【コラム】日本で働くインドネシア人材のビザについて

先日、出入国在留管理局が2023年上半期の在留外国人に関するデータを発表しました。そのデータによると、日本で暮らすインドネシア人の数は、今年、統計開始以降初めて10万人を超えました。

https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00036.html
https://www.moj.go.jp/isa/content/001403955.pdf

2022年と比較したインドネシア人在留者数の増加率は、23.4%で、5年前と比べると日本で暮らすインドネシア人の数は倍以上に増えています。労働現場でのインドネシア人人材の受け入れニーズも増えてきており、弊社でも日々、多くの日本企業様からインドネシア人材に関するお問い合わせを頂いております。

日本ではビザの種類により就業できる職種やビザ取得に要求されるスキルのレベルが異なるため、職場で海外人材の受け入れを希望する場合には、その人材に従事してもらう予定の職種、欲しい人材のレベル、社内のリソースに応じてビザの種類を正しく選択し、受け入れの準備を進めることが大切です。

今回のコラムでは、インドネシア人人材の受け入れに焦点をあて、日本での就労を希望するインドネシア人が取得可能なビザの種類についてご紹介します。

1.日本で働くことのできるビザの種類


インドネシア人を含めた外国人材が日本で働くためには、以下の16種類の就業ビザ、6種類の特定ビザのうちのいずれかを取得する必要があります。:

<<就業ビザ>>
1.教授(例:大学教授、助教授、助手など)
2.芸術(例:作曲家、作詞家、美術家、彫刻家、工芸家、写真家など)
3.宗教(例:僧侶、司教、宣教師などの宗教家など)
4.報道(例:新聞記者、雑誌記者、編集者、報道カメラマン、アナウンサーなど)
5.経営・管理(例:会社社長、取締役など)
6.法律・会計業務(例:弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、日本公認会計士など)
7.医療(例:医師、歯科医師、薬剤師、看護師など日本で資格を有する方)
8.研究(例:研究機関等の研究員、調査員等)
9.教育(例:小学校、中学校、高等学校の教師など)
10.技術・人文知識・国際業務(例:科学技術者、IT技術者、外国語教師、通訳、コピーライター、デザイナーなど)
11.企業内転勤者(例:同一企業の日本支社(本社)への転勤者など
12.介護(例:介護福祉士など)
13.芸能人(例:ミュージシャン、俳優、歌手、ダンサー、スポーツ選手、モデルなど)
14.技能労働者(例:外国料理専門シェフ、動物調教師、パイロット、スポーツトレーナー、ソムリエなど)
15.特定技能労働者(特定の産業分野において、一定の専門知識・技能を有する即戦力となる外国人)
16.技能実習生(例:技能実習生)

<<特定活動ビザ>>
1.日本人の配偶者等(例:日本人の配偶者、日本人の実子)
2.永住者の配偶者(例:永住者の配偶者)
3.定住者(例:日系人、定住インドシナ難民、中国残留邦人の配偶者・子など)
4.特定活動(例:高度人材、外交官等の家事使用人、ワーキングホリデー入国者、報酬を伴うインターンシップ、EPAに基づく看護師、介護福祉士候補者など)
5.特定活動(観光・保養を目的とするロングステイ)
6.特定活動 (未来創造人材、未来創造人材の配偶者・子)

出入国在留管理局のデータによると、2023年上半期のビザ別に分けたインドネシア人在留者の数は以下のとおりです。

このデータによると、フルタイムでの就労が可能なビザ項目のうち、⑮特定技能 ⑯技能実習 ⑩ギジンコク(技術者・人文知識・国際業務)の3つのセクターで、前年と比較し大きくインドネシア人材の数が増えているのが分かります。

このほかに、特定技能や技能実習と比べて数は少ないものの、就業ビザの⑫介護職、特定活動ビザの内の④特定活動(EPAに基づく看護師、介護福祉士候補者など)で来日し、医療現場や介護現場で働くインドネシア人もいます。

2.ビザの詳細(就労ビザ:⑩ギジンコク、⑫介護、⑮特定技能、⑯技能実習/特定ビザ:④特定活動)

就労が可能なビザについて、特にインドネシア人の取得者数の多いものを中心に、詳細を以下にご紹介いたします。

就労ビザ:
10. 技術者・人文知識・国際業務 (ギジンコク)
在留期間 :5年、3年、1年、3ヶ月

この「技術者・人文知識・国際業務」ビザは、「ギジンコク」ビザの略称で知られています。ビザ取得の要綱は多いものの、「介護」「特定技能」「技能実習」のビザと比較して、「ギジンコク」ビザでは幅広い業務に従事できること、更新が可能で長期間の滞在が出来ることなどが、特徴です。

「ギジンコク」ビザで日本に滞在している外国人材を採用する場合、「日本人と同等額以上の報奨を与えること」が義務付けられています。また、「ギジンコク」ビザはオフィスワークが対象のため、業務に肉体労働や単純作業が含まれる場合には、短い時間に収めるなど注意が必要です。

また、「ギジンコク」ビザを申請するためには、申請する分野のカテゴリーの応じて以下の要綱を満たす必要があります。:

自然科学、人文科学のカテゴリー:
・「該当分野に関する分野を専攻し、母国の大学を卒業した」または
・「該当分野に関する分野を専攻し、日本の専門学校の専門課程を修了した」または
・「10年以上の実務経験を有する」

人文知識、国際業務のカテゴリー:
・「従事する業務が翻訳、通訳、語学指導、広報、宣伝、海外取引業務、服飾または室内装飾のデザイン、のいずれかである」および
・「(大学を卒業していない場合)3年以上の実務経験を有する」

得に工業分野にて、既に受け入れている技能実習生や特定技能生が、母国の大学でその分野の勉強していた場合に、「特定技能」ビザから「ギジンコク」ビザに切り替える、という例もあるようです。
なお、「ギジンコク」ビザで入国しているインドネシア人は2023年6月時点で5,984人、前年比15.2%の増加でした。

001366995.pdf (moj.go.jp)

12.介護
在留期間 :5年、3年、1年、3ヶ月

この「介護」のビザを取得するには、日本で「介護福祉士」の資格を持っている必要があり、この後に紹介する「特定技能」「技能実習」と比較すると、難易度の高いビザと言えます。しかし、「特定技能」「技能実習」とは違い、家族も一緒に来日できること、ビザの更新回数に制限がないことが「介護」ビザの大きな特徴です。

「介護」ビザを取得する方法としては、「学生」ビザを持つ留学生として介護福祉士養成施設で学び、国家試験に合格してからこの「介護」ビザに切り替える場合と、「技能実習」や「特定技能」ビザで介護施設で就労してから、国家試験を受験し、この「介護」ビザに切り替える場合があります。

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000994004.pdf

なお、「介護」のビザで日本に滞在している外国人材を採用する場合、「日本人と同等額以上の報奨を与えること」と、「行う業務が介護または介護の指導であること」が義務付けられています。

Residence status “Nursing” | Immigration Services Agency (moj.go.jp)
001366115.pdf (moj.go.jp)

15.特定技能
在留期間 : 
 1号:1年、6ヶ月または4カ月
 2号:3年、1年または6カ月

「特定技能」の英語はSpecific Skilled Workerで、SSWビザと呼ばれることもあります。
「技能実習」ビザの特徴には、働ける職種が限られていること、受け入れ機関または登録支援機関による一連のサポートが義務付けられていること、ビザ取得の要件に技能と日本語のテストに合格することが義務づけられていることなどがあります。

「特定技能」の12職種

「特定技能」ビザは、「特定技能1号」と「特定技能2号」にビザの種類が分かれています。
「特定技能1号」の場合、1年、6カ月または4カ月ごとの更新で、通算で上限5年までの在留が可能です。「特定技能2号」の場合、3年、1年または6カ月ごとの更新で、制限なく日本に滞在できます。

「特定技能2号」は、基本的には「特定技能1号」からの切り替えでのみ取得が可能ですが、「介護」のみ「特定技能2号」のビザではなく「介護」ビザへの移行となるので注意が必要です。また、「特定技能2号」の取得の為には、追加の技能試験に合格する必要もあります。

なお、「特定技能1号・2号」ビザで入国しているインドネシア人は2023年6月時点で25,337人、前年比55.2%の増加でした。

弊社がインドネシアで運営に携わっている学校では、この「特定技能1号」のビザを取得し、日本で就労することを目指すインドネシア人人材の育成を行っております。「特定技能」ビザの人材の受け入れ、インドネシアでの学校運営にご興味のある方は、末尾のお問い合わせフォームから弊社までお問い合わせください。

在留資格「特定技能」 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

16.技能実習 
在留期間 : 
1号:最長1年
2号:最長2年
3号:最長2年

「技能実習」ビザは、在留インドネシア人の最も多くが取得しているビザです。政府は将来的に「技能実習ビザ」を廃止し、新たな制度へ移行する方針を示していますが、新制度の詳細はまだ公式発表されていません。

「技能実習」には日本で監理団体を介さない「企業単独型」と監理団体が指導・支援を行う「団体管理型」の2種類がありますが、2022年のデータでは「団体管理型」での受け入れが圧倒的に多く、全体の98%以上を占めます。

「技能実習」ビザを取得するためには、18歳以上であること、帰国後身に着けた技能を要する仕事をすること、母国で同種の業務に従事した経験があること、日本の公的機関から推薦があること、などの要件があります。
また、介護職種の場合、「技能実習1号」では日本語能力試験のN5相当の試験に合格していること、「技能実習2号」ではN4相当の試験に合格していること、という追加の要件があります。

また、受け入れ側でも、事業所の常勤職員の人数によって定められている技能実習生の受け入れ可能人数を守ること、「技能実習責任者」「技能実習指導員」「生活指導員」を配置すること、許可を受けている監理団体から実習監理を受けること、日本人と同等以上の報酬を支払うこと、などの要件があります。「技能実習3号」は、更に厳しい基準に合格した優良な団体で実習を行う者のみ申請が可能です。

「技能実習」ビザで入国しているインドネシア人は2023年6月時点で58,478人、前年比15.2%の増加でした。

特定活動ビザ:
特定活動ビザは、労働ビザには該当しないものの、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動の為に発行されるビザです。
特定活動ビザの対象となる事例には様々なものがありますが、今回は人材不足の分野で働くビザとして、EPA看護師・EPA介護福祉士のビザについてご紹介します。

④特定活動(EPAに基づく看護師、介護福祉士候補者など)
在留期間 : 5年、3年、1年、6カ月、3カ月

EPAはEconomic Partnership Agreement(経済連帯協定/自由貿易協定)の略称で、EPAに基づく看護師、介護福祉士候補者の「特定活動」ビザが取得できるのは、EPA協定国・地域の人にのみ限定されます。
インドネシアは日本と「日インドネシア協定」を結んでおり、インドネシア人は、このビザの対象となります。インドネシア人の他に、フィリピン人とベトナム人も、このビザの取得が可能です。

https://www.jcci.or.jp/gensanchi/epazenpan.html
(参考:2023.10.24最終アクセス)
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000994004.pdf

EPA人材の斡旋、受け入れの調整は国際厚生事業団(JICWELS)のみに許されています。
EPAビザの取得の場合には、看護人材であっても介護人材であっても母国で「看護師資格」「介護士認定」を取得し、実務経験を積んでいる必要があります。また、日本語の試験に合格していることもEPAビザ取得の要件です。インドネシア人EPA看護人材の場合、要求される母国での実務経験期間は2年間、要求される日本語レベルは日本語能力試験N4以上です。

EPAビザには、就学コースと就労コースがありますが、どちらの場合でも「介護福祉候補者」または「看護師候補者」として来日した後、6カ月の日本語研修を受け、就労または研修を受けたのちに国家試験に合格する必要があります。

インドネシアEPA人材の受け入れ人数と国家試験の合格率は下のグラフの通りです。

https://www.mhlw.go.jp/content/000639886.pdf

不合格だった場合は再試験が可能ですが、日本語が母語でないEPA人材にとって日本の国家試験は非常に難易度が高いようです。

今回のコラムでは、インドネシア人が日本での就労を希望する際に取得可能なビザの種類とそれぞれのビザの特徴についてご紹介しました。

弊社では特に「技能実習」と「特定技能」のインドネシア人材の受け入れについて、知見とサポート実績がございます。また、弊社は「特定技能」の登録支援機関の許認可を取得しており、来日後のインドネシア特定技能人材のサポートも可能です。

インドネシア人材についてご興味のある方は、どうぞお気軽にご連絡ください。

関連コラム:


株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-6804-6702

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

記事のシェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次