【ミニレポート】世界最大のヤシ油生産国インドネシア

インドネシア経済の中で農業セクターは非常に重要な役割を果たしており、インドネシア中央統計局のデータによると、2017年の国内総生産(GDP)の13.14%が農業セクターに由来している。インドネシアにおける油ヤシは、農産物の中でも極めて重要な作物として、同国経済に多大な貢献をしてきた。ヤシ油は、インドネシアにとっての主要な輸出品目であり、雇用創出源としてだけでなく、外貨獲得源としても重視されている。FAOの国際統計によると、インドネシアのヤシ油生産量は世界第一位の地位にある。

ヤシ油の国別生産量(単位:トン)2017年

出典:FAO、2017年より弊社作成(閲覧:2019年2月1日)【参考Web-site】FAO Statistics: http://www.fao.org/faostat/en/#data/QC

 

目次

インドネシアにおける油ヤシ農園の拡大について

長期的傾向として、ヤシ油を燃料とする食品及び化粧品類の消費量が増え続けており、ヤシ油に対する需要は世界的に高まっている。同時に、温室効果ガス削減の観点から、ヤシ油のバイオ燃料としての利用に対する支持が高まっており、需要増加への対応として、インドネシアでは油ヤシ農園の開発が続いている。インドネシアにおける油ヤシ農園の増加傾向は過去10年にわたり続いてきた。栽培面積に基づいて分類すると、大農園(25ha以上)が53.71%で、小農園(25ha未満)が41.30%、国有農園事業が6.97%となっている。

油ヤシ農園の栽培面積(2008~2017年)

出典:STATISTIK KELAPA SAWIT INDONESIA 2017 (インドネシアの油ヤシ統計、2017年より弊社作成)(閲覧:2019年2月1日)
【参考Web-site】STATISTIK KELAPA SAWIT INDONESIA 2017 Indonesian Oil Palm Statistics 2017
https://www.bps.go.id/publication/download.htmlnrbvfeve=YjczZmY5YTVkYzlmOGQ2OTRkNzQ2MzVm&xzmn=aHR0cHM6Ly93d3cuYnBzLmdvLmlkL3B1YmxpY2F0aW9uLzIwMTgvMTEvMTMvYjczZmY5YTVkYzlmOGQ2OTRkNzQ2MzVmL3N0YXRpc3Rpay1rZWxhcGEtc2F3aXQtaW5kb25lc2lhLTIwMTcuaHRtbA%3D%3D&twoadfnoarfeauf=MjAxOS0wMS0zMCAxMzozNDoxNw%3D%3D

 

インドネシア各州の油ヤシ農園面積および粗パーム油(Crude Palm Oil)の生産量

インドネシア(全34州)のうち、25州において油ヤシが栽培・生産されている。州の中でも、リアウ州、西カリマンタン州、中央カリマンタン州、北スマトラ州、東カリマンタン州、南スマトラ州の6州において栽培面積と生産量が傑出している。

出典:STATISTIK KELAPA SAWIT INDONESIA 2017 (インドネシアの油ヤシ統計、2017年より弊社作成)(閲覧:2019年2月1日)

油ヤシの品種

果実と殻の厚さを基準として、油ヤシの品種は3種類、すなわちデュラ(Dura)、ピシフェラ(Pisifera)、テネラ(Tenera)に分類される。

油ヤシの品種

 

出典:インドネシアの油ヤシ農園での聞き取り(2018年)に基づいて弊社作成

テネラ(Tenera)品種は、果肉と殻の厚さのバランスが良い優良交配品種である。テネラ(Tenera) 品種は、粗パーム油(Crude Palm Oil, CPO)とパーム核油(Palm Kernel Oil,PKO)を共に大量に生産するため、インドネシアの多くの油ヤシ農園で広く栽培されている。粗パーム油(CPO)は中果皮(mesocarp)から生産され、パーム核油(PKO)は胚乳(endosperm)から生産される。殻(EndocarpまたはPKS(Palm Kernel Shell))は、現在、再生可能エネルギーの燃料源として広く使用されている。

 

CPOとPKOの違いについて

CPO PKO
◆中果皮(mesocarp)から抽出される。 ◆種子(endosperm)から抽出される
◆ 室温で半固体 ◆室温でほとんど固体
◆飽和脂肪酸 (50%) ◆飽和脂肪酸 (80%)
◆用途:

70%が食用に使用され、25%が化粧品、石鹸、洗剤、キャンドル、あるいは工業用潤滑剤として、5%はバイオ燃料として使用される。

 ◆用途:主として石鹸、化粧品(ハンドクリーム、口紅等)、シャンプー、石鹸、洗剤などに使用される。

【参考Web-site】https://www.researchgate.net/publication/319298126_Characteristics_of_Fresh_Fruit_Bunch_Yield_and_the_Physicochemical_
Qualities_of_Palm_Oil_during_Storage_in_North_Sumatra_Indonesia
(閲覧:2019年2月15日)

 

インドネシアのPKSの輸出先

インドネシアのパーム殻企業協会(Asosiasi Pengusaha Cangkang Sawit Indonesia,APCASI)会長のDikki Akhmar氏によると、インドネシアのPKSの輸出量は、全産出量の15~20%に過ぎず、インドネシアのパーム油工場での(燃料としての)再利用も前産出量の40~50%にとどまる。

出典:https://gapki.id/news/4864/energi-biomassa-berbasis-cangkang-sawit-butuh-insentif より弊社作成、(閲覧:2019年2月15日)

PKSの輸出先国は主としてアジアの周辺国、特に日本とタイが多く輸入している。2016年では全輸出量139万トンのうち約40万トンが、2017年は全輸出量180万トンのうち約80万トンが日本への輸出であった。それ以外は、中国、シンガポール、ポーランド、パキスタンなどに輸出されている。

【参考Web-site】https://ekonomi.bisnis.com/read/20170724/99/674504/produksi-cangkang-sawit-naik-pengusaha-incar-ekspor
https://www.beritasatu.com/agribisnis/443533-ri-ekspor-12-juta-ton-cangkang-sawit-ke-jepang.html (閲覧:2019年2月15日)

前出のAPCASIは、パーム殻輸出に対する課徴金、課税を主張しており、こうした動きがPKS輸出に不安定性を与える要因となっている。2018年には、1トン当たりの課徴金が10米ドル、税金が7ドルで、合計17ドルとなっていた結果、それまでは積極的にPKS輸出に関与していた数十社のうち、2018年中に輸出を実施した業者は4社のみに留まった。こうした事情もあってか、2019年1月からは1トン当たりの課徴金と税金は合計で7ドルに引き下げられ、PKSの輸出が増加していくことが期待されている。

【参考Web-site】https://cangkangsawit.id/bisnis-cangkang-sawit/pajak-ekspor-cangkang-sawit/ (閲覧:2019年2月15日)

 

ヤシ油精製過程の副産物:PKSとEFB

出典:https://www.jwba.or.jp/2017/10/04/関西バイオマス展において当協会加藤副会長が基調講演/ (閲覧:2019年2月18日)

上記フローからわかる通り、ヤシ油の生成過程において副産物としてEFBとPKSがあり、前項目にて述べた通りPKSは燃料源として広く利用されている。しかし、EFBはカリウムや塩化物を多量に含むため、そのまま燃焼させるとボイラーの故障につながるため、技術的処理をしない限り燃料には不向きである。

EFBは従来油ヤシ農園内で焼却処分していたが、現在は煙害規制により焼却もできない。また、EFBは含水率が高い(約60%)ため、腐敗しやすい。さらには、廃棄物として処理するための輸送をするにも、水分の輸送になるため極めて高コストの廃棄物になるーー。以上のような事情から、ヤシ油搾油工場の近くに投棄・放置されているのが一般的である。後述する再利用の方法が模索されているものの、クッション材や堆肥化に利用されているのは全体の2~3割程度、残りの7~8割はヤシ油搾油工場の敷地内に投棄・堆積されていると考えられている。

投棄されたEFBからはメタンガスが発生し、温室効果ガスの発生源となっているだけでなく、悪臭がはなはだしい。大量に発生するEFBにはどのような利用方法があるのだろうか?

インドネシアの環境省は、EFBの利用方法の一つとして、キノコの培地としての利用を奨励しているが、真菌培地として利用した後には分解が困難になる。廃棄物としてのEFBのもう一つの利用方法は、嫌気性堆肥化プロセスである。嫌気性堆肥化によって、メタンガス(CH 4 )、二酸化炭素(CO 2 )および有機酸が産出され、メタンガスを燃料として使用することができる。現在、北スマトラ、リアウ、南スマトラ、南カリマンタン、中央カリマンタン、西スラウェシの各地域で実験が行われる計画がある。

【参考Web-site】https://www.indonesia-investments.com/id/bisnis/komoditas/minyak-sawit/item166?(閲覧:2019年2月15日)

こうした状況の中で、EFBの有効活用の方法が様々に模索されてきているが、報道によると(NNA、2019年2月25日)アウラグリーンエナジー株式会社(青森市)がEFBを燃料とするバイオマス発電施設をインドネシア・アチェ州に建設する計画が発表された。同報道にもある通り、EFBは燃焼時にボイラーを腐食させる金属成分が出るため、有効活用されずに来たが、同社は耐蝕性の高いステンレス容器と温度制御など熱プロセス管理の技術を採用して、EFBの利用を可能とした。こうした新技術の導入によって、大量廃棄されて環境を汚染してきたEFBの有効活用が進むことを期待したい。

【参考Web-site】https://www.nna.jp/news/show/1872722(閲覧:2019年2月25日)

 

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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