【ミニレポート】再生可能エネルギーとしての油ヤシ:バイオマス燃料

近年、化石燃料に変わる再生可能エネルギーとして、バイオマスが注目を集め、各国でその利用が進んでいるが、インドネシア単独でみると、発電用燃料としてのバイオマスの利用は、それほど普及しているとは言えない。

現在、インドネシア政府は、化石燃料への依存度を減らし、再生可能エネルギーへの転換を進め、エネルギーの安定供給基盤を形成するための政策上の指針を打ち出している。

エネルギー鉱物資源省の報告書では、2016年時点で再生可能エネルギーの割合は、わずか7.7%であったが、2025年までにその割合を23%に引き上げることが目標として設定されている。

出典:インドネシアエネルギー鉱物資源省「Potensi Bisnis Energi Baru Terbarukan(新しい再生可能エネルギービジネスの可能性)2017」より弊社作成
https://www.ojk.go.id/sustainable-finance/id/Lists/Agenda%20Nasional/Attachments/43/03.%20ESDM%20-%20Potensi%20Bisnis%20Energi%20Baru%20Terbarukan.pdf(閲覧:2019年4月10日)

再生可能エネルギーとして利用可能な資源の一つは、種々の農業、プランテーション、家畜および都市廃棄物に由来する「バイオマス」である。

インドネシアにおける、様々なバイオマス資源の中では、油ヤシ由来のバイオマスが傑出していると言える。

出典:インドネシアエネルギー鉱物資源省「Bioenergy Policies And Regulation InIndonesia(インドネシアにおけるバイオエネルギーの政策と規制)2014」
より弊社作成 
http://biooekonomierat.de/fileadmin/international/Indonesia__Bioenergy_Policies_and_regulations.pdf(閲覧:2019年4月10日)

以前、弊社WEBサイトのミニレポートにて言及したことだが、インドネシアにおける油ヤシ農園の面積は着実に増加している。

油ヤシ農園の拡大に併せてパーム油生産が増えると、油ヤシ由来の廃棄物も確実に増加する。つまり、再生可能エネルギーとしての油ヤシ由来バイオマスの供給量が、継続的に増えていくことになる。

過去の記事はこちらから:
https://www.indonesiasoken.com/news/sekaisaidainoyashiaburaseisankoku/

油ヤシ由来の廃棄物の量

油ヤシ由来廃棄物の種類

葉と茎(Frond);幹(Trunk);油ヤシ果実房(Fresh Fruit Bunch: FFB);
油ヤシ空果房(Empty Fruit Bunch: EFB);油ヤシ中果皮繊維(Mesocarp Fiber:MF);
油ヤシ殻(Palm Kernel Shell: PKS);油ヤシ廃液(Palm Oil Mill Effluent:POME)

出典:Hambali and Rivai, 2017.IOP Conf. Series: Earth and Environmental Science.
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1755-1315/65/1/012050/pdf(閲覧:2019年4月10日)

 

油ヤシ農園での植樹中際に、バイオマスとして油ヤシの葉と茎(Frond)や幹(Trunk)が生産される。

そしてパーム油工場では、油ヤシ果実房(FFB)から粗パーム油(CPO)とパーム核油(PKO)への生産プロセス中に、空の果実房(EFB)、中果皮繊維(MF)、油ヤシ殻(PKS)、油ヤシ廃液(POME)が生成される。

出典:Biomass Industrial Innovative Projectsより弊社作成
http://biomassproject.blogspot.com/2018/01/catching-up-great-opportunity-of-opt.html(閲覧:2019年4月10日)

 

油ヤシの葉と茎(Frond)、幹 (Trunk)、空の果実房 (EFB) は、バイオマス原料としてだけではなく、土壌の湿度を維持し、雑草の成長を抑えるためのマルチングや堆肥原料として広く使われている。

そして、特に空の果実房 (EFB)は肥料として普及している。EFBに含まれる栄養素は窒素(N),リン(P),カリウム(K)、マグネシウム(Mg)。1トン当たりのEFBは3kgの尿素(Urea)、0.6㎏のリン鉱石(CIRP)、12㎏の塩化カリウム(MOP)、2㎏キーゼリット(Kieserite)を含有している。

出典:Susanto, et.al, 2017.Jurnal Teknologi Lingkungan. 環境技術ジャーナル
http://ejurnal.bppt.go.id/index.php/JTL/article/view/2046/1890

 

油ヤシ廃液(POME)からはバイオガス/メタンガスを抽出可能で、肥料やそして微細藻類の成長のための培地としても使用される。油ヤシの殻(PKS)および油ヤシ中果皮繊維(MF)は、ボイラー燃料として一般的に使用されており、またパーム油工場の周りのアクセス道路を簡易舗装するための材料としても使用されている。

エネルギー鉱物資源省の新エネルギー・再生可能エネルギー・省エネルギー総局(Direktorat Jenderal Energi Baru, Terbarukan, dan Konservasi Energi (EBTKE)の調査によると、油ヤシ由来バイオマスから生成される発電の可能性は12,654メガワット(MW)に達する。

大きな発電ポテンシャルを有する場所は、スマトラ島(8,812 MW)とカリマンタン島(3,384 MW)である。

出典:Kumparan,「Mengenal Potensi Limbah Kelapa Sawit Indonesia」
https://kumparan.com/noviyanti-nurmala1519197736585/dari-limbah-menjadi-berkah-mengenal-potensi-limbah-kelapa-sawit-indonesia
(閲覧:2019年4月10日)

 

油ヤシ由来バイオマスから生み出される発熱量はそれぞれ異なり、以下のような数値を示している。

油ヤシ由来のバイオマス 発熱量
Fronds (葉と茎) 3757 kkal/kg
Trunk (幹) 4176 kkal/kg
Empty Fruit Bunch (空果房) 4492 kkal/kg
Mesocarp Fiber (中果皮繊維) 2637 – 4554 kkal/kg
Palm Kernel Shell (殻) 4105 – 4802 kkal/kg
Palm Oil Mill Effluent (廃液)  4695 – 8569 kkal/m 3

1 kkal = 4187 Joule = 1,163 Wh.

出典:Tombomumet、Pemanfaatan Limbah Pabrik Kelapa Sawit Sebagai Pembangkit Listrik(閲覧:2019年4月10日)
https://tombomumet.wordpress.com/networking/minyak-jarak-pengganti-solar/pemanfaatan-limbah-pabrik-kelapa-sawit-sebagai-pembangkit-listrik

 

将来の油ヤシ産業から産出されるバイオマスの総量は膨大なものであり、そうした価値ある資源を経済的に有効に利用するための方策を早期に練る必要があるだろう。

 

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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