【コラム】インドネシアの旧正月文化②後編

前回のコラム「インドネシアの旧正月①前編」では、華人の多いインドネシアでも毎年1月から2月にかけて祝われる旧正月(春節)の過ごし方や今年の干支についてご紹介いたしました。今回のコラムでは、前回ご紹介しきれなかったインドネシアの旧正月文化について、詳しくご紹介いたします。

7. 花を飾る

旧正月は、「春節」とも呼ばれていることから分かるように、春の始まりを告げる大切な行事です。この時期インドネシアの華人の人々が行う伝統のひとつに、春の到来と新年の繁栄を象徴する花で家を飾ることが挙げられます。通常、桃、梅、蘭、牡丹などの花が飾られます。旧正月は暦の上でも立春に近く、温帯の国々では特に旧正月の連休が明けるに連れて暖かい気候に変わり、花を飾ることでより一層春の訪れを感じることができるのです。

8. 服を新調する/礼服を着る

内外ともに新しい雰囲気は、魔除けになり、幸運をもたらすと信じられているため、新しい服を着て新年を迎えることは、インドネシアにおける旧正月の伝統のひとつです。一般的に、新年には中華圏で幸運を象徴する赤色を着ることが好まれており、表に着る服だけでなく、下着や靴下までも赤色のものが店頭に並びます。日本の街中でも旧正月の時期に赤い服を着た華人系の観光客が多く見られるのもこういった理由があるためです。

更に、中国や世界各地の華人社会では、旧正月のお祝いでは特別な礼服を着る慣習があります。男性は「長袍(cháng páo)」または「長衫(cháng shān)」を、女性は「長衫」または「旗袍(qí páo)」(所謂チャイナドレス)を着用します。男女の旧正月服のモチーフには一般的に違いがあり、男性用の礼服には主に龍が用いられ、女性用には孔雀や花のモチーフが用いられます。辰年であっても、女性用の礼服には龍のモチーフを使用しないのが一般的です。また、礼服の場合でも同様に赤色を着るのがしきたりとなっています。

参考:https://lifestyle.kompas.com/read/2024/02/06/110000320/perbedaan-motif-busana-imlek-laki-laki-dan-perempuan

9. 家族や親戚と食事をする/「魚生」

旧正月の際には、大晦日に当たる「除夕(chú xī)」の夜に、家族や親戚で集まり共に「年夜飯(nián yè fàn)」を食べる風習があります。インドネシアでも同様です。この年夜飯には全ての料理に特別な意味が込められており、作り手や食べる人に幸運をもたらすと信じられています。この点では日本のお節料理と似ていますね。肉、魚、水餃子、蒸しケーキなど様々な食材をふんだんに使った大皿料理がずらりと並んだ食卓を皆で囲み、年が明けるのを待つ一家団欒の伝統文化は、旧正月ならではです。

また、中国や台湾ではあまり見られませんが、シンガポールを中心に東南アジアの一部華人社会で欠かせない旧正月の料理があります。「魚生(yú shēng)」と呼ばれるこの料理は食べる前の儀式が特徴的です。丸いテーブルの中央に、刻んだキャベツ、キュウリ、ニンジン、ダイコンなどの野菜、生魚、ミカン、ピーナッツなどが盛られた大きな皿を置き、タレとゴマ油をかけ、レモンを絞った後、皆でテーブルを囲んで立ち、専用の長いお箸で具材を上に持ち上げかき混ぜます。その際、「大吉大利(dà jí dà lì)、年年有餘(nián nián yǒu yú)!」などの吉祥話や、願い事、または広東語で「投げる」を意味する「捞起(lou1 hei2)!」などと口にするのがお決まりです。

具材を高く持ち上げれば持ち上げるほど、願いが叶いやすくなるという言い伝えがあり、お皿に盛られたたくさんの野菜と笑い声で、旧正月の食事が始まります。魚生の伝統はシンガポール、特に広東系移民の間で生まれやがてインドネシアやマレーシアに伝わったと言われており、現在では、多くのホテルが旧正月の食事に魚生をセットにして提供しています。旧正月の華やかな雰囲気を盛り上げるのに最適な魚生、皆様も是非試してみてはいかがでしょうか。

参考:https://travel.kompas.com/read/2019/01/29/070300427/yu-sheng-tradisi-imlek-dari-singapura-yang-menyebar-ke-indonesia

10. 年糕を食べる

旧正月にインドネシアで多くの人が行う伝統の一つに、「年糕(nián gāo)」と呼ばれる蒸しケーキを食べることがあります。中国語(普通語/北京語/Mandarin)で「一年成長した」という意味の「年高(nián gāo)」と発音が同じであることと、ほんのり甘い味が相まって、年糕を新年に食べると人生が喜びと幸福で溢れた明るいものになると信じられています。

11. 紅包を贈る

毎年旧正月にはインドネシアでも赤い封筒「紅包(hóng bāo)」が必ず登場します。この赤い封筒には、年長者が若い世代への願いを込めて贈るお金が入っています。日本のお年玉と似ていますね。贈る側や年長者は、紅包を贈ると幸運と健康を得られると信じられています。一方、台湾や一部の地域では紅包は冥婚(死者との結婚)にも使われることがあるため、旧正月の時期でも、道端に落ちている紅包には触れないようにし、紅包は家族や親戚から頂く分だけに留めておきましょう。

12. 花火や爆竹を鳴らす

インドネシアの人々も、旧正月のお祝いに花火や爆竹を鳴らします。これは中華圏で広く行われている伝統的な風習であり、花火や爆竹の大きな音が悪霊を追い払い、火をつけた人に幸運をもたらすと信じられています。通常、花火や爆竹は旧正月の大晦日(除夕)の真夜中に点火されますが、旧正月の休暇期間中至る所で日夜問わず鳴らされることもあります。現在では安全や騒音等の観点から花火や爆竹が禁止されたり、ドローンで代用されたりしている地域もあるようです。花火や爆竹を鳴らすのは新しい年の新しい一日を意味する旧正月の大切な儀式ですが、周囲への配慮を忘れずに楽しむことが大切ですね。

今回のコラムでは、前回につづけてインドネシアの旧正月文化について代表的なものを詳しくご紹介させていただきました。世界最大の華人人口を誇るインドネシアでは、全人口に占める割合で見ればマイノリティであり、一部暗い歴史もあれど、華人の文化は現在まで継承され続けています。

こうした様々な文化に触れられるのも、多民族国家インドネシアならではのメリットです。弊社インドネシア総合研究所では、インドネシアでの現地調査や現地視察の手配やアテンドも承っております。インドネシアという不慣れな土地では文化慣習面でのご不安や注意すべき点などもつきものですが、弊社は現地法人と連携した万全なフォロー体制を整えておりますので、安心してお任せいただけます。ご関心をお持ちの方は是非弊社インドネシア総合研究所までお気軽にお問い合わせくださいませ。

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