【コラム】インドネシアにおけるカカオの生産事情
カカオの生産地と聞いてインドネシアを思い浮かべる人は少ないと思いますが、実はインドネシアは世界第3位のカカオ生産国です。
品質の問題もありこれまで日本へあまり輸入されてきませんでしたが、近年は品質改良を進めている企業もあり、これからの可能性に期待が持てる原料です。
今回のコラムでは、インドネシアにおけるカカオの生産事情についてご紹介します。
参照:https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/cacao.html
本コラムの出典は全て以下のインドネシア中央統計局(BPS)の報告書からとなります。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Indonesian Cocoa Statistics 2019 (インドネシアのカカオの統計2019)より弊社作成
(閲覧日:2021年2月9日) https://www.bps.go.id/publication/2020/12/02/2ac5a729f43e5f6b666e482d/statistik-kakao-indonesia-2019.html
インドネシア国内ではスラウェシ島の生産量・生産農園面積が1位
2019年のインドネシアにおけるカカオ生産量は77万4,200tで、コートジボワール、ガーナに次ぎ世界第3位の生産量を誇っていますが、インドネシア国内でカカオの生産量が多い地域はどこなのでしょうか。
下図は2019年におけるインドネシアの州別カカオの生産量の割合を表しています。
上位5つのうち、4つをスラウェシ島の州が占めておりインドネシア国内でカカオの生産量が多い地域はスラウェシ島であることが分かります。
また、生産量に比例しカカオの生産農園面積が広い地域もスラウェシ島です。
上図は、2019年におけるインドネシアの州別カカオの生産農園面積上位5つの州を表しています。
上位5つの州のうち4つをスラウェシ島の州が占めており、中部スラウェシ州・南東スラウェシ州・南スラウェシ州においては200,000ヘクタール(東京ドーム約40個分)以上の農園面積があります。
2つのグラフより、インドネシアにおいてカカオの生産量・生産農園面積ともにスラウェシ島が1位であることが分かります。
インドネシアのカカオ農園総面積・総生産量の推移
続いて、インドネシア全体のカカオの農園総面積・総生産量の推移をみていきます。
2017年から2019年の間、カカオ農園の総面積は若干の縮小傾向にありましたが、2017年と2019年を比べるとカカオ生産量は増加しています。
生産量が増加している背景として考えられることは、インドネシア国内においてカカオの加工技術が向上し国内におけるカカオの需要が高まっているということです。
また、海外においてもカカオの需要は高まっており、その需要を満たすため生産量を増やす計画がインドネシア国内で行われております。
参考:https://market.bisnis.com/read/20190529/94/928651/permintaan-cokelat-di-asia-melebihi-produksi-petani
http://disbun.jabarprov.go.id/post/view/613-id-peluang-pasar-kakao-terbuka-produksi-biji-harus-ditingkatkan
インドネシアにおけるカカオ輸出量について
2019年インドネシア においてカカオの輸出量は、35万8,481tで輸入量は30万9,737tと輸出量が輸入量を約5万t上回っています。
また、インドネシアからカカオを輸出している上位5カ国は下図の通りです。
近隣国であるマレーシアが1位となっており、アメリカ、インド、中国、オランダと続きます。
日本への輸出量は7,095tで、日本におけるカカオ輸入量全体(53,548t)の13%に過ぎません。
参考:http://www.chocolate-cocoa.com/statistics/cacao/import_j.html
インドネシアから日本へのカカオの輸出量が少ない理由
インドネシアから日本へのカカオの輸出量が少ない理由として、インドネシアのカカオの品質の問題が挙げられます。
インドネシアでカカオを生産している農家は小規模農家が殆どで98.33 %の割合を占めています。
小規模農家は複数の農作物を育てていることが多く、一つずつの農作物の品質が向上しにくい傾向にあります。そのため、カカオだけに手を掛ける訳にはいかず、品質が向上しなかったことが背景の一つとして考えられるでしょう。
また、インドネシアのカカオ農家の人たちが香り豊かなカカオを作るために必要な工程である「発酵」を知らない点や、品質の良いカカオを作ったからといって高値で取引してもらえない点が、これまで品質が向上しなかった理由としてあります。
この品質が向上しない理由に目をつけて、インドネシアの農家とタッグを組み問題を解決することでインドネシアのカカオの品質を向上させようとしている日本企業もあるようです。
参考:https://cake.tokyo/featured/darik/chapter_02
インドネシアのカカオの加工品別輸出額
インドネシアから国外へのカカオの輸出について、カカオ自体の輸出もしていますが、カカオだけではなくカカオの加工品も輸出されています。
インドネシアから輸出しているカカオの加工品別輸出額の上位4位は下図の通りです。
1位は他の品目と大きく差を開いてココアバターとなっています。
ココアバターは、ホワイトチョコレートの原料として使われています。ココアバターと聞くとイメージが湧きにくいですが、ホワイトチョコレートの原料と聞くと少しイメージがしやすいのではないでしょうか。
また、ココアバターはボディクリームなどの原料として使用されることもあり、美容ケアとしても使用されています。
2位のココアパウダーはチョコレートの原料として使われており3、4位のココアペーストはお菓子やパンの原料として使われております。
カカオの加工品から作られている代表的なものはチョコレートですが、チョコレート以外にも美容にも使え、カカオはとても魅力的な原料なことがわかります。
まとめ
日本においてインドネシアのカカオの認知度はまだ低いですが、品質が改良されることによって今後、日本でインドネシア産カカオから作られたチョコレートが店頭に並ぶ日が来るかもしれません。
世界第3位のカカオ生産国である、インドネシアにおけるカカオの生産事情は今後も目が離せません。
弊社では、現地にあるチョコレートブランドPipiltinへの工場視察や、情報交換をさせて頂いた経験もございます。詳しくは以下のコラムをご覧ください。
参考コラム:https://www.indonesiasoken.com/news/arbeediary-chocolatepipiltin/
インドネシアにおけるカカオ・チョコレート事業をお考えの方、ご興味がおありの方は、ぜひお気軽にご連絡下さい。
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