【コラム】インドネシアに原宿誕生?Citayam Fashion Weekとは
Citayam Fashion Weekに来た若者ら
(インスタグラム「@citayamfashionweeks」より)
皆さまは、「SCBD地区(Sudirman Central Business District:スディルマン中央ビジネス地区)」をご存知でしょうか。インドネシアの中央ジャカルタにあるこの地区には、高層ビル、ホテル、ショッピングセンターやハイブランド店舗が多く集まり、エリート層やビジネスマンが多く出入りしています。しかし、最近では言葉を「Sudirman Citayam Bojonggede Depok(Citayam、Bojong Gede、Depokは何れもインドネシアの地名)」に入れ替えた「SCBD地区」という名称が流行しています。更に、同地区は着飾った若者で溢れているというのです。日本の東京を例に取ると、丸の内のビジネス街が若者のファッションの街原宿に一変してしまった様な変化が起こっています。ビジネスセンターのSCBD地区で、一体何が起きているのでしょうか。
SNSでは参加者のコーディネートを紹介する投稿も見られる
(インスタグラム「@citayamfashionweeks」より)
Citayam Fashion Weekの誕生
ここ最近、インドネシアのSNSでは「Citayam Fashion Week」というものがトレンドとなっています。この流行は、週末になるとCitayam、Bojong Gede、Depokといったジャカルタ近郊の都市から若者がSCBD地区に集まり、其々お洒落な格好をし、街中で写真を撮りインスタグラムやTik Tokに投稿するという様に若者達がファッションを楽しんでいます。SCBD地区に来るのは10代から20代前半の若者達です。サングラスや帽子、ダメージジーンズやカラフルなヘアカラー等、奇抜で斬新な彼らのファッションから、「Citayam Fashion Week」という名が付き瞬く間に有名になりました。彼らの着こなしだけでなく、メディア取材へのユーモアたっぷりな若者達の返答がTik TokやYouTube等で拡散され、その様なメディアでの発信がこの地区での「Citayam Fashion Week」の流行を更にエスカレートさせています。
現地メディアのニュースで見出し画像にも使用された若者のSNS投稿写真
(インスタグラム「@roy_tampan19」より)
地元の人々の反応
流行が拡大するにつれ、近隣住民の中には、従来会社員やエリートが活動するビジネスエリアであった同地区が若者の「SNS映え」用の場所に変化してしまったことに対し、批判的な意見を持つ人も見られています。若者が道路を占拠し写真・動画撮影に夢中になってしまうこと等の迷惑行為や、ゴミのポイ捨て、道路の混雑、風紀が乱れる事への懸念などが主な原因です。一方で、地元メディアの取材を受けた地元住民の中には、意外にも若者が秩序正しく、地元警察が巡回していることへの安心感もあり、同地区が若者の表現の場・新たなエンターテインメントの場となっていることに楽しみを覚えているといった意見も見られました。
また、「Citayam Fashion Week」は、ジャカルタ首都特別州のAriza Patria副知事も歓迎しています。彼は7月8日に自身のインスタグラムの中で、「彼らのファッションはなかなかに粋だ。CitayamやBojong Gedeの子供達もJakartaの仲間であり、大歓迎だ」と動画で語りました。また世間の一部の批判的意見も踏まえ、「すべての人にとって快適であり続けるために、常に清潔さと秩序を維持することが必要である」とも訴えました。
「Citayam Fashion Week」について引用ツイートをした「Tokyo Fashion」
ジャカルタと東京、若者のファッションには通ずるものがあるようです。
(https://tokyofashion.com/)
原宿ファッションとSCBDファッション
「Citayam Fashion Week」の流行を受け、各メディアや政府では様々なコメントが見られています。7月11日には、17.6万ものフォロワーを抱え日本のファッションニュースや原宿、渋谷などのストリートファッションの写真を毎日配信しているTwitter アカウント「@Tokyo Fashion」は、「Citayam Fashion Week」について「(Citayam Fashion Weekは)日本の原宿のように、何千人ものインドネシアの若者がお洒落をし、ジャカルタ中心部の通りにファッションのランウェイのような活気をもたらす粋な流行だ。インドネシアのストリートファッションスナップサイトやメディアがこうした流行を発信し支持することを願う」とツイートしました。日本の原宿ファッションは流行に敏感なインドネシアの若者にも注目されており、この「Citayam Fashion Week」でのファッションにも、少なからず影響を与えているのではないでしょうか。
横断歩道をレッドカーペットの様に歩く若者達
(インスタグラム「@citayamfashionweeks」より)
この流行が社会へもたらす変化
インドネシアの社会学者Devie Rahmawatiは、「Citayam Fashion Week」の流行に関し、10代の若者は、新たなSNSアルゴリズムを用いて社会的インパクトを生み出し、首都に彩りを添える存在であると述べています。また、Anies Baswedanジャカルタ首都特別州知事は、SCBD地区への若者の流入は公共の場としての同地区の所有権を真の意味での国民の共有財産へと進化させるチャンスと捉え肯定的な反応を示しています。何故なら以前はSCBD地区にアクセスできるのは首都圏の会社員や比較的裕福な経済界の人々のみで、誰もがジャカルタ最大の歩行者天国をのんびりと楽しめるわけではありませんでした。しかし「Citayam Fashion Week」の流行が同地区への一般層の若者のアクセスを可能にし、同地区を真の公共な場としたことで、この地区一帯の位置付けや人々のこの地域に対する価値観が変化したのです。
この事はインドネシア国家が発展を遂げるうえで「良い意味での変化」と捉えて良いのではないでしょうか。
高層ビルが立ち並ぶジャカルタ市内
今回のコラムではジャカルタで流行している「Citayam Fashion Week」をご紹介しましたが、如何でしたでしょうか。こうした現地トレンドの分析は、前半で触れた様に例えば日本の原宿ファッションがインドネシアにおいて一定のファンを獲得していること等、インドネシアのこの様な活気溢れる若者を対象にしたビジネスチャンスを見出すことに繋がります。また、後半で見た様に、この新たな流行からは、インドネシアにおける単なる最新トレンドやSNSの発展だけではなく、社会的な変化をも見ることが出来ます。中央ジャカルタというインドネシアの商業・経済・政治の中心的地域におけるこうした社会的現象を把握し観察することは、インドネシアでのビジネスを展開するうえで必ず役に立つ事であると弊社インドネシア総合研究所は考えております。
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