルの手配のみならず、鉄道、バスのチケットも購入することが可能であり、目的地の観光情報もウェブサイトから確認できるようになっています。
近年ではコンサートやテーマパークのチケットも購入できるようになっており、従来の旅行業者と差別化を図ることに成功しています。
インドネシアにおける旅行ブームも相まって、Travelokaの更なる成長が期待できます。
今後の成長
先ほど紹介した4つの企業は急成長を遂げ、すでにユニコーン企業の仲間入りを果たしています。
現在、インドネシアではローカルのスタートアップ企業が増加中で、外国企業も現地のEC事業者と提携し市場に参入しているため、今後のEC市場の活性化には大いに期待できることでしょうか。
インドネシア総研では現地パートナー候補の紹介、交渉、現地法人の設立支援を含めたM&A支援からマーケティング戦略立案までのサポートを行っております。
また、弊社はインドネシアの大手EC事業者数社との繋がりや、代表のアルビーがインドネシア商工会議所の日本投資部門長を務めております関係で、EC業界におけるネットワークもございます。
弊社代表のインドネシア商工会議所部門長就任式についてはこちら。
インドネシアのEC市場の調査や進出をご検討の方は、弊社までどうぞお気軽にご連絡ください。
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