【コラム】インドネシアのファストフード事情
インドネシアの人々は外食を好む傾向から、外食産業は非常に注目されています。
中でも、ファストフードはインドネシア人の生活に広く浸透しており、インドネシア都市部のみでなく地方でも多くのファストフード店を目にすることができます。
世界的に有名なファストフードチェーンでみると、2017年におけるインドネシアのマクドナルドの店舗数は180店舗以上、KFC(ケンタッキーフライドチキン)が600店舗以上となり、いずれも今後店舗数を増やしていく計画を発表しています。
インドネシアでは子供の誕生日など何かお祝いごとでファストフード店を利用することも珍しくありません。
今回は、そんなインドネシアのファストフード事情についてご紹介します。
ファストフードの売れ行き
インドネシア人の調理済み食品への支出は増加傾向にあるようです。インドネシア中央統計庁によると、全体支出のうちに調理済み食品が占める割合が、1999年には9.48%だったのが、2017年には約2倍の17.5%まで増加しています。
出典:インドネシア中央統計局、「Persentase Pengeluaran Rata-rata per Kapita Sebulan Menurut Kelompok Barang, Indonesia, 1999, 2002-2017
(1999,2002-2017年のインドネシアにおける商品グループ別出費割合)」より弊社作成(閲覧日 2019年4月12日)
https://www.bps.go.id/statictable/2009/06/15/937/persentase-pengeluaran-rata-rata-per-kapita-sebulan-menurut-kelompok-barang-indonesia-1999-2002-2017.html
特に、インドネシアにおけるファストフードの代表格であるKFCは、インドネシアでの収益をここ5年間で大きく伸ばしています。
出典:PT FAST FOOD INDONESIA TBK “Laporan Tahunan 2017” (株式会社ファスト・フード・インドネシア “2017年年次報告書”)より弊社作成(閲覧日 2019年4月12日)
https://www.idx.co.id/StaticData/NewsAndAnnouncement/ANNOUNCEMENTSTOCK/From_EREP/201804/3e033631cc_52ffbcbed0.pdf
https://ekonomi.kompas.com/read/2018/03/05/164050626/mcdonalds-indonesia-targetkan-15-restoran-baru-berdiri-tiap-tahun
また、KFCやマクドナルド以外のファストフード店も徐々に売り上げを伸ばしています。以下、一部ご紹介いたします。
Pizza hut
2018年の売り上げは2017年に比べ、16,6%も上昇しています。2017年では3,02兆ルピアに対して2018年は3,57兆ルピアにも売り上げが伸びています。
出典:Katadata.co.id 2019 Jan 1. “Naik 16%, Pizza Hut Raup Pendapatan Rp 3,5 T pada 2018”(Pizza Hutの売り上げが16%増)
https://katadata.co.id/berita/2019/04/01/ditopang-segmen-makanan-pizza-hut-raup-pendapatan-rp-35-t-di-2018(閲覧日 2019年4月12日)
J.CO Doughnuts and Coffee
2005年に設立されたインドネシアのドーナツチェーン店であるJ.COドーナツはインドネシア国内に260店舗以上展開しており、シンガポール、フィリピン、香港など海外進出も果たしています。
インドネシア国内では年内に30~40店舗増やす計画であるとしています。
出典:Kompas.com,”JCO Donuts bakal Buka 40 Gerai Baru Tahun Ini(JCO年内に40店舗新規オープンへ)”
https://ekonomi.kompas.com/read/2019/01/23/180900426/jco-donuts-bakal-buka-40-gerai-baru-tahun-ini(閲覧日 2019年4月12日)
CFC(California Fried Chicken)
CFCは1988年に創立したインドネシアのファストフード店で、インドネシア国内では人気が高くインドネシア全土に180店舗以上展開されています。
2015年から2017年の3年間で売り上げが13.3%伸びています。
出典:”aporan tahunan 2017 “Progress Acceleration”
http://www.cfcindonesia.com/media/kcfinder/docs/financial_report/ptsp-annual-report-2017.pdf(閲覧日 2019年4月12日)
日本との違い?
日本と少し異なる部分としては、インドネシアではマクドナルドの主なイメージはハンバーガーではなく、フライドチキンを提供するお店、というイメージがより強い傾向にあるようです。
フライドチキンはインドネシア人に非常に好まれており、CFC (California Fried Chicken)や DFC (Dashyat
Fried Chicken) など、フライドチキンを販売するファストフードが多く見受けられます。
インドネシア人の好みに合わせたメニュー
インドネシアで販路を拡大しているファストフードは、どのような販売戦略をとっているのでしょうか。
日本とインドネシアのファストフード店を比べた際の大きな違いとして、まず、提供されるメニューが挙げられます。
日本では、バーガー系のメニューを豊富に取り揃えられている一方で、上述の通りインドネシアではフライドチキンが非常に好まれているため、例えばマクドナルドでフライドチキンが販売されていたり、お米を好むインドネシア人のためライスとフライドチキンのセットも提供されています。
KFCではライスとフライドチキンのセットが5つほど用意されています。
引用:KFC Indonesiaホームページより http://www.kfcku.com/foodmenu
この他、“Oriental Bento“という、ライスの上にフライドチキンが載せられたメニューも存在します。
引用:KFC Indonesiaホームページより http://www.kfcku.com/foodmenu
↑弊社スタッフがインドネシアでKFCを食べた際の写真。インドネシアで食事をする際に欠かせないサンバルもきちんと用意されている。
また、マクドナルドでは、主力メニューとして紹介されている全17品のうち、3品がライスのセットになっています。
引用:Mcdnald’s Indonesiaホームページより https://mcdonalds.co.id/menu/menu-favorit/andalan
この他、てりやきチキンライスやプルコギライスなども用意されているようです。
引用:Mcdnald’s Indonesiaホームページより https://mcdonalds.co.id/menu/menu-favorit/andalan
この背景には、インドネシア人のコメ食文化があります。インドネシア農業省によると、2017年のインドネシアにおけるコメの総消費量は3347万トンにものぼります。
出典:Kementerian Pertanian “Optimis Produksi Beras 2018 , Kementan Pastikan Harga Beras Stabil”
(農業省 “2018年のコメ生産は楽観的、農業省はコメ価格の安定を確認”) http://www.pertanian.go.id/home/?show=news&act=view&id=2614
インドネシアのコメ事情については過去に弊社コラムでご紹介したことがありますのでこちらの記事も併せて是非ご覧ください。
また、ライスとフライドチキンのセットは、バーガー系セットに比べて比較的安い価格設定となっています。ファストフード店はライスのセットを取り揃えることで、インドネシア人にとって手頃な価格帯の商品を提供しているようです。
マクドナルドのPanas1(ご飯とフライドチキン、ソフトドリンクのセット)は約2万5000ルピア(約200円)と、ワルン(屋台)やルママカン(個人経営の小規模レストラン)で同じくらいの量を注文したときの値段とほぼ同じです。
シェアリングエコノミーとの融合
インドネシアで拡大を続ける配車サービスのフード配送ビジネスへの参入も、近年のファストフードの勢いに拍車をかけていることが考えられます。
GrabやGojekといったインドネシアの2大配車アプリでは、特定のレストランから指定した目的地まで、注文したメニューを届けてもらうサービスも利用できます。
また、GO-PAY(GOJEKの電子マネーサービス)では、2019年2月から2020年1月までマクドナルドのデリバリーのディスカウントも行なっており、マクドナルドの商品を、GOJEKを通じて購入している人が多いことがうかがえます。
GO-PAYでのマクドナルドの商品のディスカウント
引用:GOJEKホームページより https://www.go-jek.com/blog/promo-mcd/
関連する過去のコラムも併せて是非ご覧ください。
ファストフードは、すでにインドネシア人にとって欠かせない食事の選択肢の一つとなっている一方で、インドネシアのファストフード産業に参入する際は、インドネシア人の食事習慣や消費金額など、様々な日本との違いを考慮しなければなりません。
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