ボヨラリ地域の農業企業と連携しジャポニカ米の無農薬栽培に着手——オーガニック農業分野での自社事業化に向けて

3分でわかる!この記事のポイント
- インドネシアでもジャポニカ米は作れるの?
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はい。インドネシアでは前例が少ないながらも、現地農家の知恵と日本製酵素を活用することで、完全無農薬・オーガニック栽培による試験収穫に成功しています。
- なぜインドネシアでジャポニカ米を作るとビジネスになるの?
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インドネシアの一般的な主食米と比べて約3〜4倍の価格で流通するプレミアム品であり、さらにオーガニック認証が加わることで「希少性×オーガニック」のダブルプレミアムによる高いリターンが見込めるためです。
- 農薬なしでネズミ被害はどう防ぐの?
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フクロウ(天敵)の活用、トラップ・バリア・システム(TBS)、そして天然素材を使った独自の「忌避誘引法」を組み合わせることで、毒を使わずにネズミ被害を抑制できます。
- 今後の展開は?
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ボヨラリでの試験栽培の成果をもとに、2026年7月より西ジャワ州タシクマラヤ(最大600ha)での本格栽培を開始予定。品種もコシヒカリ・ミルキークイーン・ひのひかりなど日本の純粋品種へとステップアップします。
弊社インドネシア総合研究所は、インドネシア・中部ジャワ州ボヨラリ地域の農業企業と連携し、ジャポニカ米の完全無農薬・有機栽培プロジェクトに着手しました。現地農家から譲り受けた種苗をもとに栽培を開始し、2026年5月26日に初回収穫を実施、665kgの籾米を得ることに成功しました。オーガニック農業という高付加価値分野での本格的な事業化に向けて本格的に取り組みを開始しています。
はじめに——「調査するだけ」では終わらない、事業者としてのインドネシア総研
弊社インドネシア総合研究所はこれまで、日本企業のインドネシア進出支援、特定技能・技能実習に関わる人材紹介、ガバメント・リレーションズ(対政府渉外)、姉妹都市連携など幅広い事業を展開してきました。農業分野においても、農機具の調査や農業関連コンサルティングとして現場に関わり続け、インドネシア各地の農家・農業企業との信頼関係を積み上げてきました。
コンサルタントとして「外側から助言する」立場にとどまらず、「自社でも事業を行う」姿勢が、インドネシア総研が今後目指す方向性の一つです。自ら事業リスクを取り、現場の課題と向き合うことで、クライアント企業に対してもより実践的なアドバイスが可能になると考えています。今回ご紹介するジャポニカ米栽培プロジェクトは、まさにその「自社事業化」への具体的な一歩です。
ジャポニカ米とは——インドネシアにおける「特別なお米」
世界で生産される米は大きく「ジャポニカ米」「インディカ米」「ジャバニカ米」の3種類に分類されます。世界の生産量ではインディカ米が約80%を占め、ジャポニカ米は約20%にとどまります。日本では食卓の主役ですが、インドネシアの主食はインディカ系の長粒種(パラパラとした食感の米)であり、ジャポニカ米はなじみが薄く、日本食レストランや富裕層向けスーパーなど、ごく限られたチャネルにしか流通していません。
このような「希少性と需要のギャップ」こそが、インドネシアでジャポニカ米を栽培する最大のビジネス的根拠です。インドネシア国内でジャポニカ米が流通する場合、一般的なインディカ系の米と比べ数倍以上の価格で取引されることが多く、特にオーガニック認証がつく場合はさらに高い価格設定が可能です。
種苗確保の壁と、現地ネットワークが生んだ突破口
ジャポニカ米の栽培を始めるうえで最初の壁となるのが「種苗の確保」です。日本のジャポニカ米品種は、植物防疫法や種苗法等の規制により海外への持ち出しが厳しく制限されています。
そこでインドネシア総研が選んだアプローチが、インドネシア国内ですでにジャポニカ系の米を試験的に栽培していた農家との連携です。インドネシアにもごく少数ながら日本米の栽培に取り組む先駆的な農家が存在しており、そこから種苗を分けてもらい、栽培の知見も受け継ぐ形でプロジェクトをスタートしました。インドネシア総研がこれまでのコンサルティング業務・現地調査を通じて積み上げてきた信頼関係が、この実現を可能にしています。
なお、カリフォルニアでもジャポニカ米が広く栽培されていることは注目に値します。カリフォルニアの米生産量の約85%はジャポニカ種であり、日本人の嗜好に合わせて開発されたブランド品種が複数確立されています。インドネシアという熱帯地域でのジャポニカ米栽培は前例が少ないながらも、現地農家の知恵と自然環境の力を活かすことで実現可能であることが、今回の試験栽培で示されています。
完全無農薬・最小限の肥料——インドネシアのオーガニック農業への挑戦
本プロジェクトの最大の特徴は、「完全無農薬・肥料を最小限に抑えたオーガニック栽培」です。インドネシアでは政府が指定する化学肥料が補助金つきで広く使用されていますが、あえてその慣行農業の枠組みから外れ、農薬を一切使用しない方針を採っています。
この栽培方法の実現を支えているのが、ボヨラリの豊かな自然環境です。ボヨラリはジャワ島中部に位置し、メラピ山をはじめとする火山の麓に広がる肥沃な大地と安定した水源を持つ地域として知られています。この恵まれた土壌条件と現地農家の知恵・技術が、無農薬栽培を可能にしています。
完全無農薬・オーガニックのジャポニカ米は、インドネシア国内の富裕層・在留外国人・日本食業界向けはもちろん、将来的にはオーガニック農産物への関心が高い国際市場への展開も視野に入ります。
初回収穫レポート(2026年5月26日)——試験栽培の結果と日本製酵素の効果
2026年5月26日、ボヨラリ地域の農家ギミン氏の田んぼ(面積:2,200㎡)において、ジャポニカ交配品種「タラバス(TARABAS)」の初回収穫を実施しました。今回の栽培では、日本から取り寄せた農業用酵素を週1回のペースで散布する方法を採用しました。
収穫した籾米(精米前の米)の総量は665kgでした。乾燥工程を経て精米可能な状態になった籾米は445kgです。今回は初めてのジャポニカ系米の栽培であり、稲株1か所あたりの植え付け本数が通常の稲と同じ2〜3本にとどまっていたことが収量に影響しました。ジャポニカ品種の特性として1か所あたり5〜8本の植え付けが適切であることが今回の経験で判明しており、次回作以降はこの点を改善してさらなる増収を見込んでいます。
【日本製酵素がもたらした効果】
現地の耕作者・収穫作業員からの証言をもとに、日本製酵素の使用によって以下の効果が確認されました。
- 穂が充実する
稲穂が非常に重くなり、脱穀の際に稲束をしっかり押さえる必要があるほど実が詰まりました。(脱穀作業員談) - わらが家畜の良質な飼料になる
収穫後に残るわらが、通常の稲わらよりも硬いにもかかわらず牛に好んで食べられることが現場で確認されています。(収穫作業員談) - 炊き上がりがもちもちで日持ちする
炊飯すると「もち米を混ぜたような」もちもちとした食感になり、室温で2日経っても腐らないほど日持ちすることが確認されました。(耕作者スワルディ氏によるサンプル提供)

【現地農家への波及効果】
今回の収穫では、周辺の多くの農家から「使っている酵素はどこで手に入るのか」という問い合わせが相次ぎました。日本製農業資材への現地での強い関心を示す出来事として、今後の事業展開において心強い反応です。
【次回作に向けた準備】
初回栽培で得られた知見をもとに、次の作付けシーズンに向けてタラバスの種籾45kgを2か所の農地分としてすでに確保しています。植え付け本数の最適化と酵素散布の継続により、さらなる収量向上を目指します。
戦略会議(2026年6月6日)——プロジェクト拡大に向けた新展開
ボヨラリでの初回収穫から約2週間後の2026年6月6日、インドネシア総研のジャカルタ事務所において、土地・育苗の専門家チームを交えた戦略会議を開催しました。この会議では、ボヨラリでの試験栽培で得られた知見をもとに、プロジェクトを本格的な事業規模へと拡大するための具体的な方針が協議されました。
【栽培エリアの拡大——タシクマラヤ600haへ】
新たな栽培候補地として、西ジャワ州タシクマラヤ市のサラウ地区が最優先エリアとして選定されました。タシクマラヤが選ばれた理由は三つあります。第一にジャカルタからのアクセスが良く物流面で有利であること、第二に潜在的な利用可能農地が最大600ヘクタールに及ぶこと、第三にこの地域の農家がもともとオーガニック農業に慣れ親しんでいることです。サラウの農地は2026年7月の作付け開始を目標にしており、6月中に土地の準備・耕作を進める予定です。また、中部ジャワのチェプーも候補地として検討されています。
【品種の高度化——コシヒカリ・ミルキークイーン・ひのひかりへ】
ボヨラリで試験栽培を行ったタラバス品種はジャポニカ系の交配品種であることから、今後のプロジェクトでは品質のさらなる向上を目指し、越光(コシヒカリ)、ミルキークイーン、ひのひかりといった日本の純粋品種の導入を計画しています。これらの品種を使用することで「特別米(ベラス・クスス)」としての品質をより高め、プレミアム市場での差別化を図ります。なお、ジャポニカ米はインドネシア政府が定める小売最高価格(HET)規制の対象外となる「特別米」カテゴリーに分類されるため、農家・流通業者ともにより健全な利益マージンの確保が可能です。
【農家との新たなビジネスモデル——土地賃料なしの全量買取方式】
農家とのパートナーシップは、土地の賃貸料を農家に負担させない形で運営されます。インドネシア総研側が種苗を提供し、収穫物を全量買い取って販売するという仕組みです。農家にとってはリスクを負わずにジャポニカ米栽培に参加できるため、参入障壁を大幅に下げながら確実な収入を得られるモデルとなっています。
インドネシアの土壌問題と「点滴」療法による修復
会議ではインドネシアの農地が抱える深刻な課題も共有されました。インドネシアの農地の実に72%が現在「病んだ」状態にあり、長年にわたる過剰な化学肥料(尿素)の使用が主な原因とされています。理想的な尿素の散布量は1ヘクタールあたり75kgであるにもかかわらず、実際には300kgもの尿素が使用されているケースがあり、土壌内の微生物環境が著しく損なわれています。
この問題に対するアプローチとして提案されたのが、作付け前に地場微生物(MOL)または古代細菌を用いた「土壌点滴療法」です。土壌の生物学的健全性を回復してから植え付けを行うことで、農薬・化学肥料に頼らない本来の地力を引き出すことができます。また、マドゥラ・スメネップ産のクロソク塩(81種類のミネラル成分を含む天然塩)を土壌に施すことで、植物の健康維持と稲の茎の強化に効果があることも紹介されました。
収量のポテンシャル——インドネシアの現状と土壌改善による可能性
インドネシアは中国・インドに次ぐ世界第3位の米生産国ですが、単位面積あたりの収量は決して高くありません。現在のインドネシアの稲作における平均収量は1ヘクタール(ha)あたり約5トン前後にとどまっており、土壌管理・栽培技術・水管理などの課題が生産性の伸び悩みの要因とされています。
日本の水稲の収量は農林水産省の統計によると10アール(1,000㎡)あたり約539kgの平年収量、すなわち1ha換算で約5.4トンです。さらに先進的な農法として注目される「SRI(System of Rice Intensification)農法」では、適切な土壌改善と栽培管理によって1haあたり18〜19トンという収量を達成した事例が世界各地で報告されており、今回の戦略会議でも専門家のイワン氏がこの農法で18トンの収量を達成した実績を共有しました。
今後は土壌環境の改善・日本製酵素の活用・植え付け本数の最適化を組み合わせることで、現在の5トン前後から大幅な増収が視野に入ります。完全無農薬・オーガニックという栽培方針のもとで土壌の微生物環境が豊かになるほど長期的な地力向上につながるという点でも、継続的な収量増加が期待できます。
害虫への強さとネズミという課題、そして毒を使わない対策
今回の試験栽培では、日本製酵素の使用により稲の茎が太く硬くなるという特徴が現地の耕作者から報告されました。この「茎の強化」は、農薬を使用しないにもかかわらず、茎を食い荒らす害虫への物理的な耐性にもつながるとされており、病害への高い耐性が確認されています。
しかし一方で、課題として残るのがネズミによる被害です。インドネシアでは全国で年間約100,000haの田んぼがネズミ被害を受け、その経済的損失は年間最大4億7,000万米ドルに上ると推計されています。無農薬・オーガニック栽培という方針のもとでは化学的な駆除は使用できないため、以下のような方法を組み合わせて対処しています。
- フクロウ(メンフクロウ・Tyto alba)による生物的防除
夜行性のメンフクロウは1羽で4〜5haのネズミ密度を抑制できるとされており、インドネシア各地で巣箱設置プログラムが普及しています。2025年5月にはプラボウォ大統領が農家に1,000羽のフクロウを寄贈すると発表し、国家的な政策としての位置づけも強まっています。 - TBS(トラップ・バリア・システム)
囮の稲でネズミを誘引しフェンスで罠を仕掛けるこの方法は、毒を使わずにネズミの個体数を25〜65%減らすことができると研究で証明されています。 - 忌避誘引法(ジェラ・ウンパン)——チーム独自の天然素材アプローチ
今回の戦略会議で紹介されたのが、ナイルティラピア(魚)のみじん切り・パン酵母・カンボジャ(プルメリア)の樹皮・ガドゥン球根(ヤムイモの一種)を混ぜ合わせた誘引剤を畦道(あぜみち)に置く方法です。これらの成分による化学反応が3日以内にネズミの関節に麻痺をもたらし歯が抜け落ちます。これを目撃した他のネズミが「危険な場所」として学習し、コロニーごと当該農地に近づかなくなるという仕組みです。大量殺虫ではなく自然のバランスを保つというこの哲学は、完全無農薬・オーガニック栽培の考え方とも一致しています。
価格比較から見えるビジネスポテンシャル——日本・カリフォルニア・インドネシア
ジャポニカ米の市場価値を主要産地・消費地と比較すると、本事業のポテンシャルがより明確になります。
- 【日本国内】
日本では2024年以降、米価格が急騰しています。2025年前半時点での5kgあたりの平均小売価格は約4,200円前後に達しており、2024年1月時点の約2,168円から大幅に上昇しました。猛暑による収穫量の低下、農業従事者の高齢化、在庫の薄さが重なったことが背景にあります。 - 【カリフォルニア産】
カリフォルニア産ジャポニカ米の代表ブランド「ニシキ」は、5kg換算で約2,500円相当。日本国内価格の約半額水準で、主に日本・韓国・台湾などへ輸出されています。 - 【インドネシアにおける付加価値】
ジャポニカ米は、インドネシアの一般的な主食米(Mediumグレード、1kgあたりRp15,000〜16,000前後)と比べると約3〜4倍の価格で流通しており、市場での流通価格は5kgで3,000円前後となっています。政府の小売最高価格規制の対象外である「特別米」に分類されるため、希少性とオーガニックのダブルプレミアムにより、高いリターンが見込める商材です。
次世代農業と帰国人材の活用——持続可能な農業モデルへ
今回の戦略会議では、プロジェクトの社会的側面についても重要な議論が行われました。農業をドローンや農業機械を活用した「かっこいい仕事」として若者に訴求し、農業従事者の世代交代を促すことが目標の一つとして掲げられています。インドネシアでは農業従事者の高齢化が課題となっており、技術と機械化によって農業の魅力を高めることは、食料安全保障の観点からも重要なテーマです。
また、日本での技能実習・特定技能を経て帰国したインドネシア人農業労働者を、日本式の農業技術を持つ自立した農家として育成するという計画も検討されています。日本での農業研修で身につけた栽培知識・機械操作・品質管理の意識を母国の農業に還元するというこの仕組みは、インドネシア総研がこれまで手がけてきた人材事業との自然な連携です。「人を育て、農業を育て、地域を育てる」という持続可能な農業モデルの実現に向けて、着実に歩みを進めています。

まとめ——インドネシアの大地から、新しい農業ビジネスの可能性へ
インドネシア総研が取り組むジャポニカ米栽培プロジェクトは、ボヨラリでの試験栽培という小さな一歩から始まり、タシクマラヤへの大規模展開、日本純粋品種の導入、土壌修復技術の確立、そして持続可能な農業モデルの構築へと着実に進化しています。
インドネシアという農業大国において、日本式のオーガニック・ジャポニカ米という分野はまだ大きな余白が残っています。インドネシア総研はこの可能性に早くから目を向け、自ら事業として挑戦を続けています。農業分野でのインドネシア進出・投資をご検討の方、インドネシアのオーガニック農産物ビジネスに関心をお持ちの日本企業・投資家・農業関連事業者の方は、ぜひ一度インドネシア総研までお問い合わせください。




