【コラム】アフターコロナに向けた旅行業界の動き:トラベルバブル

2020年初頭から続く新型コロナウイルスのパンデミック下で、国内の移動にも制限がかかる中、外国への渡航、ましてや個人的な旅行はしにくい状況が続いています。しかし、観光を生業としてきた国や地域にとって、この状況は死活問題です。
そこで、多くの国や地域で検討されているのが「トラベルバブル」です。すでに実施している国もありますが、今年1月、インドネシアとシンガポールとの間でもこのトラベルバブルが導入されました。

トラベルバブルとは?

国際航空運送協会(IATA)の定義によると、トラベルバブルとは、「2か国(またはそれ以上)が健康上の安全を確保し合うことを条件に、国家間の行き来を可能にするという制度」(弊社訳)のことを指します。トラベルバブルを導入するには、両国のコロナウイルス感染拡大状況や人口あたりの感染者数などが似たような状況にあり、ひとつの「バブル」の中にいるような状態であることが前提となります。

参考:
https://www.iata.org/contentassets/5c8786230ff34e2da406c72a52030e95/restarting-international-aviation-through-travel-bubbles.pdf

インドネシア・シンガポール間のトラベルバブル

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、バタム島及びビンタン島においてシンガポールからの観光客を受け入れる決定を下しました。これにより、2022年1月24日からトラベルバブルが実現しました。
対象地域に渡航する旅行客は、以下のような要件を満たしている必要があります。

 例)
-出発の14日前までにワクチン接種を済ませていること
-出発前の72時間以内にPCR検査で陰性と証明されていること
-ラベルバブル専用のパッケージプランを予約していること
-3万シンガポールドル以上の旅行保険に入っていること

シンガポールからの旅行客は、指定のフェリーターミナルを利用すれば、待機期間なしでインドネシアに入国することができます。ただし、フェリーを利用しての待機期間免除は入国の際のみで、帰国の際は空路を使わなければなりません。

さらに、観光客は島内で自由に活動できるわけではなく、その活動範囲はLagoi Bintan Resort(ビンタン島)またはNongsa Sensationエリア(バタム島)に限られます。宿泊施設側にも、医師や看護師などが駐在していること、衛生的な備品の使用など、遵守すべきルールが設定されています。
なお、インドネシア人がシンガポールに入国する際には優遇措置は適用されません。

参考:
https://www.cnnindonesia.com/nasional/20220125134144-25-750935/satgas-covid-buka-travel-bubble-batam-bintan-singapura
https://milelion.com/2022/01/27/batam-bintan-not-quite-vtl-travel-bubble-all-you-need-to-know/
https://travel.kompas.com/read/2022/01/31/171240827/seminggu-travel-bubble-indonesia-singapura-belum-ada-wisman-masuk

バタム島・ビンタン島はどんなところ?

島(出典: Umsplash 撮影者: Kharl Anthony Paica )

バタム島、ビンタン島はともにリアウ諸島州に属します。シンガポールからフェリーで1〜2時間ほどの距離にあるため、気軽に訪れることのできるリゾート地として、シンガポールやマレーシアからの観光客に人気があります。
しかし、パンデミックの影響で観光業は大きな打撃を受けています。例として、ビンタン島及び周辺の小島地域における宿泊施設の客室稼働率は、パンデミック前の2020年1月時点では46.02%でしたが、同年5月には0.88%にまで低下、年平均でも33.99%となりました。

参考:
Statistik Daerah Kabupaten Bintan 2021 https://bintankab.bps.go.id/publication/2022/01/07/5f82c5bbe28dc48fea8f1e3f/statistik-daerah-kabupaten-bintan-2021.html

今後拡大の可能性は?

バタム島、ビンタン島以外の地域でも、トラブルバブルの構想が進められています。
最も調整が進んでいるのは、バリ島とインドの間でのトラベルバブルの導入であると見られます。バリ島は住民の大多数がヒンドゥー教徒であり、宗教上の繋がりから両国のトラベルバブルの実現が望まれているためです。

また、日本とバリ島の間でもトラベルバブルの構想があるようです。
Kompas紙は1月25日付の記事において、インドネシア観光クリエイティブエコノミー省のサンディアガ・ウノ大臣の談話として、昨年12月に日本からの代表団が現状視察のためバリを訪れたと報じています。
パンデミック以前は、バリを訪れる観光客のうち、シンガポール、マレーシア、中国、インドに次ぎ5番目に多かったのが日本からの観光客で、その数は50万人(2018年)にのぼります。日本〜バリ間の直行便を利用し、トラベルバブルによって観光客が再びバリ島を訪れるようになれば、バリ島経済の回復の一助になると考えられています。

一方で、1月31日時点で、トラベルバブルのスキームを利用してインドネシアを訪れたシンガポール人はまだ一人もいないとのことです。待機期間がないとはいえ、満たすべき要件が多いことや、依然としてパンデミックの脅威が落ち着いたわけではないことなどが要因でしょう。

参考サイト:
https://travel.kompas.com/read/2022/01/25/060300127/indonesia-buka-peluang-kerja-sama-travel-bubble-dengan-jepang?page=all

今後、インドネシアとの間の行き来が容易になるかどうかは、ビジネスにも大いに関連します。最新情報のリサーチを希望される方は、ぜひ弊社にお問い合わせください。

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-5302-1260

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