【コラム】インドネシアの海洋水産消費動向と政策①

世界では、生活水準の向上に伴い魚介類の消費量が増加傾向にあります。アジア・オセアニア地域だけでなく、歴史的に魚食文化の薄かった欧米圏においても、健康志向の高まりから魚介類への注目は高まり、世界の魚介類消費量は過去50年間で約2倍に伸びています。

一方、乱獲や水質汚染、地球温暖化といった人為的な影響により、魚介類は絶滅危機に瀕しているといっても過言では無いのも事実です。研究者の間では、「2048年には食用魚がいなくなる」「2050年には海洋ごみの量が魚の量を上回る」といった警鐘が鳴らされています。

今回のコラムでは、その様に決して軽視することのできない水産業の現状について、インドネシアにおける魚介類消費動向及び政策を事例に、全2回の連載にて詳しくご紹介いたします。

また、インドネシアの海産物のトピックスにつきましては先般掲載致しました【コラム】「インドネシアの魚料理と魚ビジネスについて」でもご紹介しておりますので、こちらも是非ご参照下さいませ。

インドネシアでは、世界の殆どの国や地域と同様に、過去10年間の魚介類消費量は上昇傾向にあります。今年のインドネシア海事水産省(KKP)の報告書によると、2021年の国民の年間魚介類消費量は55.37kg/人でした。前年2020年度の54.5kg/人と比べ、約1.6%増加しています。2011年の魚介類消費量は僅か32.25kg/人でしたから、インドネシア国民の魚介類消費量は10年前と比較して約71.7%も増加していることになります。

対する日本の年間魚介類消費量は、2020年度時点で23.4 kg/人と、記録を開始した1960年度以降で最低値を記録しました。この数値はインドネシアの同年魚介類消費量の僅か43%程です。こうした結果から、お寿司やお刺身など豊富な魚食文化を持つ「お魚大国」の日本で、「魚離れ」が顕著に進んでいることが窺えます。

日本では、子供が魚を好まない、調理に手間がかかる、割高である等の理由から、2016年に肉類の消費量が魚介類の消費量を上回り、人々の食生活はより手軽な肉類を中心とした食生活へと変化しています。

インドネシアの2021年度魚介類消費量を地域別に見ると、消費量が最も高かったのはマルク州で、77.49kg/人でした。2位は北マルク州で、その消費量は75.75kg/人でした。一方、消費量が最も低かったのはジョグジャカルタ特別州で、その消費量は僅か34.82kg/人でした。続いて消費量が低かった地域はランプン州で、消費量は36.66kg/人でした。インドネシアにおいて、魚介類消費量の多い地域と少ない地域では2倍以上もの差があることが明らかになりました。

既に上昇傾向にあるインドネシアの魚介類生産量ですが、インドネシア政府は、国内における魚介類の消費量を今後も更に増やし続けていくよう働きかけを行っています。KKPは、2024年までに魚介類消費量を現在の約12%増の62.05kg/人にすることを目標としています。魚介類消費量増加の狙いは、国民の健康を促進しつつ、国内外への経済拡大を通じて将来的な国の競争力を維持することです。

新型コロナウイルス感染症流行時には、魚介類に含まれる「免疫賦活物質」(体内における非特異的な免疫作用を刺激し効果を高める成分)に注目し、Sakti Wahyu Trenggono海洋問題・漁業大臣により、魚介類を積極的に摂取するよう呼びかけが行われました。同大臣の発言は、表向きは国民がコロナ時代を健康に乗り切るためのアドバイスとしつつ、実際は魚介類消費量増加による経済効果を狙ったものと見られます。

インドネシア政府は経済的な成長も視野に入れ、魚介類の養殖にも力を入れています。
インドネシアでは、魚介類のうち、ナイルティラピア、車海老などの大きめのエビ、ナマズなどの品種の養殖が特に盛んに行われています。ティラピアはアフリカ原産の外来種で、スズキ目カワスズメ科に属する淡水魚です。水温の高い河川を好み、環境適応能力や生命力が非常に高いことから、インドネシアでは養殖に最適な魚の一つです。ナイルティラピアは「チカダイ」や「イズミダイ」といった名前でも流通しており、インドネシア料理の他にも、タイ料理や中華料理においても愛用されている魚です。養殖については次回のコラムにて詳しくご紹介いたしますので、是非本コラムと併せてご覧くださいませ。

本コラムでは、インドネシアにおける魚介類の消費量動向を中心に、日本との比較も交えながらインドネシアの水産業についてご紹介させて頂きました。島の数が 13,466 にも及ぶインドネシアは、海岸線の長さもカナダ、ノルウェーに次いで世界第3位、排他的経済水域もアメリカ、オーストラリアに次ぐ世界第 3 位という、広大な海洋領域を有する世界最大級の島嶼国です。インドネシアでは、宗教的な理由から無難に魚介類を選択する人々も多いです。

インドネシアでは人々は魚介類に火を通して食すのが一般的ですが、最近は文中でも触れたような、お寿司やお刺身といった日本の魚食文化にも徐々に人気がでてきています。魚介類を中心とした海産物分野におけるインドネシア市場への展開は、とても魅力的なチャンスのある事業であると言えます。

弊社インドネシア総合研究所は、215社を超える企業・事業家の皆様に、インドネシアへの進出に関して最適なコンサルティングをご提供させて頂いた実績がございます。現地の文化慣習を深く理解する弊社だからこそ、ワンストップでスムーズなサービスのご提供が可能です。インドネシアへのご展開をご検討されている皆様、是非お気軽に弊社インドネシア総合研究所へお問合せくださいませ。

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