【コラム】インドネシア・バリ島の人々の知識の源「バリ・ロンタール(Lontar Bali)」とは

印刷技術が登場する前には世界中では記録媒体として巻物がよく使われ、芸術作品や先人の知恵が記されてきました。日本でも「源氏物語」や仏教の写経の巻物などが有名です。

インドネシアのバリ島でもロンタールの葉に宗教的な教典、文学、占星術、医薬、伝統的な習慣・儀式などが記された「バリ・ロンタール(Lontar Bali)」と呼ばれる巻物があります。これらのバリ・ロンタールはバリの文化、歴史、精神世界に大きな影響を与えてきました。今回のコラムではバリ・ロンタールとは一体何なのか、代表的なバリ・ロンタールの種類に関して皆様にご紹介いたします。

参考サイト:https://bali.idntimes.com/science/discovery/ari-budiadnyana/mengenal-macam-lontar-bali-c1c2?page=all
https://www.wonderfulbali.com/lontar-bali/

インドネシアの先人の知恵「バリ・ロンタール」とは何か


バリ・ロンタールとは、バリ島の伝統的なロンタールの葉に記された手稿を指します。ロンは「葉」、タルは「ロンタルの木」を表す2つの古ジャワ語に由来しています。バリ・ロンタールは、宗教の経典、文学、歴史的な記録など、さまざまな分野の知識の記録のほか、親戚に手紙を書いたり日記をつけるなどのコミュニケーションの手段としても用いられていました。バリ・ロンタールに書かれる文字は18~33文字の基本文字から構成されるアプギダ文字体系のバリ文字が用いられています。

13世紀にインドネシアにはイスラム教の伝播とともに紙も伝来しましたが、バリ島ではインドネシアの他の地域と比較すると紙の入手が困難であったため、バリ島ではその後何世紀もの間ロンタールの葉は記録媒体として用いられました。バリ島とロンボク島の学校で地元の内容のカリキュラムの一部としてバリ文字とロンタールの葉での筆記は今でも教えられています。近年、バリ・ロンタールの保護と保存に力が入れられており、デジタル化やアーカイブ化の取り組みも進められています。これにより、より多くの人々がバリ・ロンタールという文化的遺産にアクセスできるようになっています。

参考サイト:https://instiki.ac.id/2021/11/19/sejarah-aksara-bali-yang-ditulis-di-daun-lontar/
https://jalurrempah.kemdikbud.go.id/artikel/mengenal-lontar-bali-kuno-fungsi-dan-penggunaan-rempah-dalam-pembuatannya

インドネシア古代の記録媒体「ロンタール」の製造工程


ロンタールの葉が十分に成長し、枯れない時期である3~4月あるいは9~10月に摘み取り、摘み取った葉を天日干しします。その後、葉を数日間水に浸し、それを取り出して揉み、また水に浸す作業を数回繰り返します。そして乾燥させた葉を、ガンビエ、キャンドルナッツ、 クローブ、ジェバグガルム、メスイ、 コショウ、 ナツメグなどのスパイスと一緒に8時間以上煮込みます。

これらのスパイスはヤシの葉の天然防腐剤として機能し、葉の耐久性を向上させ、シロアリなどの害虫被害を防ぐ効果があります。煮込んだ後、葉に圧力をかけ、表面を滑らかで平らにします。葉は約15日程度(場合によっては数カ月~数年)圧搾され、筆記ができるようになります。筆記後にヘーゼルナッツオイルなどを表面に塗り、加工することで文字が鮮明に見えるようになります。

参考サイト:https://jalurrempah.kemdikbud.go.id/artikel/mengenal-lontar-bali-kuno-fungsi-dan-penggunaan-rempah-dalam-pembuatannya
https://instiki.ac.id/2021/11/19/sejarah-aksara-bali-yang-ditulis-di-daun-lontar/

インドネシアの代表的な巻物「バリ・ロンタール」の種類


バリ・ロンタールは宗教や芸術作品の記録媒体として用いられていましたが、以下のような種類のものがあります。

【Weda Lontar(聖典)】
サンスクリット語や古ジャワ語、バリ語で書かれており、宗教的儀式や村の慣習法などが記されています。

【Agama Lontar(宗教規則、法律、倫理、道徳)】
倫理・道徳に関する記述、法制度などが記されています。

【Usada Lontar(伝統療法)】
様々な薬草やスパイスを用いた伝統療法に関して記されています。精神病、リウマチ、子宮に関する治療など細かく分かれています。元々はインドから伝わったアユールヴェーダの療法として広がったもので、インドネシアの伝承生薬ジャムゥ(Jamu)と一緒に用いられています。バリ島の伝統の医療には全身に葉っぱをすりつぶしたものを塗る方法があり、これらの方法は、伝統医療、マッサージや体の浄化など、さまざまな目的で行われます。

【Wariga Lontar(天文学)】
天文学や占星術が記されているほか、神話や建築に関しても取り扱われています。農業やバリ・ヒンドゥー教徒の儀式を執り行う際の吉日を計算する方法なども記されています。

【Itahasa Lontar(叙事詩)】
散文形式の叙事詩、古いインドのリズムに基づいた叙事詩、バリ語文学などが記されています。

【Babad Lontar(歴史)】
マジャパヒト王国の時代からランガ・ローの反乱に至るまでの歴史的な物語や王国滅亡に関する物語を歌劇にしたものが記されています。

【Tantri Lontar(物語や走り書き)】
サンスクリット語で書かれた古代インド文学の物語やバリ先住民の物語、王族や学識者による走り書きなどが記されています。

【Prasi Lontar(絵)】
ワヤン(影絵人形劇)から派生した絵が記されています。

このようにバリ・ロンタールはバリ文化・歴史が凝縮された知の宝庫です。なかでもバリの文化としてバリ・ロンタールにも記されているような伝統医療は大変有名です。

参考サイト:
https://fin.unusia.ac.id/lontar-usada-bali-kitab-obat-obatan-nusantara/
https://museumpendidikannasional.upi.edu/lontar-wariga-parerisian/
https://www.wonderfulbali.com/lontar-bali/

今回のコラムではバリ島の人々の知の宝庫として大切にされてきた巻物「バリ・ロンタール」に関してご紹介いたしました。弊社が昨年業務提携を結んだバリ島のDwijendra大学においてもバリ・アーユルヴェーダなどが記されたロンタールは歴史文化財として大切に大学内で保管されております。

インドネシアで新規事業を行うにあたり、現地の歴史的背景や文化的背景を深く知ることは非常に重要です。弊社はインドネシア全土にネットワークを持ち、大学などの専門機関とも提携を結んでおり、新規事業に必要な各種調査や専門家への意見聴取などが可能です。

また、各種調査やアドバイザリーサービスを提供しています。これらのサービスにご興味をお持ちの企業様、是非お気軽にお問い合わせくださいませ。

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