【コラム】インドネシアにおける人間開発指数について

人間開発指数(HDI)は、各国の社会の豊かさや進歩の度合いを測る包括的な経済社会指標として1990年に国連開発計画(UNDP)が設定した数値です。

人間開発とは、人間の可能性に応じた人生の選択肢と機会の幅の拡大を目的とする取り組みで、人間開発指数の数値を測る際には、この人間開発を実現するための平均寿命・教育・所得水準の3分野の平均達成度から測定されます。

参考: https://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/library/human_development/human_development1/hdr_2011/QA_HDR1.html
    https://kotobank.jp/word/%E4%BA%BA%E9%96%93%E9%96%8B%E7%99%BA%E6%8C%87%E6%95%B0-155398

 

インドネシアの人間開発指数(HDI指数)

2020年に国連開発計画(UNDP)によって発表されたインドネシアの人間開発指数は、0.718で世界107位となりました。

国連開発計画(UNDP)によると、人間開発指数世界1位となったのはノルウェーで人間開発指数0.957となります。

日本は、0.919で19位に位置しています。

参考: http://hdr.undp.org/en/data

下図はインドネシアにおける2010年から2020年の10年間の人間開発指数の推移です。

出典:Indeks Pembangunan Manusia 2020より弊社作成(閲覧日:2021年6月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2021/04/30/8e777ce2d7570ced44197a37/indeks-pembangunan-manusia-2020.html

 

グラフから分かる通り、インドネシアにおける人間開発指数は毎年上昇していますが、2019年から2020年にかけての成長率は緩やかになっています。これは、新型コロナウイルスの影響でインドネシアの経済活動が縮小したことが原因として考えられています。

インドネシアでも新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出制限が行われ人々の消費活動は減少し、投資活動も鈍化したことで、経済成長が2.07%縮小したことが分かっています。

このように、人間開発指数は国の経済状況によっても左右されます。

また、地域間で見ると、2020年にはインドネシアの24の州で人間開発指数が上昇しましたが、その他の10の州では指数が減少しました。しかし、この10年で、各州の人間開発指数の格差は徐々に縮小傾向にあります。

インドネシアの平均寿命

前述の通り、平均寿命は人間開発指数の算出根拠の一つとされています。

下図はインドネシアにおける2010年から2020年の10年間の平均寿命の推移です。

出典:Indeks Pembangunan Manusia 2020より弊社作成(閲覧日:2021年6月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2021/04/30/8e777ce2d7570ced44197a37/indeks-pembangunan-manusia-2020.html

 

インドネシアの平均寿命は、過去10年間伸び続けています。

寿命が伸びている要因として、経済が発展し、インドネシアの人々の生活が徐々に豊かになっていること、医療が発展していること、母子共にリスクのある若い年齢での出産の割合が減ったことなどが挙げられます。

 

インドネシアの教育指数(EI)

教育指数は、国の教育に関する達成度を示す指標として設けられ、前述の平均寿命と同じように人間開発指数の算定根拠として使われています。

教育指数は、子供が学校に在籍することが期待されている年数を推定した「期待修学年数指数」と25歳以上の人の平均修学年数から15を引き指数化した「平均修学年数指数」の平均値として算出されます。

下図は2010年から2019年のインドネシアと世界平均の教育指数の推移です。

出典:国連開発計画による人間開発報告書を基に弊社作成 (閲覧日:2021年6月8日)  http://hdr.undp.org/en/indicators/103706#

 

上図より、インドネシアの教育指数・世界平均の教育指数ともに過去10年上昇していることが分かります。
また、インドネシアの教育指数は、は2011年以降世界平均教育指数を上回っています。

下図は、インドネシアにおける2020年の年齢層別就学率です。

出典:Indeks Pembangunan Manusia 2020より弊社作成(閲覧日:2021年6月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2021/04/30/8e777ce2d7570ced44197a37/indeks-pembangunan-manusia-2020.html

 

上図から、19歳〜24歳の年齢層の就学率が低いことが分かります。

就学率が低い要因としては、大学の学費が払えない家庭がまだまだ多いことや、大学数が少ないこと、が挙げられます。

インドネシアの教育指数を上げるには、19歳〜24歳の就学率を上げることが課題になると言えます。

関連コラム:

インドネシアの実質GDP

人間開発指数の算定根拠として使われる分野の最後の一つが所得水準です。

以下はインドネシアの実質GDPの推移です。

出典:Indeks Pembangunan Manusia 2020より弊社作成(閲覧日:2021年6月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2021/04/30/8e777ce2d7570ced44197a37/indeks-pembangunan-manusia-2020.html

 

2010年から2019年にかけて、実質GDPは平均約2%ずつ増加していましたが、2019年から2020年にかけては、新型コロナウイルスの影響で減少してしまいました。

また、新型コロナウイルスの影響による経済活動の低下で、雇用の減少と失業率の増加が起き、人間開発指数増加の妨げとなっています。

新型コロナウイルス収束後の経済活動の状況により、今後の人間開発指数に変化が見られそうです。

若い世代が多く平均寿命も伸びているインドネシアにおいて、人間開発指数を上げていくには、新型コロナウイルス収束後の経済活動の動きが重要なポイントとなります。

弊社では様々な分野でインドネシア進出のサポートや、調査などを行なっております。

セミナーの開催や講師派遣なども行っておりますので、ご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
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