QRISとは?インドネシアで急成長するキャッシュレス決済の最新動向

インドネシアは現在、キャッシュレス社会に向けた大きな転換期を迎えています。その中心にあるのが、QRIS(Quick Response Code Indonesian Standardという、インドネシア銀行が 2019 年に開発した全国統一のQRコード決済システムです。
QRISの最も画期的な点は、異なる決済アプリ間の相互運用性を実現したことにあります。従来は店舗ごとに複数のQRコードを用意する必要がありましたが、QRISでは一つの統一コードでGoPayやOVOなど様々なアプリからの支払いを受け付けることが可能です。この標準化により、決済プロセスが大幅に簡素化され、利用者の利便性が向上しただけでなく、中小企業のデジタル化や金融包摂の促進にも貢献しています.
QRISに対応しているアプリケーション
2025年時点でQRISに対応しているアプリケーションには以下のようなものがあります。
1. デジタルウォレット(電子マネーアプリ)
- GoPay
- OVO
- DANA
- ShopeePay
- LinkAja
- その他、インドネシアで登録された電子ウォレット
2. モバイルバンキングアプリ
- BCAモバイル
- Livin’ by Mandiri
- BNIモバイルバンキング
- BRImo
- BSIモバイル(Bank Syariah Indonesia)
- その他、QRISに対応する銀行のモバイルバンキング
3. 国際決済アプリ(限定的に対応)
- Alipay、WeChat Pay(中国からの観光客向け)
- QRISと連携済みの一部海外決済サービス(現在は限定的)
4. フィンテック&その他の決済アプリ
- インドネシア銀行(Bank Indonesia)から許可を得ており、QRISと統合されている一部の非銀行系決済アプリ
QRISの使い方
インドネシアでのキャッシュレス決済が進む中、QRISは、多くの利用者にとって便利な支払い手段となっています。ここでは、QRISを使った支払い方法(利用者側)をご紹介します。
- お手持ちのスマートフォンで、GoPay、OVO、DANA、ShopeePayなどの電子決済アプリを開きます。
- アプリ内の「QRコードをスキャン」または「支払う(Bayar)」というメニューを選びます。
- 店舗に表示されているQRISコードをカメラでスキャンします。
- 支払金額を入力(自動入力される場合もあります)。
- 内容を確認し、「支払う(Bayar)」ボタンを押して確定します。
- 支払い完了の通知が表示されれば、取引は完了です。
QRISは一つのQRコードで複数の決済アプリに対応しているため、利用者は自分の使い慣れたアプリでスムーズに支払いが可能です。現金のやりとりも不要で、旅行者や在住者にとっても非常に便利なシステムです。
QRISが使える場所
2025年時点で、QRISが使える場所は以下のようになっています。
個人ユーザー向け(消費者・一般利用者)
| 利用シーン | 具体例 |
|---|---|
| 日常の買い物 | コンビニ(Alfamart, Indomaret)、スーパー(Hypermart) |
| 飲食 | レストラン、カフェ、屋台(ワルン)、フードコート |
| 交通・移動 | オンライン配車(Gojek, Grab)、バス、電車、タクシー、駐車場支払い |
| 医療関連 | クリニック、薬局、歯科医院など |
| 娯楽・レジャー | 映画館、遊園地、観光地の入場料 |
| 公共料金 | 電気・水道・ガス料金、税金の支払い、インターネット料金 |
| 教育費 | 学校・大学の授業料、教材費 |
| 寄付・宗教活動 | モスク・教会での寄付、社会団体へのドネーション |
| オンライン取引 | QRIS対応のECサイトやSNS経由の販売者(Instagram, TikTokなど) |
ビジネス向け(店舗・事業者側)
| 業種・業態 | 具体例 |
|---|---|
| 小売業 | 衣料品店、雑貨店、家電販売店、書店 |
| 飲食業 | 飲食チェーン、カフェ、個人経営の飲食店、ケータリング |
| マイクロビジネス | ワルン(露店)、パサール(市場)、移動販売 |
| サービス業 | 美容室、洗車、修理屋、フリーランスのサービス提供者 |
| オンラインビジネス | ソーシャルメディア販売者、オンラインショップ |
| 宗教・社会団体 | 宗教施設、NPO、コミュニティ団体の寄付受付 |
| 教育・トレーニング機関 | 塾、習い事、セミナー主催者など |
| 公共サービス事業者 | 地方自治体、交通事業者、水道局などが提供するサービス支払い窓口 |
QRISと日本のPayPayの違いは?
QRISと日本のPayPayの違いは、その運用方式と目的の広さにあります。QRISはインドネシア銀行(中央銀行)によって設計された国家統一のQRコード規格であり、GoPay、OVO、Dana, Shoppe payなど複数の決済アプリが一つのQRコードを共有して使用できる「標準化システム」です。一方、PayPayは民間企業(ソフトバンクグループとヤフーの合弁会社)によって運営される単一の電子決済サービスであり、PayPay専用のQRコードを使用します。
つまり、QRISは決済インフラ全体の統一と相互運用性を目的としているのに対し、PayPayは自社ブランドの普及とユーザー獲得に重きを置いています。QRISは、異なるアプリ間でも共通のインフラを利用できるため、特に中小企業や地方の商業活動において利便性が高く、金融包摂の促進にも寄与しています。
急成長するQRIS利用者数
QRISは2019年に導入されましたが、当初は主に中小企業や店舗などの加盟店の導入促進に焦点が当てられていました。そのため、2019年から2022年にかけては利用者(消費者)数ではなく、加盟店数のデータが中心に報告されていました。
しかし、2023年以降、QRISの普及に伴って実際の利用者数の把握や報告体制が整備され、複数の決済事業者を通じた個人利用者数が明らかにされるようになりました。これは、QRISの影響力が消費者にも広がったことを示しています。
急成長するQRIS利用者数と取引額(2025年)
| 年度 | 利用者数(人) |
|---|---|
| 2019年 | 導入開始(数値不明) |
| 2020年 | 3,080,000(加盟店数) |
| 2021年 | 12,200,000(加盟店数) |
| 2022年 | 23,000,000(加盟店数) |
| 2023年 | 43,440,000(ユーザー数) |
| 2024年 | 48,900,000(ユーザー数) |
| 2025年(目標) | 58,000,000(ユーザー数) |
QRISは、特に中小零細企業(UMKM)における利用が急増しており、市場・屋台・家庭商店までもがQRISを導入しています。インドネシア銀行は、2025年末までに5,800万人の利用者を目標としています。
https://www.jaringanprima.co.id/id/qris-lihat-perjalanannya-sejauh-ini
交通機関での導入とQRIS Tapの登場
2025年初頭には、QRIS Tapという新機能が登場しました。これは、スマートフォンをタッチするだけで支払いが完了するNFC(近距離無線通信)ベースの技術で、日本のSuicaのようなイメージです。
ジャカルタなど首都圏のMRTやKRL(通勤鉄道)で試験導入され、今後インドネシア全国への展開が期待されています。
国際展開:Cross-Border QRIS
QRISはインドネシア国内だけで発展しているわけではありません。インドネシア銀行は、QRIS Cross-Borderイニシアチブを通じてASEAN 諸国の中央銀行と協力し、単一の QR コードを使用したクロスボーダー取引を可能にしています。
QRIS は現在、他国の決済システムと連携し、マレーシア、シンガポール、タイなどの国で国境を越えて使用することもできます。
QRISは日本や中国との連携も準備中であり、将来的には双方向での決済も可能になる見通しです。日本においては8月17日もしくは18日より利用可能になるとインドネシア銀行より発表されました。これにより、日本を訪れるインドネシア人観光客は、日常の取引など様々な用途で日本においてもQRISを利用できるようになります。
https://wartaekonomi.co.id/read576701/bi-umumkan-qris-bisa-digunakan-di-jepang-mulai-17-agustus-2025
まとめ
インドネシアにおけるキャッシュレス社会の進展を象徴する存在として、QRコード統一決済システム「QRIS(キューリス)」の導入と普及は今やインドネシア全体の経済インフラに深く根ざしつつあります。中小企業から交通機関、さらには国際間のクロスボーダー決済まで、QRISの活用範囲は年々拡大しており、2025年には5,800万人の利用が目標とされています。
こうした動きは、金融包摂の促進、スマートシティ化、観光利便性の向上、さらには日系企業による現地事業展開においても極めて重要な示唆を含んでいます。
インドネシアにおける規制情報の調査や市場参入戦略の策定などにご関心がある方は、ぜひインドネシア総合研究所までお気軽にお問い合わせください。


