【コラム】インドネシア女性の社会的地位
皆様はインドネシアの女性というとどのようなイメージをお持ちでしょうか。インドネシアはイスラム教徒が多数を占めるため、ヒジャブ(スカーフの様なもの)を着用したイスラム教徒の女性のイメージが強いかもしれません。今回のコラムでは、インドネシアの女性たちの社会における地位を教育水準、就業状況へのフォーカスを通じてご紹介いたします。
インドネシアのジェンダーギャップ指数
2022年に発表された世界経済フォーラムの「The Global Gender Gap Report 2022」によると、インドネシアのジェンダーギャップ指数は前年比+0.009で全世界92位でした。同報告書では、日本のジェンダーギャップ指数ランキングは116位であり、総合的にはインドネシアは日本に比べるとジェンダーギャップが少ない国といえます。
【2022年のインドネシアの分野別ジェンダーギャップ指数】
(出典:世界経済フォーラム「The Global Gender Gap Report 2022」より弊社作成)
インドネシアの分野別ジェンダーギャップ指数では、経済と政治の分野では日本より順位が高く、女性の就業面や政治参加に関しては日本よりジェンダー平等が進んでいるといえます。健康面では、2021年の世界保健機関(WHO)のデータによると、インドネシアの
妊産婦死亡率は人口10万人あたり177人で、世界第50位であることなどから、妊産婦への医療などで多くの課題があることが分かります。
【アジア太平洋地域のジェンダーギャップ指数ランキング】
(出典:世界経済フォーラム「The Global Gender Gap Report 2022」より弊社作成)
アジア太平洋地域のジェンダーギャップ指数においては、インドネシアは第10位であり、日本は最下位です。インドネシアと近似したスコアの国はベトナムやカンボジアなどの東南アジア諸国が並んでいます。
【2020年のインドネシアの州別ジェンダー開発指数】
(出典:「Pembangunan Manusia Berbasis Gender 2021」より弊社作成)
健康、教育、経済面などの側面を考慮して算出されたジェンダー開発指数は、インドネシア全体では91.06です。ジャカルタやジョグジャカルタなどの大都市のある地域では数値が高く、カリマンタン島やパプアなどの農村部の多い地域ではこの指数は低い数値となっています。
参考:https://www.kemenpppa.go.id/index.php/page/read/24/3791/pembangunan-manusia-berbasis-gender-2021
https://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2022/
インドネシア女性の教育水準
【識字率】
(出典:「Profil Perempuan Indonesia Tahun 2021」より弊社作成)
インドネシアにおける識字率は、男女別・地域別ともに9割を超えています。州別に見ると15歳以上の人口において最も識字率が高かった州は北スラウェシ州でした。北スラウェシ州の識字率は99.79%で、女性が99.76%、男性が99.82%でした。次いで、ジャカルタ特別州とマルク州の識字率が高くなっています。一方、識字率が全国平均より低い州は13州あり、識字率が最も低い州はパプア州の77.9%で、女性が72.69%、男性が82.49%です。
【就学率】
(出典:「Profil Perempuan Indonesia Tahun 2021」より弊社作成)
就学率を見ると、小学校は男女ともに小学校の就学率は95%を超えています。中学校以降の就学率では男女が逆転しており、女性の就学率が高くなっているのが特徴的です。そして高等学校、高等教育以降の就学率に至っては、女性の就学率の方が男性のそれよりも2ポイント以上高くなっています。また、都市部と農村部の間には教育格差があり、すべての教育段階において男女ともに都市部の就学率の方が農村部のそれよりも高く、とりわけ高等教育においては都市部と農村部の就学率に大きな格差があります。また、インドネシアの高等教育において、科学・技術・工学・数学分野の修了者は男性が33.91%であるのに対して、女性は29.41%であり、理系分野への女性の進学が低い傾向にあることが分かります。
インドネシア女性の就業状況
【就業状況】
(出典:「Profil Perempuan Indonesia Tahun 2021」より弊社作成)
(出典:「Profil Perempuan Indonesia Tahun 2021」より弊社作成)
労働力率を見ると、インドネシアでは都市部および農村部ともに男性より女性の労働力率は低い傾向にあります。農村部の方が男女ともに都市部よりも労働力率が高い傾向にあることが分かります。また、週当たりの活動内容を見てみると、都市部・農村部ともに女性が家事に活動時間を割いている割合が高い傾向にあります。とりわけ都市部の女性の活動における家事の割合が高いことが分かります。インドネシアにおいても家事は女性が担うものという考え方が根強いことがこのデータから分かります。
(出典:「Profil Perempuan Indonesia Tahun 2021」より弊社作成)
平均月収は、男女ともに都市部の方が高く、都市部・農村部ともに男性と女性の賃金格差が存在することが分かります。農村部の女性の平均月収は男性の7割程度であり、都市部では女性の平均月収が男性の8割程度であることから、農村部の男女の賃金格差がとりわけ顕著であることが分かります。また、週に40時間以上勤務する女性のフルタイム勤務の割合は農村部では26.46%であるのに対して、都市部では41.24%となっていることから、農村部ではフルタイム勤務に従事する女性が少ないことが分かります。
参考:https://www.kemenpppa.go.id/index.php/page/read/26/3813/profil-perempuan-indonesia-tahun-2021
今回のコラムでは、インドネシア女性のジェンダー指数、教育水準、就業状況を都市部、農村部の比較を交えてお伝えしてきました。インドネシアは世界的なジェンダー指数においては日本よりもジェンダー平等の指数が高めであるとされていますが、男女の賃金格差や家事労働の分担が女性に偏っているなどの状況から、インドネシア政府もSDGsの実現に向けてジェンダー平等に向けた取り組みを行っています。インドネシアでの事業進出をご検討の皆様、そしてインドネシアで従業員を雇用されたいとお考えの皆様におかれましては、職場でのジェンダー平等の視点や考え方が不可欠です。また、弊社はインドネシアでの専門家や政府機関との深い連携のもと、インドネシアの男女共同参画や女性の雇用に関する法規制や慣習などの調査を実施させていただくことが可能です。SDGsや男女共同参画に配慮したビジネスにご興味をお持ちの方は是非弊社インドネシア総合研究所まで、お問合せ下さいませ。
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