【コラム】インドネシアにおけるコロナ禍でのECサイトの利用増加とトレンドの変化

インドネシアでは、新型コロナウイルス感染拡大を受け、4月より移動や活動の規制を行ってきました。

外出自粛要請により、人々は自宅にいながら必要なものを購入できるECサイトの利用が大幅に増加し、特に小売りや卸売りの分野での需要が急増しています。

日本でも、コロナ禍でのECサイト利用が急増していると言われていますが、インドネシアでは具体的にはどのような変化があったのでしょうか。

 

従来のオンラインショッピングの利用状況

インドネシアではインターネットを介して行われるビジネスよりも、従来型の“オフライン”でのビジネスが主流と言われています。

インドネシア中央統計庁(BPS)の調査によると、2019年時点でECサイトを運営、もしくはECサイトを活用している事業者は全体の15.08%でした。

残りの84.92%、大多数の事業者は、店頭での商品やサービスの取り扱いのみを行っているという結果になりました。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、”Statistik E-Commerce 2019 (Eコマースの統計2019)”より弊社作成(閲覧日:2020年7月10日)
https://www.bps.go.id/publication/2019/12/18/fd1e96b05342e479a83917c6/statistik-e-commerce-2019.html

 

ECサイトを利用していない事業者の84.92%のうち、70.89%は“直接のやりとり(オフライン)で販売する方が便利だから”であると回答しています。

また、42.52%は“オンラインでの販売に関心がない”、21.78%は“ECに関する知識がない”と回答しました。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、”Statistik E-Commerce 2019 (Eコマースの統計2019)”より弊社作成(閲覧日:2020年7月10日)
https://www.bps.go.id/publication/2019/12/18/fd1e96b05342e479a83917c6/statistik-e-commerce-2019.html

 

また、インドネシア中央統計庁(BPS)の調査結果では、インドネシアの事業別で見た場合、ECを最も活用しているタイプのビジネスは、卸売と小売業、自動車、オートバイの修理やメンテナンスで、その割合は44.31%でした。

2番目に多いグループは、宿泊施設と飲食店で18.11%、最も少ないグループは採掘と排水管理・廃棄物管理ビジネスで、それぞれ0.05%と0.23%でした。

では、インドネシアの事業者でECをすでに導入している企業は、いつから利用し始めたのでしょうか?

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、”Statistik E-Commerce 2019 (Eコマースの統計2019)”より弊社作成(閲覧日:2020年7月10日)
https://www.bps.go.id/publication/2019/12/18/fd1e96b05342e479a83917c6/statistik-e-commerce-2019.html

 

インドネシアでは、2017-2018年にECを活用し始めた企業が最も多く、すでにECを利用して商品やサービスを提供する事業者のうち45.30%はこの2,3年でECを活用し始めているということになります。

また、インドネシアでECを活用している事業者のスタッフの人数は以下の通りとなっています。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、”Statistik E-Commerce 2019 (Eコマースの統計2019)”より弊社作成(閲覧日:2020年7月10日)
https://www.bps.go.id/publication/2019/12/18/fd1e96b05342e479a83917c6/statistik-e-commerce-2019.html

 

ECを利用する事業者の多くがスタッフ1-4人程度で、スタッフの人数が増えるにつれECを活用する割合が少なる傾向にあることが分かります。

また、スタッフの人数とECの利用開始年を分類してみると以下のようになります。

スタッフの人数 最もECが利用され始めた年 割合
1-4人 2017-2018 62.47%
5-19人 2017-2018 52.05%
20-99人 2010-2016 50.49%
100人以上 2010-2016 62.69%

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、”Statistik E-Commerce 2019 (Eコマースの統計2019)”より弊社作成(閲覧日:2020年7月10日)
https://www.bps.go.id/publication/2019/12/18/fd1e96b05342e479a83917c6/statistik-e-commerce-2019.html

 

規模が大きい事業者は、2010-2016年頃と比較的早い時期にECでの商品やサービスの提供を開始していることが分かります。

インドネシアにおける“新しい生活様式”とECの活用

今年4月上旬頃より、インドネシアの首都ジャカルタを始め様々なエリアで移動や様々な活動を規制する「大規模な社会的規制(PSBB)」が導入され、この規制によってインドネシアの人々はECサイトを活発に利用するようになりました。

コンサルティング会社RedSeer社の調査によると、この規制の導入によって初めてECサイトを利用したインドネシア人は、全体の51%でした。つまり、コロナ禍でECサイトを利用した人のうち、半数以上はコロナの影響で初めてECサイトを利用したことになります。

「大規模な社会的規制(PSBB)」期間中のECサイトの需要は以前と比較すると5~10倍ほどに跳ね上がりました。同様に、日々の取引数も増加し、2019年第二四半期時点の1日当たりの取引数は約310万件でしたが、今年4月時点での1日当たりの取引数は約480万件となっています。

また、ECサイトの売り上げは、2020年4月時点で36兆ルピアとなり、2019年の第二四半期の月平均より26%増加しています。

ECサイトでの取引数が大幅に増加したことにより、ジャボデタベックエリア(ジャカルタとその近辺のボゴール、デポック、タンゲラン、ブカシ)での配達には通常よりも時間を要するようになり、通常1~2日で完了する配達が、「大規模な社会的規制(PSBB)」期間中は平均で2~3日要するようになりました。また、ジャワ島内で通常3日で配送可能だった荷物は配達に4日程要するようになりました。

出典:Katadataより弊社作成(閲覧日:2020年7月10日)
https://katadata.co.id/infografik/2020/05/20/e-commerce-tumbuh-di-tengah-pandemi-covid-19

 

インドネシアでは、今後“新しい生活様式”として、益々ECサイトの利用が日常化・定着していく見られています。

インドネシアの電子商取引プラットフォーム大手のShopeeは、今回の新型コロナウイルス感染拡大下におけるインドネシアの人々のECサイトの利用について、特に食品関連で大きな変化があったとり、インドネシアのECサイトの食品市場と食品ニーズに関する以下のような傾向を示しました。

1. 消費者がECサイトを利用して食品を購入するようになった

上述の通り、コロナ禍でECサイトの利用が急増し、Shopeeによると、コロナ禍において食料品を1か月の間に繰り返し購入する人は通常の4倍も増加したそうです。

外出自粛要請のためスーパーや市場への買い物に出かけられなかったことに加え、ECでの食料品の買い
物が便利であるということに人々が気づき始めているという見方を示しています。

1週間で見ると、月曜日、火曜日、金曜日が最もオンラインショッピングの利用が多い曜日だったそうです。

 

2. コロナ禍での食品のトレンドの変化

コロナ禍において、ECサイトで取り扱われる食品の中でもトレンドの変化がありました。

例えば、3月初めに新型コロナウイルス感染者がインドネシアで初めて確認され、政府からの外出自粛の呼びかけがあった際には、非常食として長期間保存ができる缶詰食品が特に人気の食品の一つとなり、2020年3月時点のShopeeでの缶詰食品の需要は通常の7倍に増加していることからも需要が激増したことが伺えます。

そして、4月になると更にトレンドが変化し、通常はスーパーマーケットや市場での購入が好まれる生鮮食品などがオンラインで購入され始めるようになりました。

2020年4月時点のShopeeでの生鮮食品の需要は通常の11倍にも増加しており、特にShopee内で人気があった製品は、醤油、米、砂糖、インスタントコーヒー、肉、冷凍ケバブでした。

 

3.EC利用層の変化

コロナ禍において、EC利用層にも変化があり、外出自粛要請が導入されてから3か月以上経ち、ECサイトでの食料品の購入はインドネシアの人々の間で徐々に日常的になりつつありますが、その中でも特に男性とジャカルタ以外のエリアの利用者が大幅に増加したそうです。

Shopeeでは、ジャカルタ以外のエリアでの食料品の需要が過去数か月で通常の3倍に増加しています。

男性は、食料品や料理をより頻繁にオンラインで購入する傾向にあり、2019年と比較してその利用は6倍も増加したようです。

 

4.Shopeeでの新たなブランドパートナーと販売者の登録の増加

コロナ禍で、Shopeeに登録するブランドパートナーと販売者の登録数は増加し、Shopeeの製品バリエーションは2019年比で2倍になりました。

ブランドパートナーと販売者はShopeeのライブストリーミングサービス“Shopee Live”を活用してプロモーションを行っており、このShopee Liveの活用によって通常の売上より平均3.5倍の売上増加の効果があるそうです。

更に、Shopeeは生鮮食品や冷凍食品、家庭用品が安くなるスーパーディスカウントキャンペーンを実施し、ECサイトが更にインドネシアの人々の生活に定着して活用されるよう取り組んでいます。

参考:Seluar.IDより

 

また、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出自粛要請に加え、今年5月にはイスラム教徒にとって年に一度の大切な行事であるラマダン(断食月)とレバラン(断食明けの大祭)の時期も重なりました。

ラマダンの時期には、企業から休暇手当(ボーナス)が支給され、家電やファッション、食品などの購買行動が毎年活発になる傾向にあるため、外出自粛要請の時期とラマダンの時期が重なったことは、今年ECサイトが今までになく活発に利用されたことの背景の一つと言えるでしょう。

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インドネシア現地の電子商取引プラットフォームJet Commerceによると、昨年のラマダンシーズンと比較して、今年のラマダンシーズンのおもちゃのカテゴリの売上は638%増、ペットフードのカテゴリの売上は503%増、ママ・ベビー用品のカテゴリは311%増加するなど、Eコマースでの取引が大幅に増加しました。その他、健康・美容関連商品も売上が増加したそうです。

また、今年はラマダンの2週目と3週目のECサイトの売上がラマダン月の間で最も多く、2週目はラマダン月全体の27%、3週目は29%でした。

参考:Kontan.co.idより

 

インドネシアでは、新型コロナウイルスにより経済的な打撃を受けていますが、インドネシアの中小・零細企業も特に経済的な打撃を受けたカテゴリの一つです。

移動や経済活動の規制も現在は徐々に緩和され元通りになりつつありますが、まだまだインドネシアでは新型コロナウイルス感染拡大が収束していない状況を鑑みると、中小・零細企業の生き残りのためにはデジタルリテラシーが非常に重要であるという声がインドネシアで高まっています。

参考:Banjarmasin Postより

弊社では、インドネシアの最新状況に関するセミナーの実施や、オンラインでの調査代行などを承っております。

ご興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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