【コラム】インドネシアの学校教育環境の現状について
国連が掲げる持続可能な開発目標SDGsで「質の高い教育をみんなに」とあるように、生まれた環境や立場に関係なく平等な教育を受けることは世界でも課題となっています。
近年急成長を遂げ、これから更なる発展を迎えるインドネシアにおいても、教育や人材の育成は重要な課題と捉えられています。
今回のコラムでは、インドネシアにおける学校数の推移や学校施設から学校教育環境の現状をご紹介していきます。
本コラムの出典は全て以下のインドネシア中央統計局(BPS)の報告書からとなります。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Statistik Pendidikan 2020 (インドネシアの教育統計2020)より弊社作成(閲覧日:2021年5月23日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/11/27/347c85541c34e7dae54395a3/statistik-pendidikan-2020.html
インドネシアにおける学校の数
上図は2019年度と2020年度のインドネシアにおける学校の数です。上図から、学校の中でも小学校の件数が一番多いことが分かります。
2019年度から2020年度にかけての増加率から見ると、中学校の数が一番増加しており、小学校の卒業生が増えているためであることが推測できます。
また、どの学校も2019年度から2020年度にかけて件数が増えています。
インドネシアにおける公立学校と私立学校の割合
日本と同じように、インドネシアでも公立の学校と私立の学校が存在しています。
下図は、2020年度のインドネシアにおける公立学校と私立学校の割合です。
インドネシアにおける一般高校と職業高校の数
下図はインドネシアにおける一般高校と職業高校の数の比較です。
公立学校と私立学校の割合について、職業高校は公立より私立の学校が多いことが分かります。
また、小学校では私立の割合が僅か12%となり公立高校の割合が高くなっています。
一般高校(SMA)職業高校(SMK)
上図から分かるように、2014年度の段階では一般高校の数が職業高校に比べて多かったのに対し、2020年には職業高校の数が上回っています。
職業高校の数は増加していますが、一般高校に比べ職業高校の失業率が高いことが問題となっています。
そこでインドネシアのジョコウィ大統領は、良質な労働者を増やすという目的のもと、職業高校の教師の質を高める制度や、職業高校の増設や就職に直結するカリキュラムへ見直しをする取り組みを行なっており、今後の職業高校のあり方について注目が集まっています。
参考:https://www.cnbcindonesia.com/market/20181106110139-17-40767/pengangguran-terbanyak-lulusan-smk-apa-kata-jokowi
https://tirto.id/revolusi-industri-40-jokowi-minta-guru-smk-kuasai-coding-dgMa
インドネシアにおける学校別男女の割合
下図は、インドネシアの学校における男女の割合です。
小学校、中学校までは丁度男女半分の割合を占めていることが分かります。
高校になると、一般高校は女子生徒が多いのに対し職業高校では男子生徒の割合が多いことが分かります。
職業高校のカリキュラムは日本の工業高校のように、建設や農業、車関係など比較的男子生徒が好むカリキュラムが多くこのような割合になっていると考えられます。
参考:http://ingintangled.blogspot.com/2016/11/kenapa-smk-banyak-laki-laki-daripada.html
学校施設・衛生について
衛生面について
勉強をするうえで、学校の施設や教室環境は大切な要素となりますが、インドネシアの学校施設や教室環境はどのようになっているのでしょうか。
インドネシアの学校において、学校にトイレが設置されている割合はインドネシアの学校全体の80%となっています。
また、学校に手洗い場が設置されている割合は職業高校が一番高く、職業高校全体のうち82%となります。一方、手洗い場が設置されている割合が最も低いのは中学校で、全体の74%となります。
まだ、トイレや手洗い場が設置されていない学校があることを考えると学校の衛生においては、完全に整っているとは言えないことが分かります。
また、現在は新型コロナウイルスの予防のため、学校において石鹸で手を洗い予防する決まりが設けられていますが、手洗い場がなければそのような決まりも守ることができず今後改善していく必要がありそうです。
授業を受ける教室の環境について
インドネシアの学校における教室の状態について、建設時の手抜き工事や自然災害後に修繕を行なっていないことなどが原因で教室などの施設・器物が破損している状態にある学校は、学校全体の70%以上を占めています。
教室などの施設・器物の破損については、教室の柱や壁が古く倒壊しそうなレベルの破損から、壁にヒビが入っている軽度の破損など様々です。
下表は学校別の教室の設備、器物などが破損している割合です。
上図から分かるように、教室の設備や器物が破損している割合が一番多いのは、小学校となっており、一番低いのは職業高校となります。
また、教室の状態は公立学校より私立学校の方が良好である傾向があります。
以前中部ジャワ州にある小学校では、強風と豪雨の際に学校の建物が倒壊し、生徒が下敷きになる事故が起きました。
インドネシアの教育大臣は、このような事故が再び起こらないようにするために、現在の全国の学校の状態を早急に確認し、破損が大きい学校については早急に対応を行うよう計画をしています。
また、国の対応を待つだけではなく地域予算から学校の管理費用を捻出する必要性も指摘しています。
参考:https://www.tagar.id/kaleidoskop-2019-hantu-pendidikan-sekolah-rusak
図書館について
インドネシアの学校において、図書館のある割合は下表の通りです。
学校に図書館がある割合
学校種類 | 割合 |
小学校(SD) | 73% |
中学校(SMP) | 89% |
一般高校(SMA) | 97% |
職業高校(SMK) | 89% |
一般高校においては、ほとんどの高校に図書館が設置されていますが、小学校においてはまだ十分でないことが分かります。
予算の都合で学校に図書館を設けることが難しい場合は、以前コラムで紹介した移動図書館プログラムを利用などして本に触れる機会を増やす方法もあります。
学校数は増加傾向にありますが、学校の増加に併せて施設をどう充実させていくか考え工夫していく必要がありそうです。
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インドネシアにおいて、子供の増加とともに学校数を増やしている中で、学校の衛生面や、図書館等の施設の充実は追いついていないのが現状です。
弊社では、インドネシア現地での教育に関する調査やインタビューなどの経験もございます。
ご興味がある方はお気軽にご相談ください。
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