【コラム】インドネシアにおけるコロナ禍での在宅学習への取り組み

世界的に蔓延している新型コロナウイルスは子供達の生活にも変化を及ぼしました。

昨年、日本の文部科学省は全国の学校等に全国一斉臨時休業の要請をし、この要請により日本の子供たちは在宅での学習を余儀なくされました。

インドネシアにおいても新型コロナウイルス蔓延以降、子供たちの教育は在宅学習に頼らざるを得ない状況にあります。

今回のコラムでは、インドネシアにおける在宅学習の取り組みについてご紹介していきます。

 

世界的にみたコロナ禍における在宅学習の状況

インドネシアにおける在宅学習への取り組みをご紹介する前に、まずは世界全体におけるコロナ禍の在宅学習の状況についてご紹介していきます。

ユニセフの調べによると、新型コロナウイルスの影響により学校の臨時休業を行った国のうち90%以上の国が何らかの形で在宅学習を実施していることが分かっています。

在宅学習で多く使用されたツールとしては、ラジオ・テレビ・インターネットの3つで、その中で一番利用されているのは、インターネットです。

また、在宅学習に必要なツールを持っていない等の理由により、在宅学習を行うことができない子供の割合は、世界で教育を受ける子供のうちの31%にのぼると言われており、特に東アフリカや南アフリカにおける割合が多いことが分かっています。

なお、国の経済レベルに関係なく、都市部に比べ農村部の方が子供たちが在宅学習を行うことができない割合が高い傾向にあることが分かっています。

新型コロナウイルスの影響で世界的に在宅学習が必要とされている中で、子供たちの学習機会に格差が生まれていることが分かります。

参考WEBサイト:https://www.weforum.org/agenda/2020/04/coronavirus-education-global-covid19-online-digital-learning/
https://data.unicef.org/resources/remote-learning-reachability-factsheet/

去年(2020年)のインドネシアにおける在宅学習について

新型コロナウイルスが蔓延し始めた2020年、インドネシアでも学校が臨時休業となり、突然、在宅学習へと移行されたことで先生・生徒・保護者は在宅学習についての様々な問題に直面しました。

そこで、インドネシア教育文化省は、緊急時における在宅学習(BDR:Belajar dari rumah)の実施に関するガイドラインを発表しました。

在宅学習の実施に関するガイドラインでは、在宅学習の目的や在宅学習の方法、在宅学習から対面学習に移行した際の学習活動についてなど細かく示されています。

在宅学習において、インターネットを利用したオンラインでの学習とテレビ・ラジオ・印刷物などを利用するオフラインでの学習の2つがあります。

インドネシア教育文化省は、オンライン環境が整っていない生徒の在宅学習を充実させるために、TVRI社(インドネシアの国営放送)と協力し、テレビ放映による教育プログラムを行ないました。

これにより、オフラインの学習環境は以前に比べ改善はしましたが、突然始まった去年の在宅学習への取り組みは手探り状態だったように思えます。

参考URL: http://ditpsd.kemdikbud.go.id/artikel/detail/pembelajaran-jarak-jauh-pjj-bisa-jadi-model-pendidikan-masa-depan
https://www.kemdikbud.go.id/main/blog/2020/05/kemendikbud-terbitkan-pedoman-penyelenggaraan-belajar-dari-rumah
https://buku.yunandracenter.com/produk/surat-edaran-kemdikbud-no-15-tahun-2020-pedoman-belajar-dari-rumah-pada-masa-covid-19/

 

去年のインドネシアにおける在宅学習の取り組みについては、過去コラムでもご紹介しています。是非ご覧ください。

過去コラム:

 

今年(2021年)のインドネシアにおける在宅学習について

新型コロナウイルスが蔓延し1年以上が経過した、インドネシアにおける今年の在宅学習はどのようになっているのでしょうか。

インドネシアでは今年に入り、以下の条件付きで対面授業が許可されました。

(1)小学校〜高校のクラスの授業において、他人との距離は1.5m以上を保ち、1クラスあたり最大18人までを維持する必要がある

(2)幼稚園の場合は、他人との距離を1.5m以上を保ったうえで、1クラスあたり最大5人、収容人数の33%を維持する必要がある

(3)対面授業の日数と時間は、健康と安全を考慮しながら決定される

(4)生徒と教師は必ずマスクを着用し、手洗いを欠かさず行う

(5)生徒、教師ともに健康である人のみ学校へ行ける

(6)食堂での食事、部活や課外活動、生徒を迎えにくる保護者の待機、教室外での休憩等密になる行動には制限が設けられる事になる

上記のような条件付きで対面授業が再開されたことにより、インドネシアでは在宅学習から対面授業に移行が進んだかと思われましたが、今年6月のインドネシア国内における急激な新型コロナウイルス感染者拡大により、ジャワ島内の一の地域とバリ州においては対面授業再開の延期が発表されました。

このような状況から、今年もインドネシア国内の在宅学習への更なる取り組みが必要とされていることが分かります。

参考WEBサイト:https://theconversation.com/pembelajaran-jarak-jauh-masih-akan-tetap-di-sini-kita-harus-buat-kualitasnya-setara-sekolah-tatap-muka-164397
https://www.detik.com/edu/sekolah/d-5683100/siap-siap-sekolah-tatap-muka-cek-syarat-dan-ketentuannya

 

在宅学習が必要とされている中で、インドネシアの教育文化省は在宅学習において以下のような課題を示しています。

・自宅で子供が一人で教材に取り組むのには集中力や知識の習得に限界があり学習効率が悪い
・データ容量(ギガ数)不足でインターネットへのアクセスが困難な地域がありそれら地域ではオンラインを通した在宅学習を行うことができない

このような課題のうち、インターネットへのアクセスの格差を解決するために、2021年9月以降、インドネシア政府は2680万人の学生・教師に対して在宅学習の教材へアクセスするためのインターネットへアクセスできるデータ量(ギガ)を配布すると発表しています。

この取り組みによって、インターネットへのアクスが困難な地域の子供でもオンラインでの在宅学習が可能になり、教師はオンライン学習の教材作成のヒントを得ることが可能となります。

突然、在宅学習への移行を余儀なくされた去年に比べて、今年は在宅学習における格差を埋める取り組みを行なっていることが分かります。

参考WEBサイト:https://mediaindonesia.com/humaniora/425083/kemendikbudristek-akui-model-pembelajaran-jarak-jauh-di-masa-pandemi-belum-ideal
https://mediaindonesia.com/humaniora/425079/september-kemendikbudristek-akan-salurkan-bantuan-kuota-internet-bagi-pelajar

 

しかし、インターネットのアクセスの他、オンラインでの在宅学習のためのガジェットの手配、教師のデジタルスキルの向上、オフラインでの在宅学習のための教材の手配、在宅学習で一人で学習する際の興味関心・モチベーションの継続や家庭での学習環境など、課題は多く残っています。

この先も暫く制限された生活が続くインドネシアにおいて、在宅学習についての課題を解決することは重要だと言えます。

 

しかしながら、在宅学習における課題が解決できれば、コロナ禍だけでなく何らかの理由で学校に通うことができない生徒も教育を受けることが可能となり、教育格差を減らすきっかけになるとの見方もできます。

 

弊社では様々な分野でインドネシア進出のサポートや、調査などを行なっております。

セミナーの開催や講師派遣なども行っておりますので、ご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。

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